ライゴク王国領界2 盗み聞き
「既に兵士は配備しているが もう一度警護体制を確認する」
ロウラル諸島の中心に建つ議事堂から平原を越えて海まで
七つに分割して警備する体制を取ることが決まっていた
その内一つの海上から議事堂までの円弧部分が漢の国の担当となる
「まず陛下直属の護衛を俺と夏侯沌 兵士数30
議事堂周辺を 張遼・楽迅・徐交・于禁・趙炎・馬留 兵士数2406
平原の周辺を 張車・帝普 兵士数37500
そして海上を 周癒・陸遜 兵士数10064
各々今夜から明日の会議が終わるまでこの警護配備の維持を全うしてくれ」
「「「「「 了解!! 」」」」」
議事堂の南東側に設置されているテントに招集させられた十二衛兵は
再びそれぞれの持ち場へと向かう
趙炎もまた武器を持って馬留と共に議事堂の周辺を巡回していた
「最後はざっくり説明してたな…… 軍隊長」
「話し合っている今にも敵が来ないとは限りませんからね……」
「確かに今の七大国という国際制度に不満を持っている輩は後を絶たない
王達が一度に集まる今会議は絶好のチャンス
……だが今までの記録でもこの七大国協定会議に襲撃が起きた前例は無い」
「来るとすれば…… 革命軍ですかね?」
「反政府の中で唯一表向きに危険視されてるからまず出てくる団体名だわな
だがそんな情報は全くない 確率の高い憶測も杞憂で済まされれば少しは肩の力も抜けるが……」
「ですが今回も来ないとは……」
「分かってるよ 俺達はあくまで兵士 敵が来ようが来まいが王達……
いや艶陛下を守り切れればいいんだからな」
「……そうですね」
話し合っている二人は議事堂の壁際に突き当たる
「じゃぁここから別れて周辺警備だ 他国への友好的なコンタクトも忘れるなよ」
「はい!」
各々壁沿いに別れて行動する
陽も完全に暮れ出したが 議事堂の灯りによって自分がランプを持って移動することもなかった
「漢の国の兵か?」
「……ライゴク王国の兵士ですね?」
正面からやってきた巨漢の兵士と互いにお辞儀を交わす
「ここからはライゴク王国の管轄である そっちの兵にも言っておいてくれ」
「分かりました お願いします」
「あとそちらの士官にも伝わっていると思うが
七大国の内一つの大国を除いて六大国の王達が集まった」
「……? もう一つの国がどうかしたんですか?」
「君は今回の会議は初めてか? まぁあの国は欠席の方が多いからな……
取り敢えず先ほど到着した【マスクーヴァ連邦】の王が議事堂に招かれた時点で
明日の会議は予定通り開かれるから 互いに気を引き締めるようにな!」
巨漢の兵士はそのまま方向を後ろに変えて去って行った
ーーライゴクの人間は何故あんなに好感が持てる人がいるのか……
趙炎はその場を引き返して戻ろうとしたとき ふと一つの窓を気にする
自然と光が漏れ出るその窓の方へ向かうと
ーーあれは…… スレイシャガルとマスク-ヴァの王?
「貴方で最後…… 集まりましたな……」
「例の国がまた遅れて来ると聞いた 些か待遇が甘いんじゃないですか?
……してグラン王 何用で私の寝室に?」
「大国の王達には全員挨拶をしている 礼儀としてな」
「相変わらず人が良いな……」
二人の会話を黙々と聞いている趙炎は警備そっちのけだった
そんな彼に人影が近付いて来る
「大国の内の二大国の王の対談 何か為になるヒントが得られれば……」
「何しているんですか? 趙炎様」
茂みに隠れてバレないと思っていたのか
艶の世話係の担当をしていた筈のヒャルがそこに現れた
「うわっ!!!」
「……何か聞いたか?」
「……いいえ 長旅で疲れたのでは?」
「シー-…… バレたら艶陛下に怒られますよ?」
「すみません…… ヒャルさん」
謝る趙炎 にではなくヒャルは窓の方を見上げていて
「私もお供します こういうの楽しいですよね」
「え……? はい」
「それにしても艶陛下はあなたのことばかり心配していましたね お父さんみたい……」
「誰にでも目を向ける優しい方なのですよ陛下は」
「あっ! 話を再開させますよ!」
「え?! あっはい!」
「大声禁物です!」
「すみません……」
意外に自由な一面を見せるヒャルに趙炎は少なからず心を開かせ
当初の目的を少し遠ざけて盗み聞きを楽しんでいた
「してエリツィン国王よ 質問をしてもよろしいですか?」
「何度も言いますが私の国では大統領なんだ 合わせてくれないと困るんだがなぁ」
「一応大国という名義がありますので世界共通を目的に何卒」
「ン~~…… で一応聞いてやるが?」
「ガルバークのことです」
「……グランヴァシエルよ それはもう話題が冷めているぞ」
棚のグラスを二本取り テーブルに置かれているワインを注いで片方をグランに渡すエリツィン
「えぇエリツィン王 六年前の一件は確かに四年前の会議で処理しました
闘技場に現れた神話上に登場する〝ハイゴレ〟の話が出た時は度肝を抜かれましたぞ」
「その存在を我々は安易にしてきた訳ではない
知っている者は暗黙に……
ユレイシア海全体から見ても〝守護神〟の存在すら信じている者も少ないからな」
「宗教及び信者共は点在しているがな」
「創設した集団が好き勝手やっているだけだろう 噂だが今の時代儲かると聞いている
宗教心なんてあってないようなもんだ 〝ルシファード教会〟がそうだったようにな」
「〝神を崇め奴隷を支配する〟 ……真似事か」
会話が無くなれば静かな空間に重みを感じる それは外にいる二人にも伝わった
ふとヒャルが口を開き 趙炎に質問する
「趙炎様も守護神を宿していると聞きましたがどちらで?」
「私は城で陛下から直接儀式によって頂きました 極秘事項と固く教えられて」
「ふーん…… 今はそういうのなんだ」
「今は?」
「人に宿る守護神と島々にいる島神は同一なのはご存じですね?
相手には人間の中にある器が見えるのです 宿るのならばその器の大きさで決めると聞きました
そして憑依される人間は
精神だけが行ける【アストラル世界】に似た特別な空間に招かれ契約を交わすと」
「アストラル世界?」
「訊いた話なので詳しくは……」
ヒャルは顎に手を当てて首を傾げている
そうこうする間にも奥の二人は話を再開させていた




