庭師
それから数日。
ルシアは仕事の合間に、中庭へ立ち寄るのがすっかり習慣になっていた。
今日も木の下にはカイルがいる。
「カイルさん、こんにちは!」
「こんにちは、ルシア」
カイルは本を閉じて、いつものように穏やかに笑った。
ルシアは隣に座る。
「ここに来ると落ち着きます」
「それならよかった」
「カイルさんは、いつもここで本を読んでますけど……」
ルシアは少し首を傾げた。
「普段は何のお仕事をしてるんですか?」
カイルは一瞬、言葉を止めた。
本当のことを話すつもりはなかった。
第二王子だと知られれば、今までのように気軽に話してもらえなくなる。
だから――。
「僕は、庭師だよ」
「庭師さん?」
「うん」
ルシアは中庭を見回した。
「だから、ここにいることが多いんですね!」
「そういうこと」
「なるほど……!」
ルシアは納得したように頷く。
「じゃあ、カイルさんがこの中庭をきれいにしてるんですね」
「まあ……そうだね」
少しだけ曖昧な返事をするカイル。
けれどルシアは気にしなかった。
「すごいです。私、この中庭大好きです」
「ありがとう」
「これからもよろしくお願いしますね、庭師さん」
そう言って笑うルシアに、カイルも小さく笑った。
「こちらこそ」
その日から、ルシアの中でカイルは――
静かな中庭で本を読んでいる、優しい庭師になった。
そしてカイルにとっては、正体を知らないまま接してくれるルシアとの時間が、少しずつ大切なものになっていった。




