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階段の上の場所

その日の仕事が一段落した夕方。


ルシアが最後の書類を片づけていると、カイルが声をかけた。


「ルシア」


「はい?」


「少し、付き合ってくれる?」


「どこへですか?」


「前に行ったところ」


それだけで、ルシアにはわかった。


「……あの場所ですか?」


「うん」


二人で城の階段を上っていく。


一番上まで着くと、目の前に城下町が広がった。


夕暮れの光に照らされた町は、少しずつ明かりが灯り始めている。


「わぁ……」


ルシアが手すりのそばへ歩いていく。


「やっぱり綺麗ですね」


「うん」


カイルは隣に立った。


しばらく二人で町を眺める。


「ここに来るの、久しぶりですね」


「そうだね」


「前に来たときは……」


ルシアが少しだけ笑う。


「まだ、カイル様とこんなふうに一緒にいられるなんて思ってませんでした」


「僕も」


「そうなんですか?」


「うん」


カイルは町を眺めたまま答える。


「今は、こうしてルシアと一緒に来られるのが嬉しいよ」


ルシアは少し照れたように笑った。


「……私も嬉しいです」


風が吹いて、ルシアの髪が揺れる。


カイルがそっと手を伸ばして、乱れた髪を耳の横へ戻した。


「風、少し強いね」


「ありがとうございます」


ルシアはそのままカイルの隣に立っている。


以前なら少し遠慮していた距離も、今は自然と近い。


肩が触れそうなほどの距離で、二人は並んで町を眺めていた。


「カイル様」


「ん?」


「またここに来たいです」


「うん。いつでも来よう」


「仕事が忙しくても?」


「忙しいときほど、来ようか」


「ふふ……それじゃ、カイル様のお仕事が進まなくなりますよ」


「それは困るね」


二人で笑う。


やがてルシアが、そっとカイルの袖をつまんだ。

「……もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」


「もちろん」


カイルは微笑んで、ルシアの隣にいる。


夕暮れの城下町を眺めながら過ごす時間は、二人だけの静かな時間になっていた。

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