ディアス闘技場Dブロック4 自身への油断
時は重なり
「ラウル!! ねぇラウルってばー!!!!」
観客席から非道なる瞬間を目の当たりにしたメモルは
目の前の現実を受け入れられず ラウルを呼び掛けるしかなかった
「ラウル!! ねぇラウル!! ラウル……!!」
「……!!」
隣にいたゼッペルも突然のあまり声が出せずにいた
『なんということでしょうか……
サル寅を倒して金星を掲げた筈のラウル選手
油断からの巨人ダンガーによる瞬殺ぅぅぅぅ!!?』
ダンガーはその地面に突き刺さった腕をゆっくりと引き抜き 観客に両手を挙げてアピールする
「ヴォォォォォーーー!!!!」
雄たけびを上げて高揚感を煽る
「ラウ…… ル……」
活性化される声援の中
メモルとゼッペルだけは地面にこびり付いて倒れる無残な姿となったラウルをただ呆然と眺めていた
時間が経つにつれてメモルの足は微かに進み始める
観客席の最前にある鉄柵を掴み 潤んだ目先から見える歪んだラウルの姿を一点に
彼女の視線の先にはダンガーにより蝿のように軽く潰された彼の残骸が痛々しく見える
その近くで気分が昂っているダンガーに近づく数名の選手達
「我輩に任せい!!」
「アンタ! ホントに大丈夫なんだろうな!!?」
一つ頭飛び出た身長の大柄な男とそれを囲む選手達
大柄な男は自身に満ちた顔でダンガーに近付く
ゴルクレット「なんだあいつは?」
ミルク「……裸!?」
趙炎「あの方は確か……」
三人も巨人目指して一直線に向かっているとき
左の方向から大柄な男が数名引き連れて来るのが目立つ
「裸の王 クリスチャン」
「プッ! 何それ? 裸の王様?」
趙炎が彼の名前を口に出すと ミルクは咄嗟に笑い出した
「?!!」
急にゴルクレットが立ち止まる
「どうしたんだよ~~ 急に~~」
「クリスチャンって…… まさか……」
ミルクがゴルクレットの顔を覗き込むと
およそ似合わない真っ青な顔をしたゴルクレットが
同じく立ち止った趙炎がクリスチャンについて説明する
「そうです……
あのオーガ程ではありませんが 生まれつき授かった格闘センスと魔蛍の底知れない潜在能力
類を見ない魔式蛍術により拳を振れば爆発的な衝撃波が目の前の相手を吹き飛ばす……
訊いた話では 密集している敵戦艦六隻を一瞬で撃ち静めたとか」
「へぇ~~ すごいね」
「呑気に言ってる場合じゃねぇ!
変な壁で観客席は守られているから その反動が俺等に返ってきたらお陀仏だ!」
ゴルクレットは進路を間逆に変えてダンガーとクリスチャンの側から離れようとした
「お前どうする?」
ミルクは隣にいた趙炎に話しかけた
「ラウルのことは心配ですが…… 今は死ぬわけにはいかないので」
そう言って趙炎も後ろを振り返りそのまま走り出す
「気には掛けるんだな…… 逃げてるけど」
ミルクは趙炎の隣に並ぶように走る
「別にそんなこと無いですが?」
歯に衣着せない返答をミルクは疑うが 今はあの二人から遠ざかることを考えた
「君はいいんですか?」
「何が?」
「いえ…… 先ほど会ったとき友人同士かなと思ったまでで」
「勧誘したけど…… 断られました~~」
場所は変わり 大柄な男クリスチャンはその倍ある巨人ダンガーの元へ到着していた
「しばし集中する 我が家来共よ死守してくれ!」
「俺はアンタの部下じゃねぇよ?!」
ツッコミを入れる選手に耳を貸さず
そのとき澄ます集中力は逆に殺気を生み ダンガーの気に触れた
「……俺を見て勝てる気を起こすとはなそこのデブ!」
ダンガーは張り合うような殺気でクリスチャンを睨みつけ 勢いよく猛進し始める
「雇われた者達よ!! 王の準備が整われるまで全力で死守せよ!!」
家臣が腕を上げてその場にいる選手等が一斉に巨人に立ち向かった
「シッシ!! シュ……! シュシュッ……!」
ウォーミングアップをするクリスチャンの目に映るのは
全く歯が立たない選手が 巨人の前で虫のように潰されてゆく様
その目には涙が溜まっていたが準備を怠らない
「我が忠実なる部下達よ しばし待たれ……」
王は耐える 耐えきれない仲間への悲哀と巨人への憎悪を己の力へと倍加させて
約十分後
「フゥ…… フゥ…… 待たせたな巨人!! よくも我輩の部下達を!!」
「何分溜めようが無駄なことだぁ!!」
クリスチャンは右腕を後ろに引き 思いっきり息を吸う
「メガトン~~! シャインシューティング~~!!」
「さっさと撃ってみろやぁぁぁぁ!!!!」
ダンガーは待ち切れずにその巨大な右腕の強烈なストレートをクリスチャン目掛けてぶっ放した
「ストレェェェェトォォォゥゥゥゥゥ!!!!」
クリスチャンを中心に風が引き寄せられ 衝撃は全てダンガーへと一直線に流れる
「うぅぅ……!!」
ダンガーは咄嗟に防いだが それも意味無く辺りの選手諸共吹き飛んだ
ゴルクレット「クッ!! ここまで来ればと思ってたが……!!」
ミルク「あ~あ…… 逃げたの意味無ぇじゃん……」
趙炎「それ程までなのなか…… あの方の一振りは……」
衝撃は壁という壁に当たり やがてフィールド全域を埋め尽す
『こ…… これはどうなった~~!? 辺り砂埃で状況が全くわからな~~い!!!』
観客がざわつく中 広い砂漠の上に立つ一つの影がその姿を現す
『これは勝者と言って過言では無いでしょうかぁぁ!!?
全てを出し切り!! 勇ましく立つその勝者 それはぁぁぁぁ!!!!』
ディッツの声が辺りに響く中 その人影は観客に右腕を挙げ雄たけびを上げた
『王国フルパワーセントラル 第四代現国王クリスチャン・パワード!!!!』
Dブロック勝者を誰もが認めた瞬間
周囲の煙の流れが一気に変わり その巨体の拳が頭上から振り下ろされた
「「『「 ………… 」』」」
まるでその結果を期待していたから 今の現実に溺れていた
そんな気持ちが観客全てに絶句を与える
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」
人はそいつを神のように見上げ
人を神のように見下すことが可能
人はこいつに勝てない そう思わせる姿が神々しく 太陽の光を独占していた




