ディアス闘技場Bブロック3 衝突する二つの龍
壁に物凄い勢いで叩きつけられた選手がいた
「フゥ…… しつこい奴だ」
砂埃が周囲を舞う中 壁に手を預けて血を流しながらも立ち上がる枷の付いた人影が見える
「ッ……!!」
『なんということでしょう 先程から何十発も繰り出すルンウェイ選手の拳をまともに受けながらも
即座に立ち上がる醜き奴隷…… ガボ・ルースです!! なぜあんなにタフなのでしょうか?!』
壁に這いつくばりながらもルンウェイを睨みつける そのガボの顔つきがルンウェイを苛立たせた
「ハァ…… 飽きたんで詰もう」
ルンウェイは足を開き左腕を引く ガボを右手で照準を定めて技を放つ
「青龍東一心流〝粗末心得〟掌」
ルンウェイは唸り声と共に襲ってくるガボに掌底で標準を追いかける
「フン!!」
自分の間合いに入ったガボの胸部にルンウェイの手のひらが静かに合わさった
それは音も無ければガボが吹き飛ぶことも無く 目を見開いた状態のまま横に倒れた
「そろそろ決着だな……」
一方妖雷はボルマーを戦闘不能にしてダン・カーリーとの激闘へと走っていた
ボルマーは左腕を妖雷の棍によって破壊され 右腕だけとなってその場に倒れている
「ハァ……ハァ……!! グッ……クソォォォォ……」
ーー……俺は 俺にはアンタとの約束を
「その雷は厄介だな」
「各々の力量の差は五分五分 しかしここで引かぬが武道の心得
ギャングとて然り ここは退かねぇ!!」
妖雷とカーリーが繰り広げる激戦の場にルンウェイの姿があった
「そんなのと互角に張り合ってちゃぁ興醒めよ 修行不足!! 出直してきな」
軽く地面を蹴って何か目的があるかのようにその場所まで跳んだ
行き先は妖雷とカーリーの激戦の中央
しかし移動の速度からしてその場に着地するには速度が落ちない
ルンウェイの目は最初から妖龍を見ている にも関わらず激戦真っ只中の二人に突っ込む理由は
彼がカーリーの実力を知った時点で漏れた冷めた心の声に忠実な本心
ーー飽きた
その一言がルンウェイの当初の目的の強者探しから大会の優勝へと変わる瞬間だった
「フン…… 餓鬼が!! 一丁前にこの俺にガンつけてやがるな」
妖龍もルンウェイに標準を決めて面と向かって前進する
「俺を無視すんじゃねぇって言ってんだろ!? へハハハァァァ!!!」
右腕の義手だけで妖龍に立ち向かうはボルマー
「死ねよ……!!」
ボルマーは妖龍の横顔に向かって弱々しい拳をめり込ませる だがしかし
「……やる気のねぇ拳で俺の前に出てくんじゃねぇよ!!!」
妖龍は自分の左腕を横に振り切り ボルマーの脇腹に強く当てる
「ゥゥッ……クッ……」
ボルマーの身体はみるみる妖龍の拳から離れ 壁に吸い寄せられるかのように吹き飛んだ
時を同じくして妖雷とカーリーの死闘の場に突っ込む
そして外野より二人に近づくルンウェイ 一瞬の出来事故に実況の説明は皆無
通り道のついでに 例えるならばルンウェイの速さから生まれる風に毒が混ざっているそんな抽象的な刹那の一撃
その風を浴びたタイミングで二人は地面に抵抗無く倒れた
あくまで例え 観客の多数はルンウェイが仕込んだ魔法にしか見えなかっただろう
実際は二人の領域に入った時 ルンウェイは二人の身体の急所となる数か所を押しただけ
「Bブロック決勝といこうか」
「ほざくな餓鬼がぁ!!!」
妖龍とルンウェイの拳が重なり合った時
Bブロック内に凄まじくそして得体の知れない衝撃波が散る
それと同時に周りに立っていた僅かな選手達も意識を保てずその場に倒れる
『こ…… これはどういうことだぁぁぁぁ!!!?
妖龍とルンウェイが衝突したと同時にリングに立っている選手が全滅したぁぁ!!?』
すぐにルンウェイのコンマを切る高速な技の連撃を受け止め 妖龍は後ろに下がった
「てめぇの力量は認める…… だから最初から本気を出さず力を溜めていたのはこの為よ!!」
妖龍は拳に魔力のオーラを溜め始めた
「最後は強者同士が生き残る その時を待ってな!!」
妖龍は迸るオーラ状のものを拳に集中し終えたらルンウェイに向け構えを取る
「纏蛍の応用か…… すごい気だな」
ルンウェイは前屈みになり身体全体に集中を張り巡らせる
「強者同士の闘い程 短い試合は無いってか? 上等…… 受けて立とう」
ルンウェイは目を閉じ 本人曰く無意識に合掌した
数秒の沈黙が過ぎ去った直後 場の空気が一瞬で白熱する
「大震憾武闘!! 地戻鳴動!!!」
妖龍は右拳を後ろに引きながらルンウェイに向けて猛進した
「青龍東一心流〝遊義〟守一重!!」
ルンウェイも集中力が極限まで高まり むしろ心が豊かになっていた
妖龍が接近し力を籠めて右拳をルンウェイに向けて振り下ろされる
「死ねやぁぁ!!!!」
「…………」
ーー力は良い…… 狙いも良い…… だが… 敗因は単純と横暴さだ
ルンウェイはまるで時間が止まっているかのよう
妖龍の拳を軽々と躱してそのまま上空へと背面跳び
しかし妖龍は気づいていない
そのまま地面に拳を叩きつけ 地面の砂をそして選手もまた全て壁へと吹き飛び
広場にはBブロック全てを覆いつくすかのような黒い穴が開けられた
「ハァァ…… ハァァ…… 俺をナメ過ぎたな」
足場のある方へ跳んだ妖龍は確実にルンウェイを仕留めたと思い込んで安堵していた
妖龍の集中が切れたその時 上空から太陽に照らされた神々しくも映るルンウェイの姿が彼に向けて急降下する
「光導功道一の型とは本来達人の中でも才を持つ者だけが血を滲ませ会得する人離れの神業
その圧倒的な お前との差を 身を持って実感するがいい」
妖龍に向けて掌を差し向ける
「如来心象 降誕!!」
掌と妖龍の身体との距離が縮む度に妖龍の身体に異変が起きる
「なんだ? 身体が重くなったような…… まさか!!?」
しかしその重さは徐々に大きくなり 立っていられなくなる程のもの
「ガッァァァ!!! なんだぁぁ!!?」
ルンウェイが妖龍との距離が2メートルに近づいた時
相手の身体が瞬く間に地面にのめり込んでいく そして妖龍の開けた大きな穴に上手く落ちていったのだった
『なんと~~~~~~!!!!!!
あの漢の国のギャングの首領がまさかの敗北!!!? この状況を誰が予想したかぁぁ!!!?
Bブロックを制したのはルンウェイ~~~~!!!!』
歓声が湧き上がる中 ルンウェイは手を合わせて深く一礼していた
Bブロック勝者 ルンウェイ・イーストベル




