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第二王子殿下

午後の中庭。


いつもの木の下で、カイルは本を読んでいた。


ルシアは少し離れたところで花の手入れをしながら、ふと手を止める。


「ねえ、カイルさん」


「うん?」


「第二王子殿下って、どんな方なんですか?」


カイルは本から顔を上げた。


「どうして急に?」


「今日、侍女たちが話してたんです。第二王子殿下はあまり公の場に出られないって」


「そうなんだ」


「はい。それで、どんな方なのかなって気になって」


カイルは少し考える。


「……たぶん、静かな場所が好きな人だと思うよ」


「へえ。じゃあ、読書とか好きそうですか?」


「好きだと思う」


「じゃあ、カイルさんと気が合いそうですね」


「……そうかもしれないね」


ルシアは楽しそうに笑った。


「あと、王子様っていうと、すごく立派で、何でも完璧にできるイメージがあるけど……」


「その人は?」


「はい」


「完璧ではないと思うよ」


「そうなんですか?」


「苦手なこともあるし、面倒なことを後回しにすることもある」


「ふふっ。なんだか親近感が湧きますね」


「そう?」


「はい。ちょっと安心しました」


ルシアは花に水をやりながら続ける。


「それに、優しい方だったらいいな」


「優しいと思うよ」


「カイルさん、ずいぶん詳しいんですね」


「……噂で聞いただけだよ」


「本当ですか?」


「本当」


カイルは平然と答える。


ルシアは疑うことなく、また花に視線を戻した。


「じゃあ、第二王子殿下って、意外とカイルさんに似てるのかもしれないですね」


その言葉に、カイルは少しだけ目を丸くした。


「僕に?」


「はい。静かな場所が好きで、読書が好きで、のんびりしてて」


「……なるほど」


「もし会ったら、カイルさんの友達だって言ってみようかな」


「それは……やめたほうがいいかも」


「どうして?」


「驚かれると思うから」


「そうですね」


ルシアは素直に頷いた。


そして、何気なく笑う。


「でも、いつかお話ししてみたいです。第二王子殿下と」


カイルはその横顔を見つめる。


「……きっと、話せるよ」


「本当ですか?」


「うん」


「じゃあ、その時はカイルもさん一緒にいてくださいね」


「……もちろん」


ルシアは知らない。


今、目の前で「第二王子殿下」の話をしている相手が、その本人だということを。


そしてカイルも、今はまだ――


この穏やかな時間を、もう少しだけ秘密にしていたかった。

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