隔離されてる島5 誓い
エヴァノールは鈍くもその巨大な右手を後ろに引こうとする
「来るぞ…… 大地そのものが……」
目の前の絶望的な状況から一歩も動くことが出来ない自分達にエヴァノールは容赦しない
虫を殺す感覚で一撃を入れる準備をしている
「どうせ死ぬなら 魔約でも使っとくか……」
ドルが痩せ我慢で出た発言にホットはそっと肩を掴む
「止めておけ…… 因みに転送魔法が完成する時間は?」
ホットの質問にカーソンが答える
「自分の魔力じゃないからな…… 一応設置は済ませてるが少なくともあと二十分」
「……魔蛍琥珀か」
ホットの見る先には浜辺に光る魔法陣
そしてその中心に置かれた琥珀が周りの魔法陣と呼応していた
「でどうする? どうやって止める!?」
各々が混乱と断念の空気を作る渦中 ニクロが口を開く
「俺が……」
「お前は静かにしてろ……」
「でもこのままじゃ……!!」
「我々が時間を稼ごう」
ニクロとカーソンの喧嘩にラングール達が提案してきて
「貴方を守るのが炎豪の運命 ですよね親父」
ラングールの後ろからも妹ルーサが出てきてニクロに駆け寄る
「父様も私達も珍種狩りに怯えていて 貴方をよく見ようとしなかった
古い言い伝えも眼前の敵の前で我々は機能していなかったわ」
ルーサが申し訳なさそうな表情でニクロと話していると
後ろから族長に押されてハヌマンが出て来る
「「 ………… 」」
ニクロとハヌマン 二人の間に沈黙が流れる
しかし自ずとハヌマンは口を開き
「炎豪の誓い……」
「!?」
ハヌマンはボソッと呟き 右拳を前に突き出す
そしてニクロは何も聞かずに右拳を合わせた
「……さて!! 黒の放旅者よ!! 目前の脅威は我らファバルロス族が防いで見せます」
ラングールの掛け声と共に 炎豪の民は魔力を集中させる
次々とファバルロスの肉体が膨張して巨大化していく
「これって……」
「我々だけが持って生まれる戦闘形態です 名は寅寅
肉体全般の基礎戦闘力が大幅に増幅します」
そう言ってラングールも巨大化し 一斉に森の中へと入る
「あれが戦闘民族って奴か……」
「色んなとこ冒険しててもそう見れる光景では無いな」
ファバルロスの民達は木の上に乗り 幹を折り曲げて抵抗力を高める
次々と木の上に登れば 反りの復元力によってエヴァノールの方向へと跳んだ
「ここには愛する家族もいる そう簡単に破壊はさせん!!」
次々と宙を舞う戦士達が目指す場所は 今まさに放たれようとされている敵の右腕の肩部
「炎豪の一撃を…… 食らいやがれ!!」
ラングールが先陣を切ってエヴァノールの肩に一撃を当てた
それに続くように次々と戦士たちが全身全霊の体当たりを決める
肩にはヒビが入り始め 最後のハヌマンの攻撃で完全に腕と本体が切り離された
「…………」
エヴァノールは切り離された部分をジッとと見つめるが そこに焦りは見られない
「!?」
宙に浮くラングールは腑と切断部分を見る その時だった
「「「 ぐぁぁぁぁ!! 」」」
目で追いつけない速さの岩の棘が切断面から無数に発射され
次々とファバルロスの戦士に突き刺さった
それと同時に二つの断面から飛ぶ棘は互いの断面を繋ぎ合わせ 腕と胴体が縫合された
「なっ……」
戦士達は傷を負い 雨の様に島に降下する
「別に振りかぶる程でもなかったか……」
エヴァノールの目は再度ニクロの方に向き 腕をそのまま振り落とす
ニクロ達は全開させる腕を前にして成す術が無い
「おい! 転送は?!」
「あと…… 五分」
「クソ!!」
ドルはホットとカーソンをどけらかして前に出る
「おい!」
「やらなきゃ死ぬぞ!!」
ホットの静止にも耳を貸さず ドルは魔力を高めた
「ドルさん!」
「クソ…… 他に手は無いのかい……?!」
皆が皆諦めてた ニクロは視界を埋める巨大な手と周りの仲間の悲痛な叫びを
まるでこの世の終わりと錯覚し目を瞑る
ーーアイディー…… ごめん……
ドルが魔約を使う瞬間だった
「ウォォォォォアアアアアアア!!!!」
黒いオーラと共にニクロの目の前に立ちはだかるは
「……ライト?」
カーソンやアタランテ ヴェルもその弱々しい声でライトの方を振り向いた
「……何だ?」
エヴァノールも手を止めはしなかったが 急に現れた黒いオーラを纏った男に注目が行く
「ヴアアアアアア……」
しかしライトの目は既に死んでいた まるで本能だけで生きているかのような
徐々に黒いオーラはライトを飲み込み 肌がドス黒く染まっていく
「今さら一人増えようが関係…… っ……??」
エヴァノールは異変に気付いた
自分の魔力が外に漏れ そして反対に大きくなっている者
「ゥォォォォオオオオオオ!!!!」
原因はライトだった
エヴァノールの魔力がライトの身体に吸収されていたのだ
ニクロ達もその光景に驚きを隠せずにいると
「あれは一体……」
「あの時と…… 同じだ……」
「あぁ……」
隣にいるドルとホットも全身が震え出す
「同じって何がだ?! おいドル!!」
ドルとホット以外 訳が分からずライトを見てるしかない
一方でエヴァノールの魔力は吸われ続け 一定の数量に達したライトの肉体に変化が起こった
「これは…… まさか!!」
炎と闇がライトの全身を包み込み その塊は巨大に膨れ上がる
黒い炎で手と足が造られ 海に沈んでもまだまだ膨張を続けた
「これって……」
「あぁそうだ」
ニクロ達が見上げる頭上には エヴァノールの大きさと変わらない
黒い炎で出来上がった巨大な怪物と化したライトがいた
「これこそが約四年前の大事件を起こした
神を…… そして本人を飲み込み……
その姿を顕現した堕ちた黒い魔蛍の化身〝闇纏守護神だ〟」




