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趙炎の自宅3 ヴォルフガング・ファウストス


「今から約五百年前に遡る

とある地に栄える一つの国にて二人の夫婦が仲良く住んでいた

その夫婦は普通の暮らしを送っていて 平和の基準を表したような奴らだったそうだ」


「夫婦?」


「あぁ…… だがそんな穏やかな生活は長く続かず ある日突然にそれは起こったのさ」



「あっ! それ知ってる〝メフィアファウストの伝説〟でしょ?」



趙炎と一緒に聞いている孤橋が手を挙げて言った


「さすがに勉強してるな姫さん

夫の名はヴォルフガング・ファウストス 妻の名はリリス・ニスライバ

籍も入れず 町の人間ともあまり接点を取らない彼等を見て町の人間達は不審がっていたそうだ

そしてある日 国城内の宝物庫から家宝という家宝が一夜にして全て無くなるという事件が起き

国王含め悪魔の仕業だと騒ぎ出したんだ

そんな中で誰かがあの夫婦を疑い出し 国に訴えてあろう事かその夫婦の住む家に火を付けたんだ」


「……酷い話ですね それでその夫婦は?」



「そこから事が国にとって不合理に進み始めてしまったの……

決して起こる事の無かった厄災へとね」



けして笑い話にしてはいけないのか 一言一言口に出す孤橋の言葉からは真剣な重みが伝わる


「旦那のファウストスが今で言う魔約(まやく)を使ったんだ」


「魔約?!」


「就寝していた時間帯だったから事に気付くのが遅かったんだろうな……

周りは既に火の海 逃げ場の無い中で妻だけも救おうという感情

そして無実の意識から生まれ 国の連中に対して憎悪が増した彼は無意識に使ったんだろぉよ

結果家を突き破って無事脱出

奥さんのリリスを安全なところへ寝かすと ファウストスは王と兵士に向けて走り出した

自分達を殺そうとした国に対して魔約を使ってしまったらもう感情は一点に集中だ

ファウストスは魔約の力で命尽きるまで暴れたらしい」


「……で どうなったんですか?」


葉巻を吸い終わった妖雷は次の葉巻を取り出し 再び吸い始める


「その場にいた半数の兵士を殺して力尽きたのさ……

リリスと共に国の中央に貼り付けにされて火炙りにされた

酷なのは奥さんの方だ その時はまだ意識があったんだからな

その悲鳴が鳴り止む頃に国民の罵声も静まり出していた…… その時だった」


「……?!」


「既に死んだと思われるファウストスの身体から再び黒い魔蛍が吹き出したんだ

蘇った奴は目の前にいる人間共に対して言った

〝 殺してやる…… 妻を返せ…… 殺してやる…… 妻を返せ…… 〟と繰り返してな

そしてその国はたった数時間で滅んだのさ」


一瞬にして国が滅んだことに趙炎と そして一緒に黙って聞いていたミョウコとヤコも一緒に驚く


「一体どうやって?」


「普通魔約ってのは人間の潜在能力に見合って引き出される それ以上の力を求めるならば……

俺や趙炎が持つ守護神や神獣などに含む魔蛍を吸収することで神通力を得る

ファウストスの場合の吸収は〝ハイゴレが食す様〟の例えだから

この時点で使用者は身も心もハイゴレに奪われてしまう

つまり死…… これは趙炎も知ってるな?」


「はい…… 実際にそんな輩を幾度も見てきました」


「しかしそん時のファウストスの中に宿っていたのはハイゴレじゃぁなかった……

いや…… 正確に言えば途中からハイゴレでは無い別の存在がハイゴレを追い出して入って来たんだ

その存在は闇纏守護神(ハイゴレ)達の主とも言われていたり

生物の核心的立ち位置と書かれている書物もある

そしてその存在がどういうわけかファウストスに不老不死の永寿を与えたんだ

彼の望みはただ一つ 大切な妻と平和に暮らせる場所を探す事

永寿と〝妻の蘇生〟を得たファウストスは国を移っては

その恵まれない環境に不満と憤度で内心は満ちていき 次々と滅ぼしていった

通った国は破滅に陥るなども伝説上で有名でな……

最後に行き着いた場所は食べ物に困らない大自然に囲まれた二人曰く楽園だったそうだ

そして二人の間に子が誕生し 家族仲良くそこで暮らしましたとさ」


「……終わりですか?」


最初の話の流れから半ば関係の無い話だったのではないかと思う趙炎だったが

隣に座る孤橋は静かに首を横に振る


「物語ではね…… でも続きがあるのよ」


「何だよ続きって?」


趙炎が話を聞こうと妖雷の方を再度振り向くが 妖雷はここで話を中断して玄関へと向かった


「続きは…… 今の話と賢聖絶については火女桜本部でだ そっちの方がお前も解りやすいだろ」


「え?」


「邪魔したな…… じゃぁ手を組む件よろしくな相棒」


「は…… はぁ……」


ドアから妖雷が出て行くと 趙炎は疲労感からかその場に無抵抗に崩れた


「なんだったんだ……」


「お疲れ様」


後ろから優しく自分の羽織っていた毛布を趙炎に被せた孤橋は帰り支度を行っていた


「お前も帰るのか?」


「うん…… 日も出ちゃったしそろそろ巻も限界だろうしさ……」


「そうか……」


大して何も持ってきていなかった孤橋の支度は早く終わり ミョウコとヤコを呼ぶ


「あっ! そうだ趙炎…… 私もう来れないから……」


「え?!」


そう言って三人は家の裏に向かい そこでミョウコが懐から妖しく光る琥珀を取り出す

趙炎は慌てて三人のもとへと駆け寄ると


「待てよ! もう来れないってなんだよ?」


「別に趙炎にとって願ったり叶ったりでしょ? たまに手紙を送るからちゃんと返事書いてよね」


地面に描かれる魔法陣とミョウコの手に持つ琥珀が呼応して光り出し


「機会があればまた会いましょ趙炎!」


少し悲しそうな表情をする孤橋の顔が印象深く自分に襲い掛かり 三人はその場から姿を消した


「……魔蛍琥珀(ラルエレクト)か また盗んで来たのか」


何食わぬ顔で自宅へと戻るが

火女桜に行く前に少しでも仮眠を取ろうと横になって目を閉じようとする

だが彼女の見せた最後の表情が気になって眠れなかった


ーーどうせまた…… いつものように……


浅く考えてしまう趙炎は 悶々としながらも気が付けば意識を失う



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