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ロストファビュラス主要国議事堂 西の庭園1 思い出話


槍を突き出す趙炎にオーガは艶の胸ぐらから手を剥がし

ニタついた表情でその槍を握り返した


「俺に刃先を向けるとはどういう意味か分かってんだろうなぁクソガキ!」


「国を治める上で正しい話の進め方なんて私には分かりません ですが……」


握られた槍先から伝わる力に圧倒されながらも 趙炎は臆することなく前に出る


「我が主君が危険に晒されていることだけは分かる!!」


「よすんだ趙炎!」


何故か皇帝陛下がただの兵士を止めるというシュールな状況に入ったが

決定的に新たな事故を防いだのは


「元気良いなぁお前!!」


トゥ・トア・フリカの人間国宝ジンだった


「今回のミソは一段落したんだし居ても意味ねぇからな…… 艶陛下!! こいつ借りてくぜ!!」


「えっ…… ちょっと……! 私には陛下を守る責務が!!」



「あぁ! 楽しんでおいで!」



ーーえぇぇぇぇぇぇ!!!!



艶の了承も頂き ジンは高笑いしながら趙炎の首根っこを腕で掴んで会議室を後にした


「では俺も失礼する」


スレイシャガルの人間国宝ゴート・メゾ-ラもグランの了承を得て出て行く

他も並んで会議室を出て行き 残った人間国宝は漢の国の左慈だけだった

というよりも彼は深い眠りに就いている


「では会議の続きを…… ガルバーク帝国を新大国の機関に加入させるかどうか決めましょう」


ようやく話せたと尋常ではない汗を拭き取るデベロップ

艶は何事もなかったよかのように着席し

不満だけが残るオーガも渋々自分の椅子に強引に座った


「良かったのですか艶陛下? 護衛の兵士を行かせても」


「えぇ 彼にはもっと幅広い経験を積んで欲しいですからね!」


ついさっきまで緊迫感溢れる空気の中心にいたにも関わらず

気持ち悪いまでの嬉しい表情の艶にフラメルは聞いておいて鳥肌が立っていた




会議室を出て西側に向かっていたジンと趙炎は途中で食堂の厨房に立ち寄る


「こんぐらいだな……」


「あの…… これは?」


許可も無く冷蔵庫を漁るジンは人を小馬鹿にする態度で答える


「あぁん? 知らねーの? 一般的に流行っている缶ジュースだぜ?」


ラベルを見せられる趙炎の両手には既に二本の缶ジュースが持たされていた


「五本…… いや六本だな…… ほらマリも持て!」


趙炎がふと後ろを向くと先ほど会議でジンの椅子に座っていた筈の彼女がそこにいた


「うぉっ!」


「なんだよ……」


「いえ…… なんでも……」


一人二本ずつ持ってジンの後ろを付いていく趙炎は彼に聞く


「助けに入ってくれたんですか?」


「んな訳ねぇだろ」


迷路のような議事堂内部を缶ジュースを宙に放り投げては受け取るを繰り返すジンは

次々と角を曲がり西へと向かう

出口が見えて来る頃には その景色に感想を求められているかのよう趙炎の心が震えた


「綺麗な庭ですね……」


「あぁ殺風景なロウラル諸島の唯一のデートスポットだ 覚えておけよ」


手入れされた庭には数種類の花が咲いている

それは見事な開花を見せ 数ヶ月に一度は人が来ていることを暗示させていた


「さぁ座れ」


中央の泉に趙炎とマリは座らされ ジンは立ったまま缶ジュースの蓋を開けて飲み始める

趙炎らも釣られて泉を囲む石段に置いた缶ジュースに手を付けようとしたとき


「……魔蛍ラル


マリの手の周りに寄ってきたのはこの世に存在する蛍のような魔力を持つ光子だった

趙炎もそれに気付いてふと背後を振り向くと 泉の周りには色取り取りの魔蛍が宙を舞う


「こんなに一度に多種の魔蛍を見れるなんて」


「ここは【ウルズの泉】と呼ばれる場所だ

理由は分からねぇがこの類いの泉は世界各地に点在している

そしてその泉にはまだ見たこともない色を含んだ魔蛍達がうようよいるんだとよ」


「学者の間では魔蛍には色毎に特性があってそれ故に

〝一定の地帯にいる特定の色の魔蛍とその他の魔蛍の割合は8:2〟だと聞いています」


「勉強してんじゃねぇか趙炎! 火山には赤い魔蛍 海や空には青い魔蛍

普通の島々には黄色または緑色の魔蛍がいることで〝この世の始まりは魔蛍から〟だの

〝光や色の三原色〟なんて言われてんだよな!!」


二人が楽しく話していると

缶ジュースを持ったマリは立ち上がりジンに手を差し出す


「私は用済みだ 帰るから魔蛍琥珀をくれ」


「まぁ待てよ…… せっかくだからゆっくりしていけ」


「私は公安委員としてやることが山積みなんだ!」


「そこにいる趙炎は…… ラウルのダチだと言ったら?」


「…………」


マリは何も言わずに泉の石段に座り直す


「あのジンさん…… 俺は別にラウルとは」


「六年前のガルバークの闘技場で一緒にラウルとハイゴレに立ち向かったんだろ?」


「……いえ 当時の私は何も出来ませんでした」



「知ってる限りでいい!! 教えてくれ!!」



ここでマリの正体を趙炎は知ることになる

相手の止まることのない質問攻め 趙炎もいつの間にか話題がラウルということを把握しつつ理解し

何より思い出を振り返ることが楽しくなっていてマリと会話を繋げていく

ジンはそんな二人の光景をジュースを啜りながらただ見ていた


「すごいなぁ……!! 私と出会う前のラウルを知っているなんて羨ましい!!」


「いいえ…… それ以来の彼を知ったのは革命軍にいるという国からの情報だけですし

再会する事なんて勿論ありませんでした」


ラウル大好きのマリ相手に彼との思い出を正直に話す趙炎

そんな中で彼の記憶には懐かしきラウルとメモルの二人の姿が蘇っていた

それはマリとの楽しい会話を中断してまで呟いた 漏れ出る素の気持ちだった


「何で今まで…… 会いに行こうと思わなかったんだろう……」


「「 ………… 」」


趙炎の素の言葉に 容易に二人は入り込もうとはしない

そのカラクリは至って簡単だったからだ


「マリさん…… ラウルは本当に……」


「……それは」



「死んだよ」



ジンの無慈悲な言葉を趙炎は受け入れる


「彼の死を受け止められる…… すみませんマリさん」


「…………」


「俺はそれほど ラウルとは親しい関係では無かったです

貴方と楽しくラウルを語る資格が自分にはありません」



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