ロストファビュラス主要国議事堂 会議室4 隠蔽か正当か曖昧か
「ガルバーク帝国についてなら聞きたいことや確認がある」
「王政交代やハイゴレかな?」
艶の質問を待ってましたとばかりのグランだった
「えぇ…… それよりも奇妙な噂がありましてね
国内全体の規模での記憶の改竄をされていた件ですかねぇ一番は
前任の王である〝モーガン・ラ・フェリア・ガンルイス〟が数十年前の人物になっていたりとか……
外部の者が聞けば耳を疑う いや その〝新王家〟にとって都合の良い話にも聞こえるな」
「あぁ…… なんとも子供の悪戯のような……
しかし気になる点は国一つの記憶丸ごと弄れる何かがいることだな」
艶とフラメルの二方攻めに グランでさえまとめきれていない情報に顔を強張らせる
既にエリツィンに限っては部外者の振る舞いだ そんな彼にグランは敢えて目を合わせて話す
「ルドレイン王からの報告では我々王族を含めて被害者だとマスク-ヴァから聞いている
いつどこで記憶を書き換えられたのかも分からない状況なら仕方あるまい」
「そのルドレイン王は本当に知らないのか?」
さらなる追い打ちを仕掛けてきたのはエリツィンだった
「彼らとの繋がりがあった筈だグラン王 貴方達との密会も……
いや丁度モーガン王があの〝魔法都市〟に貴方からの了承を得て
始まったことじゃぁないんですか?」
「それならこちらも聞きたい
王政が急に変わったことを領界のトップである貴方も一早く知っていたな?
疑いはなかったのか?」
ここで他の人間のまとまっていた状況が覆された
ガルバーク帝国を推す上で手を組んでいたという
疑惑が浮上している二人がいがみ合い始めたのだから
まるで互いの知らない部分を埋め合うような
混乱する中での第一声はオーガだった
「待て……
ガルバーク帝国の新王家誕生の件は十二年前の会議で正式に決められたと親父に聞いた」
オーガは席を立ち エリツィンの座っている円卓に圧のある拳を置いて顔を近付ける
「何を隠してやがる?」
「…………」
オーガに睨まれ グランからも重い視線を向けられるエリツィンはようやく気付いた
これをはっきりさせるのがグランの狙いだったのだと
しかしエリツィンは大国の王 土壇場こそ冷静を意識する
「当時のガルバークからの報告はこうだ
〝過去の王の行動は悪政と判断し国民同意の下処刑を執行した〟と
このことから既にいくつかの空白の矛盾が発生していることは
その後の調査で半ば無理矢理にでも処理した
しかし民の安全を優先しての彼の行いは不問同然
どちらにせよモーガン王は国よりもいつだって世界に憧れる子供だと聞いた
こちらとしてもルドレインという国想いの男を賛頌したいと……
当時はそれが全て上手く事が進んだのだ」
返答を聞いたグランはエリツィンの言葉に腸が煮えくり返る
「モーガンはそんな一方的な男ではない!! 常に国を思いつつ
城下の彼奴は今何をしているか考える男であった!!
魔法都市への訪問はまだ見ぬ文化を一番に国民に広め
人々の生活により安寧という進化を届けたかった
それが彼の思想だ!! 上っ面で物を語るなぁ!!!」
「落ち着いて下さいグラン王」
息を荒げるグランは胸を抑えながら椅子に座る
「結論を急ぐようで悪いのですが実際にモーガン王は亡くなられている
この世に存在しないのに現在の王家についてまた討論を繰り返しては
それこそ第二第三の惨事を招くことになるのです
結論に至るまで平和を求めるのならば 黙認して先進させるのが妥当だと」
「っ……」
「そしてルドレイン王の考えはあくまで〝王政改革〟ではなく〝王政復古〟と言っています
これは昔から意見を変えていません 不思議なことに当時よりも最近会った彼の方がその思想は強く
後ろめたさなどない真っ直ぐな目で語っていました」
「「「「「 ………… 」」」」」
「今と昔の彼の心境の変化を知ることはどれだけ問い詰めてもその真意に辿り着けるか分かりません
今回の事件で不可思議に取り上げられた〝記憶を書き換える者〟が原因です
私もこの件に触れる度に混乱します
この可笑しな魔法は掛けられていない外部の人間をも惑わす強力で恐ろしいものです
そんな中ガルバークの国民達は勿論
ルドレイン王も被害者でありながらあの事件の後の目まぐるしい復興を見せて貰いました
彼らの帝国は本物です これを再認識した上で本題に目を向けて欲しいと思います」
静かな時間が流れた
グランもその時間を使い 取り乱した心を落ち着かせる
空気を破ったのは艶とパリスの拍手だった
「お見事ですエリツィン大統領」
「名演説!! 自分は会議に参加してこんなにワクワクしたの初めてですよ!!」
「何言ってんだてめぇら!?」
一人納得のいかないオーガは円卓から拳を離そうとしない
「今の話だけでガルバークを信用しろだ? 冗談じゃねぇ!! 馬鹿の俺でも分かる
ルドレインって奴がその〝記憶を書き換える者〟と手を組んで謀反企てたって話になるんだろうが!!
なに一同揃ってそのクソ野郎を認めてんだよぉ!!」
「何が不満なのですか?」
「……あぁ?!」
怒鳴り散らすオーガの視線は艶に走る
「そんなことは誰もが察しての今の話だったんでしょうが
だが証拠も証人も今日まで出て来ない…… 仮にな
そうなったのはその〝記憶を書き換える者〟の仕業だ
だがそいつの捜索の話は前回の会議の結論で打ち切られた
まるで雲を掴むように足跡すら無かったからな それはオーガ国王もご存じですよね?」
「だからそいつに賞金でも掛けて引きずり出せばいいだろうがぁ!! 〝ニクロ〟と一緒によぉ!!」
「ニクロって誰ですか? ……そして証拠もクソも何も無いと言いましたよね?」
「ルドレインに無理矢理似顔絵書かせてでも証拠を探せばいいだろうが!?」
「それが混乱を招くのだと 最終判断でエリツィン大統領が今おっしゃいましたよね?
先代の王亡き今 ガルバーク帝国の王政を崩して何がしたいんですか?」
艶は呆れかえる そのとき艶のほんの一瞬の呟きがオーガをブチ切れさせる
「オグル殿ならまだ話がスムーズに進んでいただろうに…… 残念だ」
「……今なんつったてめぇ!!」
オーガは思わず艶の胸ぐらを掴む
国際問題を恐れる護衛のガタルゴは必死に止めようとしたその時
「……何だお前?」
「陛下から離れて下さい…… 自分が何をしているのか解ってますか?」
オーガの顔に一本の槍先が突きつけられた
それは艶の護衛として背後に立っていた趙炎だ




