友が眠る場所7 身勝手な偽善者
やりたことにしか興味が湧かない やりたいことの為に努力をしない
ただ喧嘩が強い俺の子供ん時の夢は〝ヒーロー〟
努力せずに力があれば簡単になれる 実際その通りだった
片方が片方に暴力を振るわれている
暴力を振るう奴を叩きのめしたら片方から感謝された
強盗が一般人を拉致している
乗り込んで叩きのめしたら 少数から怒られても多数から感謝を貰った
俺の夢は簡単に叶った
しかし知らないところで付いたあだ名は〝身勝手な偽善者〟
勉強もしたことがない俺には意味が分からなかった
恋人であろう彼女の方が彼氏から暴力を振るわれていた
勿論彼氏を叩きのめした 彼女の方からビンタを食らった
また強盗が一般人に迷惑を掛けている
叩きのめそうと乗り込んだ 二人が撃たれて死んだ
多数から感謝を貰った 数人の遺族から泣きながら身体を叩かれた
近くにいた一人から言われた
「お前が勝手な行動をしなければ あの二人は死ぬことなかった」
いつの間にか周りから罵声を浴びていた
〝良い人になりたかったのか?〟〝ヒーロー気取りか?〟
〝お前の所為で人が死んだ〟〝自分の欲を満たせれば満足か?〟
〝何も考えてない奴が人を助けようとするな〟
〝知識も技量も無い奴が人を助けようとするな〟
〝もっと大人の行動を取れ〟〝ガキが出しゃばるんじゃない〟
〝 この…… 人殺しぃ…… 息子を返してぇぇ!!!! 〟
分からなくなった 親もいない俺に難しいことを初歩から教えてくれる人がいなかった
気付いたときは誰かれ構わず殴っていた
自分で自分が分からなくなっていた
夢を失ったからか 叶った夢が現実と違い過ぎたからなのか
結果その腕を買われ 地下闘技場のファイターとして上を目指していた
人の上に立ち 敬われ 歓声を浴びる筈だったのに
頂点では無く地下で金ばかり欲する人間から歓声を浴びるだけの存在となっていた
休日は人を殴らないようにした 今の俺にとって地下闘技場は腐っても職場
強敵を倒すのが楽しいという感情から
次第に地上にいるそこらの一般人には興味を持たなくなっていた そんな時だ
「そこのオマ…… 死んだ目をしているな?」
俺でも分かった 故に心が動揺した
目の前に現れたのはライゴク王国の国王オグル・バルトノヴァだった
「ワシが鍛えてやろうか?」
今思うとその時の俺はオグルの言葉に何の関心も無かった
数年が経ち 俺はAAの覇者 地下闘技場のチャンピオンとなっていた
同時期に起きた事といえば オグルの息子オーガが次の王位を継いだことだ
あとは魔蛍操作というのが流行り出し 地下闘技場にも体得した者が増え出した
そんな俺にも恋人が出来る 俺に似合わない育ちの良いギルドの娘だ
名はキスティア
同棲を承諾されて 闘技場の外にいる時間が増えた
良く一緒に酒を飲む奴もいつの間にか現れる 名前はケルン
婚約者としての責任 友人としての責任
いつの間にか面倒臭いと思っていた大人の考えを持つようになっていた
二人はギルドで働いていた
ケルンは新人でキスティアはカウンターで社員の望む依頼を案内する仕事をしていた
「今度…… ガルバーク帝国で大きな大会があるんだ 出ても良いかな?」
「なに私に確認取ってんの? 社員でもあるまいし」
いつの間にか妻に確認を取る夫の役をしていた 幸せだった
結果はあのオーガに一発KO 合わせる顔が無いとそう思っていたが
「でもあなたは困っている少女を助けたんでしょ? あなたらしいわ」
「今日は飲むぞ!! ドル!!」
幸せだ この二人に出逢えて本当に良かった
しかしそんな俺にも 不幸が襲い掛かる
魔蛍操作を体得した奴等が手強くなって来ていた
自分も体得しているとはいえ倒すのがやっと
そんな俺にもストレスが溜まっていた
「あなた大丈夫?」
婚約したキスティアが常に心配してくれた
「あぁ…… 今日はもう寝る」
今日の連戦で疲労もメンタルも限界がきていた俺にキスティアが言った
「ねぇ…… そろそろ引退してギルドに入らない?」
妻の温かい提案だった そう 温かい言葉だった なのに俺は
「歳だって言いたいのか!? もうアイツらには勝てないってそう言いたいのか!!」
俺はキスティアに強く当たり 部屋に籠ってしまった
傷つけるつもりはなかった やめようと自分に言い聞かせたがそれが日常茶飯事になっていた
当たる人間が必要だったのだろう 最低だ
ある日家に帰ると テーブルの上に食事と手紙が置いてあった
〝 お仕事ご苦労様 一人で悩んでないで私が駄目ならケルンにでも相談したら?
彼も心配してたわよ 私は常に心配しています
あなたの拘りも考慮してますけど 私が一番考えているのはあなたとの一番の幸せ
口では強い物の すぐ喧嘩に走るあなたが 私に暴力を振らないことにとても愛を感じてる
今でも充分私は幸せ あとはあなたがあなたの一番幸せな毎日を想い描いてみてください
あなたの妻 キスティアより 〟
誰もいないリビングで泣いた 初めて感情を抱いて泣いた
ベッドで寝ているキスティアが愛おしい
馬鹿な俺はただ 「ありがとう」 そう言って明日を描いた
これから今の俺が持ってる〝幸せ〟を大切にしていきいたい
そう思っていた頃だった 悲劇が起きる
いつも通り試合が終わって家に帰った
早めに帰るといつも出迎えるキスティアが今日に限って来なかった
まだ仕事なのか そう思いながらリビングを覗くと キスティアはそこにいた
「ただいま」
普段あまり使わない言葉が自然と出た
そこにキスティアは予想だにしなかった表情で俺を見た
「どちら様?!」
「……何を 言っているんだ?」
本当に何を言っているんだ
「悪戯か?? 君らしくもない……」
「え…… 誰なんですか??」
手の込んだ演技だと その時の俺は本気で思っていた




