↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/84

落ち着く場所

中庭に戻ってきたルシアは、いつもの場所まで歩いていく。


けれど、木の下まで来ると、ふっと息を吐いた。


「……なんだか、久しぶりですね」 


「うん。少し久しぶり」


カイルはそう答えながら、隣の場所を軽く示した。


ルシアが腰を下ろす。


しばらく二人とも何も話さなかった。


風が木の葉を揺らし、静かな音が中庭に広がる。


ルシアは目を閉じて、ゆっくり息を吐いた。


「……ここ、落ち着きます」


「そう?」


「はい。最近ずっと忙しかったので」


「知ってる」


「え?」


「廊下ですれ違うたび、急いでたから」


ルシアは少し驚いたようにカイルを見る。


「見てたんですか?」


「うん。何度か」


カイルはいつもの穏やかな調子で答えた。


「声をかけようかなって思ったけど、忙しそうだったからやめた」


「……すみません」


「だから、謝らなくていいって」


カイルは小さく笑う。


「ただ、少し気になってた」


その言葉に、ルシアは黙った。


忙しさの中で、中庭へ来られないことを気にしていたのは自分だけだと思っていた。


けれど、カイルも同じように、この場所で待っていたのだ。


「……私も」


「うん?」


「来たいとは、ずっと思ってました」


ルシアは少し照れながら続ける。


「でも仕事が終わると、もう動けなくて」


「そっか」


カイルはそれ以上何も言わなかった。


ただ、ルシアの隣で本を開く。


「今日は?」


「今日は、もう少しここにいたいです」


「じゃあ、そうしよう」


ルシアはほっとしたように笑った。


久しぶりの中庭は、以前と何も変わっていない。

それなのに、しばらく来られなかった分だけ、二人にとって少し特別な場所に感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。