隔離されてる島7 報告
創造審犯 泥黎の赤鎖
炎豪の掟に基づく これを犯し者を地の底より赤き鎖にて自由を奪取する
一つの島を守る守護神となり その身と魔蛍を永久に地の繁栄に捧げよ
ニクロ達が転送しヴァジュラに帰還した後
族長率いる動ける戦士達は集い
エヴァノールと交戦するライトだったハイゴレの方を向き
その場に全員が座り込む
「まさかこいつが次の島の守り神になるとはな」
「仕方ないよ 島神だった〝神獣・混沌の恐嚇竜〟を
あのラウルに与えたんだから…… ハヌマンもアイツを気に入ってたじゃないか」
手を合わせて儀式に入りながらも 不満を漏らすハヌマンにワルムが怒鳴りつける
「うっ…… あっアイツは特別だ!!」
「集中しろお前ら!!」
ラングールが二人に怒鳴り
ハヌマンとワルムは手を合わせつつも反省の色を見せていた
族長は集中を切らさずそんな二人に話し掛ける
「彼奴もニクロと異なるが 懐の見える男だった
〝とある闘技場〟に捕えられていたサル寅をこの島に運んでくれた恩もあり
しかも初見で危害を加えてしまった一件を 我らの理解を見越した上で謝罪をした人物だ」
「まぁその所為で環境が歪んでこんな樹海になりましたけどね…… 族長も集中してください」
ーーそれでもあの者を守る力を与えたくなった
……ラウルとニクロ どこか同じモノを感じる奴らよ
全員の身体から湧き出るオーラが一つになったとき その魔力は強くなっていった
そして族長の一言により その光るオーラは島全体に広がり海の底まで走る
「赤き鎖よ 罪を犯したあの……」
「どうしたんです? 親父……」
「彼奴の神名…… どうするか……」
「「「 あ…… 」」」
急にあたふたする族長にラングールが目を瞑りながら静かに提言する
「スルト…… 意味は黒い者
あそこまで純粋で強い黒炎を出す彼に当て嵌まる良い神名ですがどうでしょう?」
「スルトか…… 今後儂らを守る守護神の名はそれで良いな?」
族長の言葉に 誰も首を横に振る者はいなかった
「ラングールの兄貴がこの中で一番彼を知ってるし 文句は無いよ」
「良い思い出では無いけどな……」
なんやかんやで笑い合う自分の種族を見て 族長は背を向けながらも誇らしく思っていた
「さて…… 皆の者始めようか 新しい〝島神〟を出迎えるぞ」
「「「「「 ………… 」」」」」
全員が黙祷を捧げる
海底より地響きと共に赤い鎖が無数に現れ ハイゴレの身体を纏わりつく
不思議とその怪物は微動だにせず あっさりと拘束を受け入れた
その光景に一族も 目の前に立つエヴァノールも
そしてその肩に乗る革命軍全員もその場から見ていた
「まだ自我ってあったのかな?」
「さぁな……」
ジェルンの質問に唯一返したのはエニシダだった
エヴァノールも掴んでた手をそっと離すと 全員はただその最後を見ていた
怪物 化け物 悪魔 どの言葉も掛けられる奴には共通点がある
どれも自由で共に戦うことを知らない 周りから名前を授からなかった愚かな存在だ
しかし彼にその言葉のどれかを当て嵌めるとしたら
自分自身がその三つの言葉のどれかを口にされ 指を差されても仕方ない
彼は最後まで人間としてその生涯を終え 神へと生まれ変わり この地を支えるであろう
旧名ライト・ローラン 神名スルト
彼の本当の最後は 少し前まで敵であった炎豪の民 そして革命軍によって見送られ
その巨体は魔蛍を辺りに散らしながら静かに海の奥深くへと沈んでいった
やがてその身体は全て魔蛍へと還り 大地に吸収され島神となるのである
島全体を舞い飛ぶ赤い魔蛍が 徐々に姿を消して
ファバルロス族と革命軍が見る方向が互いだけとなる
「さて…… どうしますか親父?」
「裏切ったのはワシらだ 戦闘の準備をしとけ」
一方で革命軍では
「リーダー 分かってますよね?」
「あぁ…… ここを離れるぞ」
巨大な岩の塊である頭部の横の壁から
エヴァノール本体が肩に降りて来てジャミラの本心に反する返答をした
「残念だったねジャミラ」
「リーダー何でだよ?!」
「諦めなジャミラ ここにもう用は無いよ」
「キニエの言う通りだ 奴等とこの島の拠点を利用する事が目的だったんだからな」
キニエとエニシダ二人の説得に
ただ民達を殴りたかったジャミラは不貞腐れてその場に座り込む
「あの巨人は神獣になるのかな~~マルガ?」
「フア~~そうなんじゃない? 元が死んでるし……」
ジェルンと眠いマルガが関係無い話をしていると エニシダはその場に魔法陣を描き始める
「今回も掻き回されましたね 計画は失敗……」
離れたところでエヴァノールと話していたのはモルブエだった
「いつものお前とも話しにくいが
違うお前と話すのもまた違和感を感じるよ ジャミラとは気が合うのか?」
「すみませんねぇ……
面白いですよぉアイツは 先輩と呼ぶに相応しい」
モルブエの口調も感じもさっきまでとは違う者になっていた
「結局今回も無理だったな〝例の計画〟
四年前と同じでまたもやウォードに邪魔されてしまった」
「ウォード?」
エヴァノールはその名前に反応した
「知らなかったんですか? あの黒い肌の奴の真の名はナット・ウォードですよ?」
「そうか…… そういうことか……」
モルブエはそう言い残そうと皆のところへと戻ろうとした
「二ついいか?」
エヴァノールはモルブエを呼び止める
「何ですか?」
「暗黙にしていたが…… 何故ラウルを放旅者に入れた?」
「…………」
「そしてもう一つ…… お前はいつから革命軍にいる…… モルブエ?」
「…………」
「お前は…… どっちが本物なんだ?」
「三つになってますよ?」
モルブエは自分のお面を撫でながら首を傾げる
「こっちが本物だったりしっちゃって~~!!
ラウルの件は本部にいる上層部にでも聞いた方が早いですよ!!」
そう濁してモルブエは皆のいるところへと行ってしまった
エヴァノールもしばらく遠くの海を見つめ エニシダの呼ぶ声と共に魔法陣の方へと向かう
「この大地の塊はどうするんです?」
「ここの種族がなんとかするだろ」
「無責任ですねぇ……」
「皆揃ってるな? これより一旦本部へ戻る」
一人一人が転送用の魔法陣に乗ろうとしたその時だった
「ドロン!! 報告報告!!」
突如別のところに魔法陣が現れ 煙と共に一匹の生物が現れた
「あっ! ムササビ君だ」
ジェルンは駆け寄るなり そのまんま毛深くそして話すムササビの頭を撫でる
そこへエヴァノールも近寄って来て
「ご苦労だな伝令部隊 報告とは?」
「えぇ…… 実は…… 朗報と悲報がありまして」
「朗報と悲報?」
何やら言いにくそうなムササビの態度に全員が注目する
「どっちでもいいから早く話しな!!」
キニエの怒声にジェルンの後ろに隠れるムササビは朗報から話した
「二日前 七大国の一つであるファミリアフォードット領
王のカナリアル・フォードットが住む首都【グレイツブリトン】にて内乱が勃発
それに革命軍のラウル率いる七名が加勢 数十時間に及ぶ本格的な戦争の末
カナリアル王と大幹部数十名が死亡!!
さらに生き残った王政側の降伏により周辺各国の奴隷が次々と解放されています!!」
ムササビの報告に誰もが驚く
それもその筈 絶対的力を持った七大国の一角が落ちたのだから
「……で悲報は?」
エニシダの質問にムササビは黙りこくる
「どうした? 早く言え」
「…………」
ムササビは深呼吸をし 震えた声で話す
「革命軍総本部特殊精鋭部隊 サブリーダー ラウル・ウォード
守護神を持つ数多くの幹部達との死闘の末 戦地にて…… 死亡を確認」




