10年前ガルバーク帝国1 世界大交易時代
今より五十年前に遡る
国々が争う以外に交流をすることは稀に見ず
決して同盟・協定などと言う言葉は今まで存在していなかった
そんな流血の絶えない時代で圧倒的な発展を遂げた国が七つ存在する
その国同士が手を組み 世界の争いに終わりを告げさせたのが後の【七大国】
そう呼ばれる世界最高機関となる
七大国から派遣された使者達は各国を巡り 世界屈指の大国同士が手を組んだと知らせ
国々は成す術無く次々と加盟せざるを得ず僅か五年で世界の九割が加盟し
国同士の平和宣言の下 【七大国平和条約締結】を定めて長い平穏を治めた
人はこの安寧と奇跡を心から感謝し
何時しかこの始まりを〝世界大交易時代〟の幕開けと語り始める
幕開けから三十五年後 ガルバーク帝国 会議室
「今や世界の九割が交流経路として当り前とし
各国一つ一つの文化が共有され 今や経済的には十分程の成長を遂げています
考え直して下され王よ…… 今ではもうあんな鎖に縛られた国には誰も手は出しませぬ」
「……」
横長の机を挟んで座る複数の臣下に注目されながら 王座で考え込む一人の王
「王よ ご返答を……」
「ん~~…… 大臣よ お前は魔法都市と日の国 どちらの事を指しているのだ?」
「勿論両方です 野蛮この上ない輩の無法地帯と耳に入っております!!」
王は一人の大臣の意見を聞くなり即座に黙り込んだ
「モーガン王よ!
何故外の者との外交を望まれるのですか? 三十五年続いたこの平穏なる現状が不満だとでも?!」
「……なぁ大臣 いやドレイルよ 本当にこのままでいいと思うか?」
「どういう…… 意味でしょう?」
大臣のドレイルは当然のように顔を顰める
「私は国を民と例える 民がいることで国が生まれ 成り立ち 保たれた
民のいない王だけの国など只の廃墟に過ぎん」
「「「 ………… 」」」
大臣等が王の言葉に顔を見合す中 ドレイルだけはしつこく口を開く
「お言葉ですが おっしゃってる意味が……」
モーガンは立ち上がり窓の外を眺める
そこに映るのは活気ある城下町の美しい風景だ
「いつ見てもいい…… だが大臣よ
ここから見る景色も良いが一番良い景色は何処から見たときかな?」
「……城下に下り 人々の暮らしを直に見ることです
貴方様にお仕えしてから何十年も頭に覚えています」
ドレイルの言葉を聞き モーガンは微笑みと共に大臣達に伝える
「結論は次にしよう
だが本当の平和を望む者が 高が一つ二つの小さき者でも除外していいと……
そう思うか思わぬか次回までに考えてきて欲しい」
会議は終了し
王は中庭へと向かうべく廊下を歩いていた
そこにドレイルが現れ
「さすが…… いつもブレませんね」
「お主も相変わらず私に対して引けを取らない」
「貴方様が王座に居座ってからの付き合いですからね…… ですが貴方様には敵いませぬ」
「ホッホッホ……! してドレイルよ お主に伝えて置きたいことがある」
「何でしょう?」
モーガンは歩き出すと共に真剣な表情で語り始めた
「かつてこの世界には神が今の人類と同等の立場に座していたと言う
だが挙句の果て人は神に背き 全生物の頂点へと登り詰めた それが今の現状を意味する
そこで質問だが人より一回り神秘の力を持つ神が 何故人間に負けたと思う?」
「…………フッ 今の世の中で神の存在を謳う者は
一部の信教以外誰も口にする者はいませんがね
敢えて謎掛けと言うのなら…… 技術に於ける発展と進歩とでも答えましょうかね」
「……」
モーガンは足を止めた
「正解じゃが…… 足りないものがある」
「……まさか団結力とかおっしゃるつもりじゃないでしょうね?」
「さぁの~~ 実は正解は分からん!
しかし一人で闘った者は絶対に神には遠く及ばなかったと私は思う
一人で戦う〝勇気〟と皆で戦う〝絆〟は 近いようで実は全然違うモノかもしれんな」
「相変わらず私には見えない先を見ている口振りですね……
そろそろおっしゃりたい結論を聞きましょうか?」
ドレイルの問いにモーガンは再び前に歩き始め ドレイルに笑顔を見せながら言う
「ドレイルよ 人は皆同じだ
周りの噂だけで相手を判断せずしっかりと己の目で見極めて欲しい……」
「……」
「長く付き添ってくれたお主を見てきた私は お前が理解してくれる日が来ると信じておる」
「……はぁ」
ドレイルは王の頼みに対して ただ頭を下げることしかできなかった
モーガンは城の玄関の真上に位置する二階の中庭に顔を出すと
グレイン「あ! お父様! 中庭にお顔を出すなんて珍しいですね!」
ユサン「父様……」
モーガン「ユサン グレイン ご機嫌の程は如何かな?」
モーガン「お爺さま~~!!」
ユサンとグレインの後ろから 小さい女の子がモーガンに抱きついて来た
「おぉ~~モルガナ! また大きくなったんじゃないか?!」
「エヘヘ! 毎日たくさん食べてるからね!」
二人の仲睦まじい姿に ユサンとグレインも微笑ましく見守っている
「今日はね! 久しぶりに父上と母上が一緒に遊んでくれたの~~!」
「ほぅ! それは良かったな~~ じーじも暇が出来れば遊んで上げたいのにの~~……」
「お爺さま…… いつ遊んでくれるの……?」
寂しげな顔をするモルガナにモーガンは優しく頭を撫でた
「また今度じゃ 次は必ず一緒に遊ぼうな!!」
モルガナは無邪気にも笑顔を取り戻し 母親のグレインに抱きつく
「さぁ そろそろお城に戻りましょうか?」
「あぁそうだな では父様 私達は城内へ戻ります」
三人が中に入ろうとしたとき
「あぁユサン!! お前は残れ」
「はっ…… はい!」
二人を中へ見送った後 モーガンとユサンは中庭の最先端で城下町を眺めながらの会話へ
「良い子だなモルガナは……
可愛い孫でもあんなに素直で優しい子はそうおるまい」
「グレインと母様似ですね 俺達親子に似なくて良かった」
「ま…… 反論は出来ないな!!」
二人の笑い声が 城下町の活気に負けじと国に響き渡っていた




