ガルバーク帝国西海岸 魔蛍操作
「それでは…… まずは魔蛍についてどこまで知ってるかだが?」
マッドに聞かれたラウルは腕を組み 頭を傾げながら考え始めた
「蛍のような光子みたいなのは分かる…… あとは……」
「まずは…… 最初からだね」
そう言って黒板にチョークで何やら書き始めた
「魔蛍とは生き物のようで生き物では無い まぁ実際に見せよう」
そう言うと
マッドの手の平には何処からともなく一つ一つの光子がフワフワと黄色く寄って来る
よく見ると白色の魔蛍が黄色い魔蛍よりも遥かに多く辺りをざわつかせていた
「すげぇ……」
「このように魔蛍は誰でも生み出せる……
呼ぶと言っても良いが魔蛍は人の根源とも言われているんだ」
「……」
ラウルは神秘的とも言える魔蛍達を見て言葉を出せずにいた
「無理もない…… 普段はこんなに白い魔蛍が出ることは無いからね」
「普段はって マッドさんが呼んでいるんじゃないの??」
「魔蛍は基本白色でね 人に近付いてくると色が各々変わるらしいんだ」
それを聞いてラウルは自分の周りの魔蛍を見回した
「俺の周りは…… 白のまんまだ……」
「それを今から教えるんだよ 魔蛍を操作する
その言葉の通り今から君には三つの業を知ってもらい
さらに今日中に一つの業を体得してもらう」
「お…… 押忍! でもなんで一つだけ?」
「本来は一つ身に付けるだけで一年はかかる修行だ
それを短時間で物にするんだから…… 考えればある意味恐ろしいことだよ……」
「そんなこと出来るの!?」
ラウルは事態を把握し少々怯え気味になる
「まずは〝纏蛍〟
発生させた魔蛍同士を繋ぎ合わせて体に纏わせる
そうすることで通常より防御力兼ねて攻撃力が爆発的に上昇する」
「すげぇ でも何でそんなに肉体が強化されるんだ?」
ラウルは手を挙げて質問した
「強化するのは魔蛍の所為であって肉体は変わらないんだ
それほど集合した魔蛍のエネルギーは凄まじいという事をまず理解して欲しい
例えばだ 纏蛍をした人間が纏蛍を体得していない人に殴りかかれば
体得していない人の殴られた箇所は瞬く間に粉砕するだろう
だから纏蛍に纏蛍は必須ということだな」
ーーあのチンピラの〝裸野郎〟の意味がやっと分かった……
「次に〝魔装〟
一言で言えば〝魔蛍を物に纏わせる〟
纏蛍を自身の身体では無く 武器や防具などに纏わせその物自体を強化させることが出来る
簡単に言えばそういうことだな」
「……それだけ?」
「取り敢えずはそうだな~~ 本題はこっからだけどね」
マッドは黒板に纏蛍・魔装と書き その右に少し大きめな文字を書いた
「最後は〝魔式蛍術〟 つまり魔法だ」
「おお~~! 魔法!!」
ラウルの目は魔法と聞いた途端に少年の目に変わった
「無理もないな…… だがこれと魔装は今日で習得は不可能だ」
途端にラウルの目の輝きは元に戻る
「魔装はともかく 魔法は発動条件が科学的がハッキリしていなんだ」
「でもあるっちゃあるんでしょ?」
目は戻っても 好奇心が残りつつあるラウルはなんとか方法を聞こうとする
「あるとしても流派や血統または育った環境からでしか前例が見られないからね……
かといって相手の魔法を下手に真似てもその者の潜在能力が上手く引き出せない
相手に合わせても自分の個性は自分を許してくれないから……」
「マッドさんは何かできるんですか?」
「……」
マッドは暫く黙り 静かに首を横に振る
「いや…… 纏蛍と魔装だけだよ
さて! じゃあ覚えて貰う業の一つ纏蛍を体得しよう」
誤魔化すように言ったマッドに ラウルは焦らされた感を抱くが
時間が無いので気にしないようにした
「でもどうやって一年で体得するものを短時間で覚えるんだ?」
「それはだな」
マッドはラウルの肩をそっと掴んだ
「今から俺が君に魔装に似た様なことをする」
「俺…… 物ですか?」
「まぁ言うなればキッカケだ」
マッドはフッと笑いながら人差し指を立てて説明した
「普通は長時間魔蛍と心を通わせながら身に付けていくもんだが
強制的に体内に魔蛍を送れば 普段の倍近くの割合で魔蛍と精神統一出来るのさ」
「ほほぅ……」
「その代わり生存率一割 死亡率九割となりま~す!」
「ほっ……!!?」
一瞬でラウルは固まり 額に物凄い汗が湧き出て来た
「これは賭けだ…… そう簡単に大きな力は手に入んないよ」
「……時間が無い 頼む!!!」
恐怖を捨て ラウルは目を瞑って心を落ち着かせる
「じゃあ行くよ!! 本来は生きてる者に使っちゃ駄目な奴!!」
「大丈夫なの!?」
ラウルの不安を無視するかのようにマッドはラウルの両肩に手を置き
纏蛍した状態でその纏った魔蛍をラウルに送り流した
「うっ…… あぁ……!!」
ラウルに走る激痛 それは彼をのたうち回らせる程の痛みだった
「本来これを耐えるのは不可能に違い 文字通り生きていられたら奇跡だ」
「ウッ…… オエェ…!!」
息も荒く嘔吐までしたラウルは今にも死にそうな状態
ーー何だこれ…… 痛てぇ…… 全身が痛てぇ…… 死ぬのか……
…………死んでたまるか!!!!
ラウルは思いっきり床に握り拳をめり込ませて小鹿のように立ち上がる
「ハァ…… ハァ…… 死んで…… 堪るか!!」
「……奇跡だね」
ボタボタと胃液と血が口から流れ出し 目も霞み 足も小刻みに震えている
そんな中でもラウルは必死に呼吸を整えようとしていた
そしてその周りには 魔蛍が赤くざわめいている
「やったな! ラウル!」
「はっ! はは……」
ラウルは一回立ったもののすぐに床に倒れてしまった
「寝てる暇は無いよ?! これから纏蛍のコントロールを…… 寝てるし」
マッドが身体を揺さぶっても ラウルの深い眠りはどうすることもできなかった
ーーまぁ…… きっかけは成功したことだし良しとしますか…………
明日の大会を迎える秒針は刻々と進む




