嫉妬
午後の廊下で、ルシアは侍女仲間たちと話をしていた。
「この前のお仕事、大変でしたね」
「そうなんです。でも、みんなが手伝ってくれたので助かりました」
そこへ、同僚の青年がやってくる。
「ルシア、この前の書類できたよ」
「ありがとうございます」
「それにしても、あの書類すごい量だったね」
「本当に大変でした」
二人は顔を見合わせて笑った。
その様子を、少し離れたところからカイルが偶然見ていた。
楽しそうだな。
そう思いながら眺めていると、青年が言った。
「そういえば、ルシア。今度の日曜――」
「ルシア」
カイルが声をかけた。
「カイル様?」
ルシアが振り返る。
「ちょっと来てくれる?」
「はい……?」
ルシアは青年のほうを見る。
「すみません。今、この方とお話をしているところで……」
「うん。わかってる」
カイルはいつもと変わらない穏やかな顔をしている。
「でも、少しだけ付き合って」
「……はい」
ルシアは不思議そうにしながら、カイルについていった。
廊下を歩きながら、ルシアはちらりと隣を見る。
今日のカイル様、なんだか珍しいな。
いつもなら、私が誰かと話していても、そのまま通り過ぎるのに。
けれど、特に理由を尋ねることはなかった。
*
数日後。
また廊下で、ルシアはあの青年と話していた。
「この前の話なんだけど」
「はい?」
青年が笑う。
「今度の日曜――」
「ルシア」
またしても、カイルの声がした。
青年の言葉が止まる。
ルシアも振り返った。
「カイル様?」
「うん」
カイルは二人のところまで歩いてくる。
「ちょっといい?」
「はい」
ルシアは青年に軽く頭を下げて、カイルのところへ行く。
青年はその背中を見送った。
カイルは何食わぬ顔で歩いている。
けれど心の中では――。
またやってしまった。
「今度の日曜」と言われただけなのに。
一度目なら偶然。
二度目は……もう偶然とは言えない。
カイルは自分でも呆れていた。
――僕、こんなに嫉妬深かったっけ。
それでも、ルシアの隣を歩けることに少しだけ満足してしまう。
我ながら情けないと思いながら、カイルは何もなかったような顔をしていた。




