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特別な場所

翌日。


ルシアは朝から城の仕事に追われていた。


新しく働き始めたばかりなので、覚えることがたくさんある。


食事の準備を手伝い、廊下を掃除し、使用人たちから次の仕事を教えてもらう。


気づけば、昼を少し過ぎていた。


「ふぅ……」


一通りの仕事を終えたルシアは、廊下の窓から外を眺めた。


昨日の中庭が目に入る。


「……行ってみようかな」


昨日出会ったカイルのことが、少し気になっていた。


本を読んでいた、あの穏やかな青年。


また会えるだろうか。


そんなことを考えながら、ルシアは中庭へ向かった。


扉を開ける。


昨日と同じように、風が花を揺らしていた。

そして――。


「あ」


木の下に、カイルがいた。


昨日と同じ場所で、本を読んでいる。


ルシアの顔がぱっと明るくなる。


「カイルさん!」


呼ばれて、カイルが顔を上げた。


「ルシア」


「本当にいました!」


「うん。昨日も言ったけど、たぶんいると思うって」


「でも、会えたら嬉しいなって思ってました」


ルシアはそう言って、カイルのそばまで歩いていく。


カイルは本を閉じた。


「今日は猫は?」


「今日は連れてません」


「そう」


「今日は……」


ルシアは少し考えてから、笑った。


「カイルさんとお話しに来ました」


カイルは一瞬だけ目を瞬かせる。


それから、木のそばを指差した。


「じゃあ、座る?」


「いいんですか?」


「もちろん」


ルシアは嬉しそうに頷き、カイルの隣に腰を下ろした。


二人の間を、柔らかな風が通り抜けていく。


まだ知り合ったばかり。


それでも、この場所だけは――。


昨日より少しだけ、二人にとって近い場所になっていた。

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