隔離されてる島4 運命
「早く行け!」
ドルの声でカーソンはアタランテを背負い 死に物狂いで走る
「覚悟は出来てるのか?」
ニクロ達を見送ったドルが振り帰ると四人の革命軍に囲まれていた
「一対多数は俺の分野じゃないんで……」
ドルは全身に魔力を集中させ
「俺も逃げます!!」
地面を蹴ると同時にドルの身体は森の中へと消えた
しかしドルの行く先にエヴァノールが待機している
「他人の為に命を無駄にするな」
懐の銃口をドルに向け 軽く引き金に手を当てるが
「……遅いな」
「何?」
途端にエヴァノールはドルのいる反対方向に目を移すと その一瞬の出来事だった
「……っ!!」
鈍い音と共にエヴァノールの腕が弾かれる
そこに透かさずドルが懐に入り 思いっきり腹に拳をめり込ませた
エヴァノールは森深くまで吹き飛ばされてその場が静まる
「さすが元有名人」
「気に入ったのかその呼び方」
木の上にいたホットがクスッと笑い 銃を下ろす
ーーさて俺達もアイツらのところに行くか
二人はニクロ達のもとへと走る
静かになった森の奥 木が何本も倒れる先にエヴァノールが岩に凭れておれ
「ここにいたんすかリーダー どうします?」
「放っておけ…… って言ったらジャミラに笑われる」
エヴァノールがゆっくりと立ち上がった次の出来事だった
「大地を揺るがす農耕の神よ 我に纏え〝大太坊神〟」
静かだった森がざわめき始める
一方海岸の方へと逃げるニクロ達は森を抜けようとしていて
「止まれ!!」
急なカーソンの呼び止めに各自急ブレーキが掛かる
「……そんな」
ダルタは膝を下ろす 海岸には数十人の炎豪の民の戦士が待ち構えていたのだ
「皆…… 魔力は?」
「あるわけないだろ…… ここまで走るのに精いっぱいだったさ」
カーソンの小声の問いに 無気力で答えるアタランテは力が抜けたようにその場に座り込む
それとは反対にヴェルは前に出て盾役を買って出た
「俺はまだやれる 結局負けっぱなしだしな」
「やめろヴェル…… 行っても負ける」
ニクロの弱々しい声がヴェルの足を止めた
カーソンもゆっくりとニクロを下ろして地面に座る
「元々数人でどうこうすると思っていたのが間違い…… ということか」
誰もが諦めたとき 戦士達の前にいた族長の口から放ったのは予想外の言葉だった
「お待ちしておりました」
族長は膝を着き 後ろの戦士達も次々とその場に跪く
「ハハ…… なんだこりゃ?」
カーソンは動揺を隠せずにその場が沈黙を続ける空気の中
頭を下げていた族長がニクロの方を見て
「貴方を見たときから違和感は察しておりましたが
気付くのが遅れ 数々の暴戻 深くお詫びさせて貰いたい」
「ちょっと待て…… 今混乱してる……」
ニクロはあたふたし始めるが ヴェルは未だに警戒を解かない
「騙し打ちか後ろの革命反士共が来るまでの時間稼ぎだ 油断するなニクロ」
「いや…… 目の前の人数だけでも俺らを殺せる
前者は無いとすれば それ故に不自然過ぎて奴等の言ってる事の信憑性は高い」
カーソンの言うことにヴェルも混乱した
すると族長の後ろからラングールが前に出る
「親父が貴方に対して酷い仕打ちをしたのは俺からも謝ります
なので俺から話をさせて頂きます」
ラングールが深々と頭を下げる後ろで 族長は落ち込んでいた
「先ほども親父から話されたように 我々は賢族という人類とは異なり
さらに言えば世界に数多くいる他種族の中から選ばれた種族達です
誰に選ばれたかまでは詳しく知りませんがね……」
彼の話にニクロは黙って耳を貸す
「しかし古来から我らだけかは知りませんが
炎豪の民には三つの儀令が存在してました
・炎豪の誓い 他種族との拳合わせし時 形の無い契りを結べよ
・炎豪の掟 罪を犯し者 その肉体の自由を縛るものとする
・炎豪の運命 如何なる災いが来ようとも〝黒の放旅者〟を加護せよ」
「黒……?!」
ニクロは思わずの自分の肌を手で触る
「俺達の一族は一定の条件が現れたとき この伝承を固く守って過ごしていた
古文書によるとこれは 数千万年も前から残されているらしい」
「数千万年も前だと!?」
カーソンがその言葉に強く反応し 傷ついた身体を無視して立ち上がった
「どうしたんですかカーソンさん?」
「聞く機会があれば聞こうと思っていたが アンタらは導粥の神々
リタリー・デウスを知っているのか?」
カーソンの発現に周りがざわめき出す
「リタリーデウスって言やぁ どこぞの誰かが付けた〝世界の名前〟だろ?
神様が存在してったって意味で あとは反逆の神々って意味もあったような」
「あぁ…… だが……」
アタランテの疑問にカーソンは言葉を詰まらす
そんな中で族長が口を開く
「カーソンと言ったか? お前が何故その名前を知っているのか気になるが
我々も全ては知らん お前の質問にも答えられん それに……」
族長と会話している最中 急に地鳴りが辺りに響き渡る
「……急に暗くなったぞ?」
その場の全員が慌てる中 森の奥から二人の影が現れる
「おい!! 転送の用意は?!」
「アンタらは確か……」
「ドルさん! ホット!!」
ニクロがヴェルの肩を借りて勢い良く起き上がった
「俺には〝さん〟無しかよ! そんな事よりヤバェ 転送魔法使える奴いるんだろ?」
ホットの焦りは尋常ではない 指差す方角 ニクロ達は一斉に島の中心の方を見上げる
地面が盛り上がり 山をも飲み込む大きなコブが出来ていた
それは大きな手と具現化して海へと入って行く
「何なんだあれは……」
「革命軍特攻部隊リーダー エヴァノール・E・シュパーム
一度ここに海族船がやってきた時に一回見せて貰った神使いの御業
あれは次元が違う…… 怒らせてはならない まさに神そのものを彷彿させる」
族長を筆頭にその場にいた全員が怯えた表情を見せ
ニクロ達もどこからともなく身体が振るえ始める
巨大な手が海へと沈み 地震の震源が今度は海底へと変わった
「後悔しているよ 我らは今日…… いやこの島は滅ぶかもしれん」
海からその絶望を与える巨大な顔が自分達を覗く
まさに大地の怪物 海からその姿が次から次へと現れ
ニクロ達が見上げる先は 太陽を隠す超大型の人の形をした地の塊となったエヴァノールだった
「ニガサネエゾ…… ソシテ…… ウラギッタナ…… サルドモォ!!!!」




