10年前ガルバーク帝国4 罠と裏切りの連鎖
ガルバーク帝国を出航して数日後の出来事だった
「ん?! なんだあれは……」
兵の一人が正面を見やる 前方に得体の知れない黒い飛行物体を目撃した
「モーガン王!! あれは一体?!」
「……なんだというのだ」
モーガンとディゴイルが慌てて船首近くまで駆けつけて絶句した
眼前に広がるは無数の絨毯に一人一人黒ずくめの人間が座っており
まるで群がるカラスのような光景であった
「空飛ぶ絨毯…… まさか本に書かれていた〝魔法の絨毯〟か?」
「ということは魔法都市に着いたということですか?!」
ケルトの質問に答える暇など無いかのような冷や汗を流すモーガン
「いや…… あと数日は必要な筈だ」
隣にいるディゴイルが代わりに答えるも表情はモーガンと変わらない
「一体なんだというのだ!!」
「モーガン王! 指示を!!」
船員のほとんどが混乱する中 奴らが動き出す
そしてそれは突然に 瞬間的にモーガンの視界に映る物全てを地獄へ変えた
「これは…… 一体……」
黒ずくめの奴らの手が紫色に発光した途端
それは球体に創られ 十隻もある船目掛けて四方八方と乱射された
船は数十秒持たずして次々と沈み 偶然か必然かモーガン等の乗る船を残して全隻が海の底に沈んだ
「これは……」
「非道い…… まさに地獄……」
悲鳴を上げる兵士を助けることも出来ず ただ目の前の恐怖に硬直する乗組員達
そんな彼らの目を覚まさせるかの様 一人の男が空からゆっくり降りて来て
「どうも初めまして! 僕はルランと申します」
丁寧に挨拶するルラン しかしその印象は全く別の印象へと豹変する
「…………な…………」
目に見えない何かがモーガンの横を貫通した
振り向くとそこには腹部に大きく風穴が空いたディゴイルが
「ディゴイル!!!!」
「これに懲りて怪しい人達なんかに関わらないことですね 人生損しますよ?」
忠告を伝える終えれば ルランと名乗る者は謎の光に包まり
「待て……!! 貴様は何者だ!!?」
「魔法使い…… とだけ言っておきます」
「……そうか しかしお前を逃がす訳にはいかない!!」
「殺せぇぇ!!!!」
ケルトの一声で兵が剣を抜き 一気に畳みかけたがルランは一瞬でその場から消え去ってしまった
無数にいた黒ずくめの男達もいつの間にか姿を消して
海の上に浮かぶ一隻の船の周りには静けさだけが残ってしまう
「モーガン王……」
「海に落ちた生存者を救出!! ……ディゴイル王を優先に負傷者の手当てを急げ」
呆然としている兵士達は 王の叫びに対してもすぐに動ける者はそう現れず
数分経ってやっと我に返る兵もいて人命救助は遅れを見せた
「ディゴイル……!! ディゴイル…… クソォォ!!!!」
モーガンが何度叫んでも 既に死んでいるディゴイルが目覚めることは無かった
「浅はかな夢だったのか…… なぁディゴイル返事をしてくれ……」
「モーガン王…… 生存者は全員救助しました ここからは私が指揮を執ります……」
ケルトの言葉を無視してもディゴイルに話し掛けるだけのモーガンに対し
暗黙の了解だと判断した彼は勝手に兵達に命令を下す
「これより…… この船は帰還する」
誰もが納得した判断だった しかし地獄はまだ終わらない
ーーどういうことだ…… 一体……
「一体どうなっているんだぁぁぁぁ!!!!!!!」
ようやく各々の愛する者達が暮らすガルバークに着いたモーガン一行
しかし乗組員全員が見た者は目も焼け爛れる悲惨な光景だった
「モーガン王!! これは一体!?」
「大臣!! どうなっているんですか!!?」
赤く染まるガルバーク帝国の町から大量の悲鳴が上がっていた
「ケルト!! 早く陸へ頼む!!」
モーガン王は不運続きの連続で兵に的確な指示は出来ない
しかしそれはケルトが ディゴイルの死を目の当たりにした彼の表情を見た時から察している
今この何も知らない船員をまとめるのは自分自身だという言葉では程遠い決意を固め
「舵を切れ!! 西海岸へ!!」
波の音が唸る モーガン達の青ざめた顔を無視してさらに悪寒を吹かせるかのようだ
「タイミングが合ったな……」
「何をしている? お前……」
モーガンの前に立ちはだかるはドレイルだった
「……」
「ユサンと共に国を守れと約束した筈だ!! 何があったぁ?!!!」
衰弱しているモーガンの決死の声も卑劣に無視するドレイル
しかしその直後に見たものはモーガン達にトドメを刺すものだった
「ドレイル~~ 国中の町全てに放火したぞ~~」
「おい…… ドレ…………」
モーガンの視界に現れるルランを見た瞬間に朦朧としていた意識が無くなった
「なんということだ……」
ケルトは気を失ったモーガンを抱えながら地面に泣き崩れた
「ドレイル これどうする??」
「跡形もなく消せ 俺は国に戻る」
「協定結んだんだから焼け死なないでね~~」
ルランに手を振られながらドレイルは兵を連れて町に戻った
一人残ったルランはケルトと兵達を見つめながら
舌でゆっくりと唇を舐め回し 高揚感で胸がイッパイの表情を浮かべて近付いてくる
「さぁ…… 楽しませてくれよ?」
「あぁ…… ぁぁぁぁああああ!!!!
あぁアイツを!!!! アイツをぶっ殺せぇぇぇぇ!!!!」
ケルトが叫んだ瞬間 手と手を握るルランがそこにいた
その両手は徐々に開き 中に詰まった青紫の塊の数々が美しく輝き出した
「瞬殺ほど…… つまんないものは無いんだけどね~~」
数十ある塊を一気に放ってケルト達目掛け襲い掛かる
一人に数発程度で身体の肉は跡形もなく消し去り
後ろにある船までもが沈む間もなく消え去った
ーーあぁ…… あそこにはディゴイル王のご遺体が いやそれよりも
兵士の姿は跡形も無く その場に残っていたのはケルトとモーガンのみ
「ハァ…… ハァ……」
何も言えず 何も出来ず ただ無意識に涙が流れるケルトにルランは一方的に話し掛ける
「あははははははは!! 恐怖した? 絶句した? 身体固まった??
これホントあきないよね~~ ギャハハハハハハハハ!!!!」
右手で額を軽く叩き甲高く笑い 左手をケルトに向けて手中に籠もるドス黒いエネルギーを溜める
もはや死も含め全てを受け止めた無表情でいるケルト
しかし無意識にもモーガンの身体を背中へと誘導していた
「……ほんじゃね~~!!」
手から放たれようとしたそのとき 三人の間に一人の影が跳び下りた




