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創設の放旅者 --ラウールヴァンデラード--  作者: 滝翔
2章 鎖が解くとき
114/205

友が眠る場所9 届かない太陽


ドルは立ち上がり 観客から声援が湧く


「……ハハ!! まだ立つか?」


「ハァ…… ハァ……」


もはや話す余裕も無く ドルはただ構える


「アイツの覚悟だ 見守ってやろう」


ニクロ達は見守ることしか出来ない

それとは裏腹にオーガの笑い声が辺りに響き渡る


「お前も相当きているようだが こっちもそろそろ本気で行かねーとな!!」


フィールド内に風が吹き荒れる オーガの周りに赤い魔蛍が集まって来たのだ


紅蓮の纏蛍レッドローブ


本来の纏蛍が白色のオーラ状ならオーガの纏蛍は真紅に染まっていた

これに観客席にいるオグルも驚く


「何だあれは……」


「ヌババババ!! あれは一種の魔蛍に認められた者のみに与えられる業です」


「ならばオーガは 赤の魔蛍に気に入られたと?」


「魔蛍にも意思はあるかは分からないが 好意というものは持っているのかもしれませんな」


「カッカッカ!! まさに火の如し!!」


赤く燃えるようなオーラを身に纏ったオーガはより獰猛性を増した


「っ……」


ドルは一瞬怯みはするも 怖じけず先手に出る


「ぅぉぉぉぉおおおおお!!!!」


ドルの一撃がオーガを襲うが 彼は笑いながら腕で防ぎ フェイントで顔面を狙う

しかしドルもまた防ぎ顎を狙い蹴り上げた


「こんのぉぉぉぉ 顔ばかり狙いやがって!!」


オーガは蹴りを躱して宙に浮くドルに生まれる隙を見逃さない

腕をいっぱいに後ろに引いて彼を吹き飛ばす

しかしドルはさらにその上に飛び上がった


「なっ…… 俺の腕を使って上に移動したのか?」


ドルは身体の回転を利用した拳でオーガの顔を床に叩き落とした


「がっ…… く…… クソがぁぁぁ!!」


血が出た鼻を親指で押さえて吹き飛ばし オーガは体勢を立て直す


「押している!!」


「あぁ…… だがドルも長く持たない…… 決着を急がなければ……」


ドルが走り出そうとした時少し蹌踉めく そこに隙を作ってしまった


「残念だったな……」


すぐ目の前まで来ていたオーガの拳がドルの頬に直撃した


「勝負あったわね……」


サクバサがその様子から言葉を溢す

その通りドルはその場から動くことはなかった

ニクロ達も必死に叫ぶが ドルの頂全速はそれほど人体に負荷を与える魔法

オーガも手応えを感じて背を向ける


これ以上観る必要も無いと察したサクバサが席を立って帰ろうとしたその時だった


「……マ……ヤク……」


フィールドに吹き荒れる黒い渦 それを見たオーガは目を見開いて驚いている


ーー何故そこまで?



「自然伝動限速突破 天道速オーバートップギア!!!!」



オーガの視界から一瞬で姿を消したドルは背後を取り


「!?」


彼は即座に反応してドルに攻撃を仕掛けるがドルは消えた

オーガは焦りを覚え周囲を注意深く見渡すと 目の前にドルが現れ


「なん…… だと……」


ドルの拳はオーガにめり込む

オーガは踏ん張って見せたが大ダメージを食らう


「……すげぇ」


ニクロ含め 観客全体がドルに注目する


「ハァ…… あぁぁ……」


既に意識があるのかどうか分からないドルは止まらない

自分に付いて行けないオーガに次々と連撃を与える

しかしオーガも負けてばかりでは無い

幾多の死闘を乗り越えて身に付けた戦闘に於ける対応力

そして答えを瞬時に生み出す格闘センスにより ドルの尋常じゃない動きを早くも対処する


「うぉぉぉぉぁああああああああ!!!!」


ドルがオーガの頬を捉え オーガの顔に一撃が入る


「決まった!!」


観客の誰かがそう叫んだその時だ


「ふんっ!! 甘いな……」


ドルの拳 いや正確にはオーガの頬の部分が強く光る

守核によって部分的に集中して守られていた


「!?」


「攻撃力だけに拘って大事な冷静さを捨てた…… そこも魔約の弱点よ」


オグルの容赦の無い言葉が 勝負の核心を突く


「お返しだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


オーガの反撃で全てが決まる 誰もがそう悟った


ーーキスティア


ドルの白目は閉じられ その場に倒れそうになった

その行動が運良くオーガの攻撃の軌道からずれ 尚且つ相手に油断を与える


ーーケルン


足を地に着けて踏ん張り直し 手に全ての魔力を込めた


「マ…… マケ…… ネェェェ!!」


腕を後ろに引き 身体を前に屈め 一気にオーガの腹に拳を振り上げて上方に押し上げる


「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!」


オーガの身体は闘技場の全フロアの特殊な鉄の壁を次々と破壊し

その勢いは止まらず地上の建物を突き抜けた


歓喜が上がっていたAAAフロアは静けさに襲われる

そんなフロアに太陽の光が差し込む ドルを中心に

彼は見えてるのか分からないその太陽の方をジッと見ていた


〝 そろそろ作りたいんだけど? 〟


〝 え? 急に何を…… 〟


〝 急じゃないわよ 私達もう何年一緒に暮らしてるのよ 〟


〝 ご…… めん…… 〟


外で寝ていたドルはわけ分からず謝った

そこにキスティアはドルの顔に自分の顔を近づけて


〝 !? 〟


〝 赤ちゃんに決まってるでしょ! 〟


〝 えぇ!? う…… 〟


〝 何よ? 私の子じゃ不満? 〟


〝 いや…… 人を殴る親父って…… 良いのかな? 〟


〝 ハァ…… 何を今さら 無駄に真面目なんだから 〟


職場と家庭で違い過ぎる気弱なドルに キスティアは呆れながら背を向けた


〝 ……ごめん 〟


ドルが再度謝ると キスティアは振り返って笑顔を見せる


〝 私に家族はいないから 早く二人目の家族を迎えたいの 〟


〝 二人目? 〟


〝 そうよ! あなたと…… そしてあなたと私の子 三人一緒の幸せが私の理想 〟


〝 ………… 〟


〝 想像しただけで幸せ!! あなたもそう思うでしょ?! 〟


〝 ……あぁ お前に嫌われない内に考えておく 〟



ーーそう言って俺は 同じ太陽を見ていた なぁキスティア



もはや意識も無いドルの白い目からは涙が流れていた



ーー叶えられるならもう一度…… あの頃に…… 戻りてぇなあ



ドルの表情は穏やかになっていた

そのまま動くことは無く 立ったまま息を引き取った

周りの観客は言葉を失うも 徐々に歓声がドルに掛けられる



「「「「「 うぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!! 」」」」」



「感動したぞ!!」


「すげぇ…… すげぇよ!!」


「これで私も億万長者だぁぁぁぁ!!」


「あのオーガを…… 倒したぁぁぁぁ!!!」



「誰が倒されただ!!!!!!」



その一声に全員が黙った 地上から降る一つの影がドルの前に落ちて来る

その姿に客全員が絶句した


「ヌババババ!!! 勝者は決したな」


「カッカッカ!! 今回は冷や冷やした」


ガタルゴは自分の魔法で創った透明な壁を解き オーガの下へと歩いて行く

ステージに登りマイクを持つと 観客に向けて声を上げる


「今回のイベント 勝者はオー……」


「黙れ!!」


突然ガタルゴの発表を断ち切り ドルの前に立つ


「何をする気だ!?」


「??」


オーガが振り向くと そこにはニクロとその後ろにホットとダルタがいた


「……!!?」


オーガはニクロの顔を見るなり何かを勘づいたのか すぐにドルの方へと顔を戻す


「俺の負けだガタルゴ……」


「今なんと!?」


耳を疑うガタルゴに対し オーガは笑いながら控室に戻ろうとした


「俺が求めいたデスマッチはこういうものだったのかもな……

礼を言うぞ何処ぞの戦士よ いや…… ドル・マーフィーと言ってたな 一生覚えておく」


そう言い残してオーガは行ってしまい ガタルゴは溜息を吐いて


「えー訂正します 不運にもオーガは〝地上で足を着いてしまい〟

場外ということで勝者ドル・マーフィー!!!!」


歓喜の声を上げる者もいれば 賭博に負けて悲鳴を上げる者もいた

今回のイベントにより世界の経理経済が少しだけ変わったという

何故なら大金を得て逆転人生を送る者もいれば

一国が借金地獄になったニュースも後を絶たなかった


そんな余談はいいだろう

ドルの全てを賭けた結果はニクロ達の中にしっかりと刻まれた

それを明言しているかのよう 眠りに就くドルの顔は優しかった



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― 新着の感想 ―
[良い点] あちこち読み返してきました。 ルランがドルに何をしたかはわかったと思う。一応、ルランがなぜそんなことをしたかも。 そしてやはりドル・マーフィーが不憫なのであります(´;ω;`) [一言] …
[良い点] 切なかったぞドル・マーフィー… [一言] キスティアには一体何が起こったんだ?どうしてこんなことになってしまったんだ!
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