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消える朝
翌朝。
城がまだ静かな時間に、ルシアは部屋を出た。
必要なものだけを小さな荷物にまとめてある。
誰にも気づかれないように、廊下を進む。
一度だけ、中庭の前で足を止めた。
いつもカイルと話した場所。
一緒に笑った場所。
何でもない時間が、ルシアにとって大切なものになった場所。
「……さようなら」 誰もいない中庭に、小さく告げる。
それからルシアは振り返らず、使用人用の出入口へ向かった。
城の外へ出る。
朝の空気が、少し冷たかった。
ルシアは一度だけ城を振り返った。
そこには、たくさんの思い出がある。
カイルとの時間も。
楽しかった日々も。
全部、大切だった。
だからこそ――
自分が離れることで、カイルが少しでも苦しまなくなるなら。
そう思いながら、ルシアは城を離れていった。




