ディアス闘技場Cブロック2 カミハテ
「ぐあぁぁぁぁっ!! 」
「ヴィルチェがやられたぁぁ!!」
獣の如く人に恐怖を散りばめるドス黒いオーラを漂わす奴隷シャハル
剣闘士ヴィルチェを周りの選手と共に素手で薙ぎ払っていた
「こっちも助け……」
叫ぶ選手の背後を斬り付ける 歪んだ笑みが印象の青年
「いーね~~! その悲鳴は…… 興奮するよ!!!」
変態と恐怖を掛け合わせた変人が陣を突っ切る
「チッ…… 面倒な奴が二人も…… いやまだいるぞ」
サドンの正面には 海賊マッドが剣闘士マルナタと剣を交え合っていた
「僧侶さん! まだですかぇ?」
準備の状況を聞けばモガルシュカは冷静に返す
「案ずることはありません…… 後一寸のほど待て」
ーーそろそろか……
サドンは指を折り曲げてるが 果たしてその合図の意味とは
Dブロック広場西側
魔法を使う選手ナルメアの粘りは行く手を阻む選手らを次々と返り討ちにしていく
そんなナルメアに近づく一人の男 それはマッドだった
「強いね君」
「…………」
ナルメアは布で顔は覆っている故に他者から見えていないが
微かに見える両目の周りの皮膚には汗が流れ出ており それが動揺を表していた
ブロック内北側
「へぇ…… 君はこの重力に平気なのかぁ~~」
「まぁこの程度なら…… 手加減感謝します」
誰も近づけないでいたヴァースの数メートル先に立つ一人の選手
「んで…… 攻撃して来ないのかな?」
「とんでもない…… 単刀直入に言うと協定のお話に来たんです」
胡座でその男を見上げるヴァース それに対して堂々と立っているのもまたマッドという男
場所はまた離れて
「覚悟しろ!! モーガン!!」
数人の選手が剣を振り上げ 剣闘士モーガン目掛けて走り出す
「ッ……」
モーガンは全ての選手の刃を全ていなし 反撃もせず一直線に逃げた
「クソ!! 何なんだあいつ…… 国の汚点の分際で!!」
「周りから囲めぇ!!」
チームを組んだ選手達はモーガン討伐に励んでいる
戻ってサドンの作った陣にて
「……っ!!」
猛進していたシャハルの動きが止まる
顔・腹・足 数分前まで無傷で闘っていた強靭な肉体を持つ奴隷に
深手を与えた一人の選手が不気味な笑顔を見せている
「ん~~!! 良い~体してるね君…… 斬り甲斐があるよ!!」
多少変人口調が耳に付く シャハルの肉体をも斬り裂くレイピアを持つ高貴な戦士
「頼みましたぞぇ!! ルーナイト様」
「こんなに沢山集めて頂いて…… 貴方には感謝するよ! これで一気に……!!」
不適に笑ってはシャハルだけでなく 陣を固めていた他の選手までにも牙を向ける
「ぎゃぁぁぁぁ!!! サドン!! どうゆう……ことだ……?!」
サドンはメガネを拭き直すことに夢中で 虫けらのように興味など無い選手の声は耳に届かない
ーーさて第二段階も上々…… あとはこの僧侶の力で何人倒せるかだなぇ
メガネを弄りながら着々と策を実行し始めているサドンは充実感に酔っていた
ーー事前の策はほぼ捨て牌 何故なら予想外が起こった時に後の策が全て無効になるからだ
自分の思うままにいかない奴ほどストレスが増し 戦闘が荒く そして足を掬われる
俺の場合は直後でも策を練り直せるが 土壇場で自分の身に対処出来ない何かが起こるかもしれない
そうならないように身の安全が確保されるよう周りに味方という駒を配置しておく
周囲の犠牲は自分が生き残る為に有利になる素材でしかない 故に土壇場でも冷静に処理できる
サドンは拭いたメガネを掛け 機が満ちたと言わんばかりに周りの残った選手を確認する
ーー何故あの僧侶が俺の切り札となっているか それは単純な話
奴の持っている〝底知れない力〟が慎重に足るからだ
〝 カミハテ 〟
神が人を選び 選ばれない奴は王にひれ伏すように倒れ 実質気絶する
神が選ぶとは実際に神が選ばず 言うなれば運であるそういう能力
運が良ければ気絶しない しかしアタリの確立は約1% もちろん俺はハズレ……
だが 一つだけ確率を上げる方法がある
〝それは本人との関係〟つまりは術者との交友ランクを意味している
友達・親友・恋人・家族 上がれば上がるほど自分が助かる可能性は上がる
と言っても俺は戦友程度だが1%より20%でも変われば良い方だ
何よりも今はバトルロイヤル 仲間がいる心強さがどれほどの好感度を得られるか
感情論を掛け算として換算すれば答えは相当なものになるだろう
話は変わって何故陣を守る犬共を消したか
理由は二つある
一つは試合が始まる前に俺は仲間達に
「最後まで生き残り 最後に残ったこの中で勝者を決める」と言った
しかしもし僧侶の術で生き残った選手がいれば
裏切りがバレて残った奴等が俺を殺しに来ることは一目瞭然
もう一つはこの術の範囲内での生存確率と言うものがあるからだ
この技には発動範囲が決まっていて その一定の範囲内にいる人数が少ないほど生存確率が上がる
その点ではガタルゴの魔法 透明な壁が出現して生まれたシステムが予想外の救いだ
要するに資質のある奴か 術者に媚びるかでしか生き残る術が無いまさに二つに一つ
俺は後者に頼るしかない訳だ
サドンが着々と策を進行する中 僧侶モガルシュカの準備が整う
「天界より見守りしアシュビル!! この世の王はどこぞにおるのか……
代理人の前にその証を 腹心の片鱗を示せ!!!」
祈るように握っていた両手を離し 空に叫ぶと共に両手を仰ぐ
「〝 神による王の選別 〟」
モガルシュカを中心に荒々しい風が吹き始める
砂煙が辺りを覆いCブロックを埋め尽くすほどの砂塵が舞った
『おおっと~~!? これは何が起こってるんだぁ?!! 辺り一面何も見えないぞ~~!!』
「おいおい……!! どうなってんだぁ?」
「何も見えねぇぞ!」
観客が野次を広場に投げかける状況も束の間
徐々にCブロックに舞う砂煙が静まり その戦況が露わになる
『こ…… これは……!!』
観客席から見渡す広場には 選手のほとんどが倒れているCブロックの光景だった
その中には術者のモガルシュカ本人までもが気絶している
「ハァ…… ハァ…… よし…… 意識はある 次の段階に……」
半ば気絶気味のサドンの背後に立つ一人の影
その影は鋭い剣先を振り上げ 不気味な笑みと共に綺麗にその人肉を削いだ




