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小さな楽しみ
午後。
いつもの中庭で、カイルは木の下に座って本を開いていた。
その隣では、ルシアが今日あったことを話している。
「それで、午前中に食堂のお手伝いもしたんです」
「そうなんだ」
「午後は掃除があって、そのあと書類を届けて……」
いつも通り明るく話している。
けれど、カイルはふと気づいた。
今日は、いつもより声が小さい。
笑ってはいるけれど、少しだけ疲れている。
「ルシア」
「はい?」
「最近、忙しい?」
「……そうですね。少しだけ」
ルシアは笑って答える。
「でも、もう慣れましたから」
カイルはそれ以上聞かなかった。
ただ、ルシアの顔を少し眺める。
「ルシア」
「はい?」
「明日、少し時間ある?」
「明日ですか?」
「うん。中庭じゃないところに行ってみない?」
ルシアの表情がぱっと明るくなる。
「どこに行くんですか?」
「それは明日のお楽しみ」
「教えてくれないんですか?」
「うん」
カイルが穏やかに笑う。
ルシアは少し考えてから、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、楽しみにしてます」
「うん」
その言葉を聞いて、カイルも嬉しくなる。
――明日も、ルシアと会える。
それだけで、明日の予定が少し楽しみになった。




