ライゴク王国領界3 情報の対称者
「それで? ガルバークが何だと?」
渋々耳を貸すエリツィンにグランは座りながら改まって口を開く
「今回の会議での主な話題はファミリアフォードットについてなのはもう言わずともですな?」
「あぁ…… 〝陰に隠れた四王家〟だっけか?」
「話を逸らさないで頂きたい それはまだ……
その件で最終的に決めなければならない事は〝新しい大国〟を決めることですよね?」
「さすがにボケたか? スレイシャガルの八代目国王よ 息子に継がせたらどうだ?」
「息子はおらぬ まだまだ現役のつもりなのだがな………」
「なら適当な話をするものではないですな 今すぐここから出てって貰いたい
せっかくフリーの土地をまた誰かの支配地にするなどたまったものじゃない」
「えぇ…… ワシも植民地の取り合いになると踏んでいます ですので提案を聞き入れて欲しい」
「提案?」
「ワシは例の領界 今の無法地帯を仮にニューファミリアと呼んでますが
あの新大国に【ガルバーク帝国】を強く推したいと思っております」
「何だと?」
グランの唐突の提案にエリツィン含め 外にいる二人も驚いていた
「ガルバークの王は知っているのか?」
「まだです」
「信用出来んな…… なにせ十六年前には」
「確かにワシは貴方の先代の王の許可を得ずにガルバーク帝国と会合を行いました
それが原因で今 信頼を失っているのな またこの場で謝罪させて貰う」
グランは重い体をなんとか起き上がらせ その場に立って頭を下げた
ーー大国の王が…… あんなに簡単に
「解らないな…… 解らないことだらけだグラン王」
その詫びの真意を掴めないエリツィンはそれでも平静を保とうとするが
「二つ質問する 何故そこまでガルバークを信用できる お前の国では無いのだぞ?」
「えぇ…… まずその質問に対し 自分の中で賛成と反対の意見が飛び交っています
ワシが見込んだ王は今の王ではありません 先代の王です
故に今のガルバークが相応しいのかと言えば揺れている
次に先ほどエリツィン王が口に出した〝陰に隠れた四王家〟が関わっています」
「…………」
「ここに来て黙秘は汚いですよ」
「その意味を知りたいのか? それとも知った上での推薦か?」
「前者です…… ですが【ネイティビアス帝国】と関係はありますよね?」
「…………」
「それでは後に出てきた話は抜きで結構です
ただ純粋に〝帝国〟の名に恥じぬ築き方をしてきたとワシは見ておる」
「……ガルバークの件は了解した 時間も時間だ 私はそろそろ睡眠を取ろうと思う」
「二つ目の質問はよろしいので?」
歳の所為か政治に余裕を見せるグランに
エリツィンは眠気を盾に一風変わった質問を投げ掛ける
「先の本題とはズレる問いだが……
貴方方〝スレイシャガル〟は…… 〝木の大ゾリ〟とは……」
「おっとイカンイカン! ワシも歳故に眠くなってしもうたわ! ではマスク-ヴァの王よ
ワシはこの辺で失礼させて貰う 明日の会議はよろしく頼むでの」
ーーこの……!!
態とにも近いグランの行動に睡眠で怒りを覚える気にもなれず そのまま見送ろうしたとき
「あぁそうだ 一つ忘れていた」
「……何ですか?」
「新天地【ネイティビアス大陸】について今の貴方の意見を……」
「先の話をした後でそれを聞きますか…… 相変わらず…… 〝黙秘〟で」
「そうか…… 邪魔したの!」
その後のグランの追求が襲うことは無く
何に安心を覚えたか分からないエリツィン自身は欠伸をしながら寝室へと姿を消した
窓の外にいる二人もまた緊張が解けて窓の下の塀を背に座り直す
「なんだかすごく疲れましたね」
「大丈夫なんですかヒャルさん?
バロシアンはマスク-ヴァの傘下国なんですよね?」
「えぇ…… バレなければ……
それにしてもネイティビアスの名が出てくるとは意外でしたね」
「ネイティビアスってこのユレイシア海の遙か西にある大陸のことですよね? 帝国とは……」
「えぇ…… それは多分明日に解ると思いますよ」
ヒャルは腕を伸ばしながら陽気に立ち上がり 趙炎に手を差し伸べる
手を掴む彼を立ち上がらせてからヒャルはそのまま帰ろうとしていた
「では私もそろそろ持ち場に戻りますのでこの事は二人だけの秘密ですよ」
「わかっています 逆にすみませんでした」
「いえいえ では失礼します」
両手を腹部に置き 律儀に挨拶する彼女を見送った趙炎もまた
何事も無かったかのように警護に戻った
入り口に入ろうとするヒャルはふと横目で趙炎を見ている
ーーフフ…… 好奇心旺盛なのは親子ですね 艶陛下
「ネイティビアスかぁ…… 〝元七大国の一つだった場所〟」
ヒャルと別れた趙炎は痺れを切らしていた馬留に怒鳴られながら管轄を巡回していた
「随分遅かったじゃねぇか 他国の連中に面白い奴でもいたのか?」
「えぇまぁ…… ライゴクの兵士は新鮮でしたね」
明日が近付く
今日の覗きで会議という行事を一層身近に感じた彼の心情は
より緊迫感を増すと同時にどこか胸を躍らせていた




