↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/84

楽しみ

それから、ルシアが中庭へ来る回数は少しずつ増えていった。


仕事が終わったあとに立ち寄る日もあれば、昼休みに少しだけ顔を出す日もある。


「カイルさん、今日は何を読んでるんですか?」


「歴史の本だよ」


「難しそう……」


ルシアは隣から本を覗き込む。


「私、歴史ってあんまり得意じゃないんです」


「そう?」


「覚えることが多くて」


「じゃあ、僕が覚えやすいところから教えようか」


「本当ですか?」


ルシアは嬉しそうに身を乗り出した。


カイルは本を開いたまま、簡単なところから説明していく。


ルシアは真剣に聞いていたが、しばらくすると小さくあくびをした。


「……眠い?」


「ちょっとだけです」


「仕事、大変だった?」


「今日は掃除する場所が多かったんです」


「それなら、少し休んでいけばいいよ」


「でも、カイルさんのお仕事は?」


「僕はここにいるだけだから」


「庭師なのに?」


「……今日は休憩中」


カイルが穏やかに答えると、ルシアはくすっと笑った。


「カイルさんって、のんびりしてますね」


「よく言われるよ」


二人で笑う。


そのとき、城の鐘が鳴った。


ルシアが慌てて立ち上がる。


「いけない、次の仕事の時間です!」


「急がなくていいよ」


「でも行かないと!」


ルシアは駆け出しかけて、ふと振り返った。


「また来ますね!」


「うん。待ってる」


「約束ですよ!」


笑顔を残して、ルシアは城へ戻っていった。


一人になったカイルは、木の下で本を開く。


けれど、今日はなかなかページをめくる気になれなかった。


「……待ってる、か」


自分で口にした言葉を思い返して、カイルは小さく笑った。


ただの庭師として過ごしているはずの中庭。


そこへルシアが来ることが、いつの間にか楽しみになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。