海原への旅立ち1 旅立ちの日
バラの高台
オグルの家の部屋にて荷物をまとめるニクロがいた
「行くのか?」
「あぁ世話になった」
「淋しくなるな」
「厄介者が一人いなくなるだけさ」
ニクロは荷物を持つと 入り口で待ってるオグルに深く頭を下げる
「サクバサが港で待ってるからもう行くよ」
「まさか船まで用意してくれるとはなぁ 謎の多い奴だ
海賊だろうが何だろうが いつでもこの国に戻って来いよ」
「ありがとう…… 師匠」
ニクロはオグルに見送られながら港町に向かった
港町【カドル】
サクバサが待つ船着き場まで走るニクロは途中で人にぶつかる
「あっすいません!」
「こっちも…… 周り見て無くてごめんなさい」
ニクロが起き上がろうとすると当たった女性から手を差し伸べられた
「えと…… ありがとうございます」
「怪我は無い?」
「大丈夫です それじゃ人が待っているので!」
急いでいるニクロは浅くお辞儀して船着き場に向かう
キスティアは笑顔で見ていると二人の男が近付いて来て
「ただいまキスティアさん!」
「おかえりなさい二人共……」
ケルンとルランだった
「あの子供……」
ニクロを見るルランはキスティアに額を叩かれる
「痛っ!!」
「今回は何事も無く帰って来れたでしょうね?!」
「……大丈夫だよ」
「今回に限って体力切れは無かったもんな!」
笑うケルンとキスティアに ルランは後頭部を撫でる
「そういえばキスティア聞いたぞぉ?! 俺も見たかったな~~」
「えっ…… 何を?」
「オーガのイベントだよ!
すごかったんだってな? あの…… 名前何だっけな……」
名前を思い出せずに悶えるケルンにキスティアは浮かない顔で答える
「ドル……」
「そうそうドル・マーフィー!!
命を落としてまでどこぞの誰かに金を渡すつもりだったのかなぁあの偽善者」
「やめて!!」
唐突なキスティアの大声にケルンは驚く
「……どうしたんだ? 四年前のストーカーだぜアイツ?」
「分からない…… 変よね あの選手が死んだ事を知った時に不思議と涙が流れたの」
「……キスティアは優しいんだよ」
優しい言葉を掛けて上げるルランにキスティアは笑顔で返す
「ありがとうルラン…… さ! ギルドに帰りましょう!」
三人がオーガリングに向けて帰ろうとした
その時ルランだけは足を止めて空を見上げる
ーーごめんよ…… 羨ましかったんだ
俺を少しでも知る人間がホントにもう……
義手の王子様達しかいなくなっちゃった
「おーいルラン!! 置いてくぞ?!」
「いや…… 何でもないよ」
ルランは笑みを浮かべて ケルン達のもとへと走って行く
「サクバサ!!」
船の前で待つサクバサにニクロは到着した
「ちょっと!! 今名前出されると迷惑なんだけど……」
小声でニクロに言い聞かせるサクバサに彼は呆然として耳だけ傾ける
「しかしでけぇ船だなぁ」
「小さい方よ 私そこまでお人好しじゃないから…… 奴隷は全員既に船に積んであるわ」
「……相変わらず物みてぇに言うんだな」
「フン…… もう私の物じゃないし どうせ故郷に帰すんでしょ?」
「あぁ!! ルース族の住処だった島に送って行くよ」
「……ありがと」
突如呟くサクバサの言葉にニクロは混乱した
「さぁさっさと行きなさい!! もう会うこともないでしょうしね!!」
「お前はこれからどうするんだ?」
「しばらく自由にするわ 金もあるしね」
そう言ってサクバサは別れを惜しむ感情も抱かせず どこかへと行ってしまった
ニクロは荷物を積む為に船に乗る
甲板には既に奴隷達が乗っていてよく見るとルース族以外の奴隷も
「安心してくれ! お前達は俺が必ず故郷に帰してやるから!」
奴隷達は黙っていた ニクロは当然の事だと理解し
見納めになる国を一望する
ーーここから始まるのか……
街並みを見ているニクロがふと下を向けば見知った老人が
「おっきぃ船じゃのぉ」
「アンタは……」
ニクロは船を降りて老人に挨拶する
近くで見て最初に市場で話し掛けられた人だと分かった
「どうしたんだよ爺さん……」
「これをな!」
そう言ってあの無黒の地図をニクロに渡した
「爺さん…… これ多分偽物だよ」
「そうなのか?」
ニクロと老人は地図を見返すが
どこからどう見てもただの一つの島の地図だった
「おかしいの…… まぁ無黒って意味もワシにはさっぱりだからの」
「…………」
「おっとそうじゃ肝心な事を言い忘れておった」
「え?」
「これを置いて行った人物じゃよ」
「体中傷だらけの旅人だっけか?」
「そうじゃ!! そいつがどこから来てどこに向かうか気になるから聞いたんじゃ」
「んで?」
「黒い肌の友人を捜してると言ったんじゃよ」
「!?」
老人の言葉にニクロは初めて興味を持つ
「それって…… どんな奴だったんだ?」
「素性など言わん 当たり前じゃ
だから足元を見たんじゃ すると枷を付けられていた跡があっての……」
その瞬間 ニクロの脳裏にある一人の人物の顔が思い浮かんだ
「どうした?」
「……ありがとう爺さん 」
不意に出そうになった涙を拭い 老人に別れを告げて再度船に乗ろうとする
「……まさかな」
ニクロは甲板に繋がる綱を伝いながらブツブツと呟いていた
甲板に足を着けると 船内に見覚えの無い荷物が置かれている
「ん!!?」
ニクロはすぐに警戒したその時
「だぁれだ??」
「……アタランテさん」
ニクロの両目を手で覆ったのはアタランテだった
「どうしてここに?」
「アタシはついでだから彼に聞いて」
そう言ってニクロは振り向くと扉から出て来るカーソン
そしてヴェル・ホット・ダルタがいた
「良い船だな マストが三本もある……」
「皆…… 見送りに来てくれたのか?」
「ハズレ」
カーソンはニクロにとって見覚えのある酒と小樽ジョッキを用意して彼の前に座った
「それって〝ソレイユブルー〟」
「知ってるなら話は早い…… ほれ!!」
酒を注がれたジョッキをニクロとアタランテとホットとヴェルの四人に渡される
「秘宝探検家 レイフ・カーソン
未開地理の開拓旅行者 ケニー・アタランテ
元人間国宝 アフランコフ・M・ホット
氷河の民 ヴェル・メゾーラ
以上四名 船長ニクロの一味として乗船させて頂く!!」
「え!!?」




