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ディアス闘技場Dブロック2 名を挙げるとき


ディアス闘技場に放たれた一匹の闘獣〝サル(どら)

とある無人島に生息する普段は温厚な生物であるが 葛藤するときのみ己の欲が特化し

獲物を奪う際にその天が生み出す異形の肉体が闘争本能を剥き出しにする

サル寅という生物は知能は猿並

人間以下ではあるがモノを覚えるに関してはけして他の生物よりは劣ってはいない

ある場所ではサル寅が人間の先祖だという説も唱えられている


何故そのサル寅が闘技場にいて 何故普段の温厚な性格では無く獰猛な姿へとなっているのか

サル寅は約十年前に奴隷となっていた 家族らしき数匹を含めて 


サル寅は人の言葉を理解することが出来る

飼い主の命令で闘技場の事や家族の命などを理由に束縛して手懐けたのだろう

今ラウルの目の前にいるのは最後の一匹になれば家族と故郷に帰れると信じ

今日も人知れず決死の覚悟で暴れ狂う


無論 ラウルもその事情など知らない


『おおっと~~!? 次々と玩具のように選手達を潰し回るサル寅に一人の少年が近づいたぁ!!

今大会で密かに注目選手の剣士ラウル君です!!』


観客陣に響めきと笑い声がDブロックに広まる


「ギャハハハ!! なに? ウケ狙いですかぁ?! それとも奴隷かな?」


「奴隷の飼い主もたまにエグイことするよな~~!!」


「あーゆーのが闘技場を汚すんだよな~ かつてのクズ王様のように……」



「……可哀想に」



観客の罵声よりも司会者ディッツから君付けで言われたことに

ラウルは少し苛立ちの表情を見せていたが


「さぁ~てぇ~~ サル寅ぁ!!」


「ウホゥ~~」


サル寅はラウルに標的を定める

片手に掴んでいた選手の胴体を飽きた玩具の様に投げ捨て始め

両手と両足を器用に使いながら四足方向で猛進し出す


「ウホホォォゥ!」


サル寅は右腕を振り上げラウル目掛けて一気に殴り掛かるが


「遅ぇよ!!」


ラウルはサル寅の右腕目掛けて一気跳んだ

構える二つの剣先は右腕に刺さり 瞬時に前回の島神と闘った時のように肩まで斬り上げる

肩まで登り詰めてそのまま空中で体勢を整えながら 流れるようにサル寅の背中に二刀両断を決めた


我流(がりゅう)!! 山波斬り(ざんばぎり)!!」


サル寅の振り下ろした右腕の拳が地面に当たった頃に

ラウルが対象の背中を斬り下ろして地面に着地していた


「ウホゥッ……!!」


サル寅はようやく斬り込まれた背中に気付いたが

然程反応を見せずにすぐさまラウルの方へ前を向く


「硬っ……!! 島神よりではないが…… クソ!!」


ラウルは体勢を立て直し サル寅に向けて再び地面を蹴る


「斬りまくってやる!!」


サル寅の懐に近づき 刃先をむき出して宙へと跳び上がり


「ウホッ!!」


しかしサル寅は今までに見せない機敏な動きで頭を傾け

体全体が空中にいるラウルよりも低姿勢で 攻撃をあっさり避けた


「……はぁ?!!」


ラウルは動揺を隠せず 目を大きく開き 額には尋常じゃない汗が流れ出る

それをサル寅は無視するかのようにその体勢を維持したまま

浮いた右足をそのままラウルに向けて蹴りつけた


「ッッ!!」


彼は当たることを認めてガードに入ろうとしたのと同時に

サル寅の浮く脚とは逆の 地面と繋がる脚の側に二つの人影が現れる


「機敏な奴だな……」


「おい! 落ち着く暇はないぞっ!!」


「んぁ? アンタとは動体視力の次元が違うんで大丈夫っすよ」


余裕な表情を見せる選手は 片手の中の指三本を合わせてサル寅の足首を綺麗に切断した


「……?!」


サル寅は斬られた足首を見てようやく痛みを感じたのか

ラウルに放った右足の軌道が反れて 紙一重にラウルの頬を掠る


「……チッ!! 余計なことを!」


ラウルは地面に着地するなり目先のミルクを睨みつける


「助けたのにすごい顔だね」


ミルクが溜め息を吐いていると 隣にいた趙炎がサル寅を見て周囲に注意を促す


「おい!! いがみ合う暇は無いぞ! まだ奴は生きてる!」


足を切られても両手で立とうとするサル寅 その目はそこらにいる動物よりも何かを志している


「うぅ…… ふぅぅぅ……」


サル寅の目は常にラウルを見ていた ラウルもそれに応えるかのように構える


「お前らは手を出すな…… こいつは俺の相手だ」


ラウルの思いに何かを感じたのか 二人はサル寅に対しての戦意を失せる


「分かりました では俺は別行動させて頂きます」


「左に同じ~~」


そう言って二人はラウルと猛獣から離れて別の場所へと向かう


「決着だ!! サル寅ぁ!!」


ラウルは叫びと共に砂漠を駆け抜けて行き サル寅の身長より高く跳び上がる


「ウホゥ~!」


サル寅も片足でなんとか立ち上がり ラウル目掛けてその大きな拳を放つ

一撃をまるで紙のように躱し 回転しながらサル寅の腕を斑に削いだ後に勢いを乗せて

首の横を双剣で斬り刻んだ


「う…… うぉぅ……」


サル寅は今まで斬られた箇所があまりにも多く

ミルクによる足の切断もあって出血の量が尋常では無い

人間でいう貧血という次元ではないが 地面に寝そべるように静かに倒れた


「ハァ…… ハァ…… よし!!!!」


ラウルが剣を上に翳すと同時に 観客からの壮大な歓声を受けた


「おお!! すげぇ!!」


「あの猛獣を倒しやがった……」


「何て奴だ……」


この状況に実況のディッツも黙っておられず


『なんとあの闘獣サル寅を打ち負かす奴など ここ数年で見た奴がいるでしょうかぁ?!

今大会のダークホースとなるのかぁ!!? ラウル選手~~!!』


この時を待っていたかのように

ラウルは観客に向けて勝ち誇る態度を表し 僅かながら集中力が欠落していた


その一瞬が 命取りであった


「……そんな獣倒したくらいでイキがるなよ」


ラウルの背後に近づく巨大な人影 その巨大な拳は雷の如くラウルに落下した


「………は?」


「………え?」


観客は目の前の現実に理解がで追いつかない あっという間の出来事だった




数分前 観客席の入り口


「ハァ! ハァ! も~~ラウルのバカ!! 一緒に起こしてくれたって良かったのにぃ!!」


不機嫌な顔で階段を走る一人の少女 息を荒くしながら試合会場の見える外フロアに出ると

ずっと走って来たのか 膝に手を置いて軽い深呼吸をしている


「さて! ラウルはどこにいるかな~~」 


少女はラウルを捜しながら座る席を求め 近くを彷徨いてると


「ん? これはこれはメモルさん やはり貴女も見に来ていましたか?」


「あぁ!! しゃしょうさん!!」


「ゼッペルで良いですよ ラウル君は頑張ってます」


ゼッペルのいた場所はDブロック付近の観客席だった為

六つに分かれた内の ラウルの戦闘を見るには絶好の場所だった


「へ~~ ラウルどっこかな~~?」


「まぁ広いですからね 少しでも見失えば探すのも一苦労ですよ

それに私も個人で見守らなければならない奴がいましてね……」


「確かゴルクレットさんでしたっけ?」


「そうですね…… おっ! ラウルさんいましたよ!

まさかあの猛獣を倒すとは……」


「え?! どこどこ?!!!」


メモルは会場全てに目を配らせて必死にラウルを探す

すると目立つ場所の一か所に 大きな猛獣を倒した一人の少年が剣を振り翳しているのが目に入った


「あーいたいた!! ラウ……!」


それはメモルが名前を呼んだ直後の出来事だったのだ



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