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変わったこと変わらないこと

午後の仕事を終えたルシアは、城の奥へと続く廊下を歩いていた。


ふと、足が止まる。


目の前にある扉。


その向こうにあるのは、昔よく通っていた中庭だった。


数年ぶりだった。


ルシアはしばらく扉を見つめていたが、ゆっくりと手を伸ばした。


扉を開ける。


柔らかな風が頬を撫でた。


花の香り。


木々のざわめき。


見慣れていたはずの景色。


それなのに、胸の奥が少しだけ締めつけられる。


「……変わってない」


思わず呟いた。


昔、ここでカイルと出会った。


まだカイルが王子だと知らなかった頃。


木の下で本を読んでいる彼に、猫を見なかったかと尋ねた。


そこから、少しずつ二人で話すようになった。


ルシアはゆっくりと木の下へ歩いていく。


そこには、昔と同じようにカイルがいた。


本を手にして、木に背を預けている。


カイルが顔を上げる。


「ルシア?」


「……カイル様」


ルシアは少し笑った。


「ここ、久しぶりですね」


「うん」


カイルも周囲を見渡す。


「数年ぶりだね」


「はい」


ルシアは隣に腰を下ろした。


昔と同じ場所。


けれど、隣にいるカイルとの関係は、あの頃とは違う。


友人でもなく、ただの侍女と王子でもない。


今は――婚約者。


「なんだか変な感じです」


「何が?」


「昔は、ここでカイル様と会えるだけで嬉しかったんです」


カイルが静かにルシアを見る。


「今は?」


ルシアは少し考えてから、笑った。


「今は……ここでカイル様に会えることが、当たり前みたいに感じます」


「そっか」


カイルは嬉しそうに笑った。


「僕も同じだよ」


二人はしばらく黙って庭を眺めた。


数年の間に、たくさんのことが変わった。


けれど、この場所だけは二人を覚えているようだった。


ルシアはそっと息を吐く。


「……また、ここに来られてよかったです」

「うん」


カイルは本を閉じた。


「これからは、また来よう」


「はい」


数年ぶりの中庭は、昔と同じ静けさだった。

ただ一つ違うのは――


もう二人は、ここで離れることを考えなくていいということだった。

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