一緒にお茶を飲む
しばらくすると、部屋には紙をめくる音だけが響いていた。
ルシアは目の前の仕事に集中している。
一枚終えるたびに確認し、丁寧に次の書類へ取りかかる。
カイルは自分の仕事を進めながら、ときどきそんなルシアへ目を向けていた。
真剣な表情で仕事をしている。
以前からそうだった。
忙しくなると、周りが見えなくなるくらい仕事に集中する。
カイルはそんなルシアの様子を静かに見守っていた。
やがて、ルシアが最後の書類を確認する。
「……終わりました」
書類をきちんと揃えて、ルシアが顔を上げた。
するとカイルが本を閉じる。
「お疲れさま」
「ありがとうございます」
カイルは立ち上がると、部屋の隅にあるティーセットへ向かった。
「カイル様?」
ルシアが不思議そうに見つめる。
カイルは慣れた手つきでお茶を淹れ、ルシアの前に置いた。
「どうぞ」
「えっ……」
ルシアはカップを見つめる。
「私が淹れます。侍女の仕事なのに……」
「今日はもう十分働いたでしょう?」
「でも、これは私の仕事です」
「うん。でも、今日は僕が淹れたかったから」
カイルはそう言って、自分の分のお茶も用意した。
「一緒に飲もう」
ルシアは少し迷ったあと、カップを両手で包む。
「……ありがとうございます、カイル様」
「うん」
二人でお茶を飲む。
仕事の合間にこうして同じ時間を過ごせることを、カイルは以前より嬉しく感じていた。
そして心の中では、これからもルシアが無理をしてしまわないよう、そばで気づいていようと思っていた。




