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昼下がり

昼下がりの中庭。


誰も来ない静かな場所で、カイルはいつものように木の根元に背を預け、本を読んでいた。


そこへ、仕事を終えたルシアがそっと入ってくる。


「カイルさん、またここにいたんですか?」


「うん。ここ、静かだから」


「庭師なのに、全然庭仕事してないですよね」


ルシアが笑うと、カイルは本から顔を上げて、少しだけ首を傾げた。


「ちゃんと庭は綺麗だから、問題ないよ」


「それ、カイルさんがやってるんじゃないでしょ?」


「……そうとも言うね」


「ふふっ」


ルシアは近くの木陰に腰を下ろした。


「今日は疲れましたぁ……」


「忙しかった?」


「はい。朝からずっと走り回ってました」


「それなら、少し休んだほうがいいよ」


「でも、まだ仕事が残ってます」


「じゃあ、ここにいる間だけ休もう」


「カイルさんはいつもそう言いますね」


「休むのは大切だから」


「カイルさんって、なんだかおじいちゃんみたいですね」


「そうかな?」


「はい。のんびりしてるし」


カイルは少し考えてから、本を閉じた。


「ルシアも、もう少しのんびりすればいいのに」


「私は侍女だから、カイルさんみたいにはいかないです」


「僕だって庭師だから、仕事はあるよ」


「絶対嘘です」


「……ばれた?」


ルシアは声を上げて笑った。


カイルもつられるように、小さく笑う。


そんな何気ない時間が、二人にとってはいつの間にか大切なものになっていた。


身分も知らない。


互いの過去も知らない。


ただ、この中庭では――


庭師のカイルと侍女のルシア。

それだけでいられた。

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