打ち明ける
カイルはしばらく黙っていた。
夕暮れの中庭には、風に揺れる葉の音だけが響いている。
やがて、カイルがゆっくりと口を開いた。
「……父上から、話があったんだ」
「王様から?」
「うん」
カイルは少し迷ってから、ルシアを見る。
「隣国の王族と、僕の婚約を考えているらしい」
「……婚約」
ルシアの声が小さくなる。
カイルは静かに頷いた。
「まだ決まったわけじゃないよ。父上から話を聞いただけなんだ」
「……」
「隣国との政治的な関わりを強くするための話らしい」
ルシアは何も言わず、カイルの言葉を聞いていた。
「だから、簡単に断れるような話でもないみたいで……」
カイルは視線を落とす。
「ここ数日、そのことばかり考えてた」
「……だから、いつも一人で考え込んでいたんですね」
「うん」
カイルは小さく頷いた。
「まだ何も決まっていないのに、ルシアに話して不安にさせるのも嫌だった」
「……」
「でも、黙っているのも違う気がして」
ルシアは少しだけカイルのほうへ近づいた。
「前に、二人で考えるって言いましたよね」
カイルが顔を上げる。
「はい。私、あの言葉……嬉しかったんです」
ルシアは穏やかに笑った。
「だから、カイル様が一人で悩んでいるなら……私にも一緒に悩ませてください」
カイルはしばらくルシアを見つめていた。
そして、ふっと表情を緩める。
「……うん」
「まだ、どうなるか分からないんですよね」
「うん。何も決まってない」
「だったら、決まるまで一緒に考えましょう」
その言葉に、カイルは静かに頷いた。
「ありがとう、ルシア」
「はい」
二人の間にあった重たい空気が、少しだけ和らいだ。
けれど――。
隣国との婚約の話は、まだ始まったばかりだった。




