隔離されてる島6 帰還
全身黒い炎を纏い エヴァノールと同等に巨大化したライト しかし
「こっちが安全になったとは言えねぇぞ」
ホットが周りに忠告する
「あぁ…… 元から意識を失っていたんだ
だがもうこうなった以上止める術は……」
カーソンが目を瞑り 諦めの言葉を呟いていると
「ライト!!」
ニクロが突然叫び 巨大化したライトに呼び掛ける
「返事しろライト!! 返事してくれ!!」
しかしライトは答えない
それでも呼び続けるニクロの肩をドルが押さえ
「もうよせニクロ あぁなったら……」
「その通りだ…… アイツはもう……」
森の奥から出てきたのは イリアを担いだダルタだった
「ライトはこの道を選んだ 俺達を守ってる」
ダルタのまさかの言葉にニクロは胸ぐらを掴み
「お前らずっと一緒だったんだろ?! 何で見捨てられんだよ!?」
「……!!」
下を向いていたダルタは驚く表情でニクロを見返す
「お前変わったな…… 良い方向にさ」
彼は無表情で言葉を返すと 逆に胸ぐらを掴んできて
「ずっと一緒だったからこそ!! アイツの覚悟が解るんだ!!」
「っ……」
互いに沈黙し そして掴み合う二つの腕がそっと離され
そんな中でカーソンが皆に報告を入れる
「転送の用意は出来た いつでもあっちに帰れる」
「じゃあライトも……」
「ニクロ! この魔法陣が精一杯だ
残念だがあの巨体を転送可能な奴はここには存在しない」
「そんな……」
カーソンの言葉にニクロは言い返すことも出来ず
ホットはニクロの頭に手を置く
「それに…… あれはもうライトじゃない」
「なんで…… なんで魔約使っただけでこんな…… 傷も回復させたんだぞ……」
「外傷を直してもどうにもならん 取り憑かれ 乗っ取られるんだからな」
ニクロ達から遠く離れた場所で話を聞いていた族長が割って入ってくる
「眠らせてやりましょう 役目は儂らが引き受けます」
「出来るのか?」
「炎豪の掟 罪を犯した者を封印する特殊な技が一つ炎豪の民に伝わります
十数人いれば可能でしょう」
ダルタは族長の前に立ち 深くお辞儀をする
「よろしくお願いします」
族長が柔らかい表情で頷いてると同時に地響きが鳴り
「ニガサネェェゾォォォォォォ!!!!」
エヴァノールは攻撃を試みるが 目の前のライトが手で押さえつけ
島を挟む取っ組み合いが繰り広げられた
「ジャマダァァァァァアアアアアアアア!!!!」
「ゥォォォォォアアアアアア!!!!」
「……守ってくれているようだな」
「ライトは昔から正義感だけは強かったから…… なぁイリア……」
イリアを背負ったダルタが最後にライトの勇士を見届けていた
ニクロがそっとダルタの方を見やると ダルタの顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた
「行くぞ!! 二クロ!! ダルタ!!」
既にドルとホットそしてヴェルは転送されており カーソンが魔法陣の前で手を前に振る
「さようなら親友」
ダルタはそう言い残してイリアを背負いながら魔法陣に乗り アタランテと共に転送された
「次はニクロ 俺は最後だ」
「黒の放旅者よ 少しだけ話があります」
カーソンが転送をする順番をニクロに譲ると 族長が呼び止め
「話って?」
「その魔法陣も長くは存在しないでしょう 手短に一言
貴方がさっき言っていた無黒ですが……」
「??」
「薄々気付いていると思われますが
〝無黒〟は場所ではありません それだけ伝えようと」
「場所じゃない? でも無黒は……」
「確かにここは無黒という名前の場所 闇が暗闇に消える怪奇な海です
ですがその名の意味は広く 貴方に関係のある言葉でもあるのです」
「な!?」
「意味は自ずと 自分の運命と向き合う形で正体を見せるでしょう
また会える日がこの世であることを祈っております」
頭を下げる族長の姿は周りと共に光で覆われ 二クロはそのまま消える
最後に残ったカーソンも軽く族長達に会釈を交わし
「アンタらをただの蛮族だなんて思わねぇけど……
もうちょっと仲良くなる時間が必要だったな」
「儂もそう思います…… 生き急ぐ状況はいつも後悔を生みますな」
カーソンも消えると同時に魔法陣が消失した
先にヴァジュラに帰還している筈の二クロは 何故か光の空洞に残されていた
ーーこれが転送…… あのマッドやマルクスとかいう海賊の使った奴と同じ感覚だ
ニクロは光の空間をただ浮遊して進むしかなかった
しかしいつまで経ってもあちらに帰れない
ーー転送ってこんなに長いのか? 距離によるのか?
〝 ニクロ 〟
「!?」
突然何者かに呼ばれ ニクロは辺りを見回す
「誰だ!?」
しかし返事はない しかしまた暫くすると同じ声が聞こえる
〝 ニクロ…… 〟
その声がニクロを強く反応させる 誰の声だか分かったからだ
「ライト! ライトか?」
ニクロが辺りを見回していると 遠い光の中に一人の人間を見つけた
「ライト!! お前……」
〝 まさか最後に会うのがお前とはな…… ダルタかイリア
この際オグル先生でも良かったのにな 〟
「……相変わらずだな」
二人は笑い合い ニクロは泳いでライトのもとに近づこうとする
だが一定以上距離が縮むことはなかった
「クソ! なんでだ?」
〝 そりゃぁこっちはもう 死者が来るところだからな 〟
「え……」
〝 お前は死者と会える まったく…… どこまでも特別な奴だ 〟
「やっぱりお前は…… 死んだんだな」
〝 泣いてんのか? 気持ち悪ぃ 〟
ライトがケラケラ笑ってると ニクロは涙を拭って反撃する
「お前とは犬猿の仲だったし 今さら悲しむってのもな~~」
〝 ………… 〟
「イリアもそっちにいないってことは多分生きてるってことだろ? なんか悪かったな!」
〝 ………… 〟
「まぁ一緒に修行…… した兄弟分だし墓くらい作ってやるよ」
〝 お前の墓に眠るのは屈辱だがな 〟
「ホント…… いなくて…… 清々するよ……」
〝 あぁ 〟
ニクロは拭いた筈の目から次々と涙が溢れて来ることに疑問を持つ
「なんで…… 涙なんか…… お前らとなんて半年もいなかったのに」
〝 よく分かんねぇけど…… 悲しいでいいんじゃない? 〟
「俺はまだまだ知らない事が多過ぎる」
〝 そうだな…… 常識だけは勝ってたって思えるよ 〟
「はは……」
ニクロが涙を拭き取り 再びライトを見るとさっきまでとは明らかに
彼の身体が透けて見えていた
「ライト……」
〝 時間が来たみたいだな 最後にこれだけ話せりゃ充分だ 〟
「ダルタ達はいいのか?」
〝 別に恥ずかしくて何も言えねぇよ 伝えといてくれ 〝じゃあな〟って…… 〟
「それだけでいいのかよ イリアのこと好きだったんだろ?」
〝 お前も知ってたのかよ 〟
「ダルタに聞いた」
〝 あの野郎…… 親友だから許す 〟
「アイツもお前のこと親友って言ってたよ 羨ましいな」
〝 そうか んじゃそろそろ逝くかな? 〟
ライトの下半身は光子によってバラけ始めた
ニクロはもう泣きもせずに黙って見守っている
〝 あぁそうだ 〟
「なんだよ?」
消えゆくライトの顔を見るニクロに ライトは満面の笑みで
〝 イリアを助けてくれてありがとな 親友 〟
そう言い残してライトの身体は光子だけの存在になった
ニクロはその光子に手を伸ばし 有りっ丈の声でライトの名を叫び続けた
目を開けるとオグルの家の前に
「ニクロ 大丈夫か?」
「……あぁ」
ダルタが手を差し伸べ ゆっくりと立ち上がって久々に青空を一点に見つめた
ーー親友か……
振り向いてよ
泣いてんのか
忘れはしない
俺もだよ




