海原への旅立ち4 You're found certainly
周りに島一つない海上
そこに一隻の船が浮かぶ 船内にいる船員達はただ何もせず誰かを待っている
「助けにいかないのか?」
「そう簡単に言うな ヴァジュラから一気に飛んで道標の島すら無い状況だ」
「あの不思議な琥珀使えば?」
「そう簡単に手に入れられる代物じゃないの」
カーソンを看病をするアタランテは ヴェルの質問を容赦なく打ち返す
「カーソン…… アンタさえ元気になれば……」
三人がただ待つしかない状況で 船内から酒を飲みながらホットがやって来て
「良い酒はあったのかい?」
「あ~~!! サクバサの野郎 良いもん置いていきやがった」
ホットは片手に持つ酒瓶をぶらんぶらんとヴェル達に見せつける
「〝ドック・バン〟 最高級のビールじゃねぇか……」
「カーソン!!」
カーソンは起き上がり 寄越せとばかりに無言でホットに手の平を見せた
「それよりもニクロが!」
「心配いらねぇよ アイツは俺等が認めた頭だ」
そういってる間にも上空より得体の知れない黒い影が出現する
「……何あれ?」
その影は次第に巨大になり 船を覆う影と共にその生物は降りて来た
「みんな!!」
「遅かったじゃねぇかニクロ」
ニクロは怪鳥から船に降りると さっそくアタランテに力強いハグを強いられた
「ちょっ…… 苦しい!!」
「まったく…… ヒヤヒヤさせるんだからぁ!!」
アタランテはうる目になりながらも高笑いする
「おい…… お前は誰だ?」
怪鳥を海に放すシフォンにホットは警戒する
「得体の知れねぇ奴だな」
「俺はシフォン 今日からこの船で厄介になる」
「はぁ!!? おいニクロどういうことだ?」
「俺もよく分からない」
ホットの不安も無視するかのようにシフォンは船の周りを見て回る
そこへヴェルに肩を貸して貰って歩くカーソンが出張った
「俺達はある程度の素性は把握し合っている だからお前の素性も知りたい」
「…………」
シフォンはその場に座るなり溜息を吐いて
「俺は元々革命軍にいた」
「……!!? カーソン!! やっぱこいつ危険だ!!」
「待てホット! 元々とはどういうことだ?」
「今は違う…… そういうことだ」
カーソンは少し悩んだが 顔を上げてニクロの方を見た
「ニクロはどう思うんだ?」
「俺は…… 良いしか言えない 助けて貰ったし」
「そうか……」
「仲間とは思わなくていい 手を組むって事で申し出てる」
今のシフォンの言葉にホットは銃を取り出す
「それはいつ裏切っても文句は言うな…… そういうことか?」
「…………」
二人が邪険に睨み合う中 ニクロは口を開く
「いいよ 仲間にしよう」
ニクロの発言に二人はそっぽを向く
背後からはアタランテが先ほどのドック・バンを注いだジョッキを持ってやって来た
「な? こいつにも飲ませるのかよ?」
「ソレイユブルーはもう無いんだ 仕方ない」
「新人に飲ませるほど安い酒じゃねぇ!!」
腹を立てるホットをニクロとカーソンが必死に宥めてようやく乾杯に入る
「ではニクロ船長 新しい船に名前を付けてくれ」
彼はプレッシャーを掛けられながらも 数分後に口を開く
二クロ「船の名はロブ・ミラージュ号」
カーソン「随分と…… お前にしちゃぁマシなのが出てきたな」
二クロ「海を渡るライオン…… に見えるかな~って感じで付けた」
ホット「へぇ~~ 良い意味じゃねぇか!」
アタランテ「うん…… まぁまぁかっこいい!」
船の名前も決まり 全員がジョッキを手に掲げる
二クロ「今日から船長がんばります!!」
カーソン「俺は航海士担当だな」
アタランテ「アタシはコック!! 残したらぶっ殺すから…… あと手伝えよ」
ホット「俺は狙撃手ってとこかね」
ヴェル「俺は戦闘員ってとこでいい」
シフォン「俺もそれでいい」
「それじゃあ結成〝ニクロ海賊団〟!!」
「「「「「 カンパーーイ!!!! 」」」」」
一気に飲み干し 全然足りないのかホットは船内の酒を掻き集め
アタランテは軽い料理を振舞う
楽しく飲んでいる中でニクロは海の見える船首でずっと前を見ていた
「もう酔ったのかニクロ?」
「あ…… いえ……」
呼び掛けに来てくれたのはカーソンだった
「船長だからってあまり気を張るなよ」
「えぇ…… 大丈夫です」
「お前は知らない事だらけなんだから これから一つずつ覚えて行けば良いんだ」
そう言ってカーソンが皆のところへ戻ろうとした時
「本当に良かったんですか?」
「何をだ?」
「海賊になることですよ…… 一応全ての国を敵に回すんですよ?」
「別に冒険家や探検家だからって安全とは言えねぇぜ?
今回の試験みたいにいつ命を落としてもおかしくない
欲に塗れた国の差し金共が俺等から宝を強奪することだってあるんだ」
「……へぇ~~」
「別にお前は理解してるから説教はしねぇがな?
故郷の地から足を離した時点で危険がどうこうだなんて言ってる暇はねぇぜ
話は戻るが俺もアタランテも 勿論ホットやヴェルも後悔はしていない
ちゃんと話し合って俺達四人の考えが一致したんだ お前に命を預けても良いってな」
「……!! 俺に命を預ける!?」
「あぁ! 自分に自信が無いって言うなら
これから増える仲間に裏切られないように自信を付けとくんだな」
カーソンは去り際に手を振って 騒ぐホット達の輪に戻って行った
ーー自信を持て…… か……
ニクロは海を見つめながら両手で頬を叩く
目付きが変わった彼は笑みを浮かべて真っ直ぐ目の前の景色を眺めた
ーー奴隷から解放されて一年 ようやく俺も海賊になれたぞアイディー
まだまだ未熟で船長って柄でも無いけど 俺の後ろには頼もしい仲間がいる
今まで気付かなかったよこんな気持ち
俺の今までの旅で何人の友が死んだだろう でも俺はもう弱音を吐かない
死んでいった奴等のおかげで成長出来た 謝罪よりも礼を言おう
ホビー・爺ぃ・ライト・ドルさん 全員俺の生きた証だ
忘れることはない そして……
ニクロは思いっ切り息を吸い込み そしてどこまでも広がる海に叫んだ
「待ってろよアイディー!!
立派な海賊になって必ずお前を捜し出すからな!!」
決意を改め 気分が昂ったニクロは慣れない舵を切り
船体が大きく揺れて盛り上がってたカーソンらは大きく転倒する
「「「「「 何やってんだニクロ!!!! 」」」」」
「アハハ…… ごめん……」
賑やかな船ロブ・ミラージュ号は進む 乗り組む一団の名は〝ニクロ海賊団〟
次の目的地はまだ決まってない だが
彼らならどこへ行こうとも乗り越えられるだろう
何故なら共に死闘を乗り越えた仲間なのだから
そして 世界は知らない
後に思い知らされるだろう真の名ナット・ウォードという名が世界に轟き
これから巻き起こる〝世界規模〟の一大事件の数々に関わざるを得ない
重要危険人物になることを
今はまだ始まり
ニクロにとって新たな旅が始まるのだった




