趙炎の自宅2 異色の結託
食器を片付ける孤橋とミョウコとヤコとは別に
居間でお茶を啜る妖雷と趙炎は 彼がここに来た目的である本題へと移っていた
「さて…… 何から話すべきか…… いや……」
「??」
妖雷は趙炎の顔を見つめながら沈黙する
その溜めた時間に見合わず妖雷の口から出た言葉は一瞬だった
「趙炎 俺と組まないか?」
「え?」
趙炎の表情は仕事モードへと切り替わる
「どういうことですか?」
「国を裏切れと言ってるんじゃねぇ あくまでこの先での極秘の繋がりって奴さ」
「…………」
「首都でお前が何を聞いてきたか大体は分かっている
俺達火女桜があの日の国と手ぇ組んでるってとこだろ?」
「何故それを?」
「どうする? 手を組めば今すぐそれについての事も聞けるぞ?」
「…………」
「あの~~~?」
趙炎と妖雷の間に割って入ったのは孤橋だった
「私が聞いててもよろしいのでしょうか?」
漢の国の上の立ち位置にいる存在
つまり会話の内容的に非常にマズい孤橋の素朴な質問に妖雷は難なく答える
「趙炎に信頼して貰う証拠にもなる 別に構まねぇぜ?」
「証拠だと?」
「これは手を組んだ後に話すべき事なんだが 今ウチで揉め事が起こっていてなぁ
内部抗争なんて結論が出る程までに危機的状況なんだ」
「何が起こってるんですか?」
「おっとこれ以上は弱みを出さねぇ…… どうするんだ?! 手を組むのか組まねぇのか?!」
趙炎は短時間で必死に考え始める
今の話の流れからして手を組む方向はまたとない手段だ
ーーしかしこの話題を持ち込んだ瞬間に手を組まないかという妖雷の唐突な申し出
接点があるからと言って相手は反社の人間 暴力組織の上層部の人間だ
都合の良い話を並べて いつの間にか利用されぬよう関尾さんからも釘を刺されて来た
どんな話を持ち掛けられても即断る判断は出来る
しかしそれでは多くの疑問が残ったまま 最悪陛下直々の任を遂行することも叶わない
孤橋がいるから妖雷を信用出来るとはどういうことか?
孤橋を明確な証人台に立たせるということは本当に害が無いということを表しているのだろうか?
それを解消したとして次の疑問 火女桜の内部抗争
これは漢の国全体に危害が及ぶものなのか? 手を組まなければこの先は裏の事情
詳しく聞ける機会はおそらく訪れないだろう
これらから優先すべき手段は一つに限られる
分裂した片方が日の国の勢力に取り込もうとしているのが前提だとすれば
本格的な血を流す争いがこの漢の国内で行われる
さらにこの抗争に乗じて司馬軌の命を狙って来るのだとしたら……
そうなれば考えは振り出しに戻る 結局この領界内にも甚大な被害が出るのは目に見えている
そもそも内部抗争が起きた原因が分からない それでもって妖雷がここに来た理由も分からず仕舞い
……分からないことだらけだ 結局今考えたことも仮設に過ぎない
火女桜は大国には直接的に影響を出さない 完璧に裏仕事は裏世界で処理する組織だ
迷惑をこっちにまで拡げる事は…… 無い…… 筈…… なのだが……
「どうした? さっさと答えを出せ!!」
「……手を組みましょう」
それが趙炎の答えだった
組まない方向へ進めば進むほど自分では何も出来なくなる 手遅れになる前に何の行動も起こせない
何も知らなければ皇帝司馬艶にも報告可能な内容は掴めない
もし動いてくれたとしても情報量が薄ければ大切な者達を失わない確証が無い
結局は消極的に決めてしまったのだった
「よし!」
妖雷は軽く手を差し伸べる その意味はよく分かる
「よろしくお願いします」
趙炎は何も考えずに握手を交わした
それを見ていた他の三人もどうしたらいいか分からない顔で見守っている
「それじゃあ…… 何から話そうか?」
「あの…… まずずっと疑問に思ってる事が……
何で孤橋がいれば俺が妖雷さんを信用すると?」
「簡単だ お前も無意識に感じてると思うが近くに親しい者が数人いれば心強いだろ?
安心材料をそばに置いてれば警戒も解かれる そんだけであって別に騙そうとはしてねぇ」
「それだけ?」
「案の定利用されるとか思ってたんだろ?」
「っ?!」
「安心しろ 利用するなら普通もっと上層の奴等……
お前よりあの劉徳とかいう官僚辺りに話を持ちかけるからな」
「そう…… ですか……」
「他は無いか?」
「内部抗争は…… 何で起きたんですか?」
「内輪揉めと日の国との関係
そして〝大国の奴等すらも知らない秘密〟を今からお前にまとめて教えてやる」
「漢の国でさえ知らない秘密……」
妖雷は立ち上がり 懐から葉巻が詰まった入れ物を取り出すとすぐ隣の木製のベランダへと出る
「さてと…… どっから話すか……」
葉巻を一本咥えて火を付ける
口から吐く灰色の煙が空に昇っていく様を観ながら妖雷は語り始めた
「お前…… 〝 賢聖絶 〟って知ってるか?」




