忙しい日が続く
それから数日。
ルシアの忙しさは、なかなか落ち着かなかった。
朝から仕事を任され、昼休みもゆっくりできない日が続く。
仕事が終わる頃には、もう中庭へ行く気力が残っていない日もあった。
以前なら、どれだけ忙しくても少しだけ時間を作って、中庭へ向かっていた。
けれど最近は――
「今日は……行けないかな」
そう呟いて、自分の部屋へ戻ってしまう。
自然と、中庭へ行く回数は少しずつ減っていった。
一方、カイルはいつものように中庭の木の下で本を開いていた。
ページをめくる。
けれど、何度目かになると、ふと顔を上げる。
「……今日も来ないか」
寂しい、というほどではない。
そう思おうとしていた。
ルシアが忙しいことも知っている。
無理に来てほしいわけでもない。
それでも、以前なら聞こえていた足音がしないことが、少しだけ気になった。
翌日も。
その翌日も。
ルシアは来なかった。
そして数日ぶりに、ようやく中庭へ続く扉が開いた。
「……カイル様」
聞き慣れた声。
カイルが顔を上げる。
そこには、少し疲れた顔をしながらも笑っているルシアが立っていた。
「久しぶり」
「……すみません。なかなか来られなくて」
「謝らなくていいよ」
カイルは本を閉じる。
「忙しかったんでしょう?」
「はい。でも……今日は少しだけ時間ができたので」
ルシアがゆっくり近づいてくる。
カイルはその様子を見て、ふっと目を細めた。
「じゃあ、今日はここで休もうか」
「……はい」
二人の間に、久しぶりの穏やかな時間が戻ってきた。




