小さな変化
展望室には、穏やかな時間が流れていた。
ルシアは窓の外を眺めながら、街の様子を楽しそうに話している。
カイルはそんなルシアの隣で、静かに耳を傾けていた。
ふと、思う。
以前なら、この場所には一人で来ていた。
誰にも邪魔されず、本を読んで。
それが心地よかった。
けれど今は――
隣にルシアがいる。
そして、それを心地いいと思っている。
「……不思議だな」
「はい?」
「いや、なんでもないよ」
カイルは窓の外へ視線を戻す。
最近、何かが変わった。
中庭へ行くのが楽しみになった。
ルシアに会えると嬉しい。
ルシアが笑っていると、自分まで嬉しくなる。
そして今日。
中庭ではないこの場所に、ルシアを連れてきたいと思った。
自分の好きな場所を、ルシアにも知ってほしかった。
そこまで考えて、カイルは少し驚く。
自分にとって大切だった場所を、誰かと共有したいと思ったことなんて、今までなかった。
「……ルシア」
「はい?」
「今日は来てくれてありがとう」
「私のほうこそ、連れてきてもらえて嬉しいです」
ルシアが笑う。
その笑顔を見て、カイルの胸にふわりと温かいものが広がった。
――もっと一緒にいたい。
その気持ちが、以前よりはっきりしている。
まだ、それを恋だとは考えていない。
けれどカイルはもう気づき始めていた。
自分にとってルシアは、「会えると嬉しい人」から、「そばにいてほしい人」へ変わり始めている。




