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猫
次の日。
午後の仕事を終えたルシアは、交換日記を手に中庭へ向かった。
扉を開けると、いつもの木の下にカイルがいる。
「こんにちは、カイル様」
「こんにちは、ルシア」
ルシアが近づこうとした、そのとき――
「にゃあ」
「……あ」
足元を、小さな猫が横切った。
ルシアは目を輝かせる。
「この子、前にも見た猫です」
猫は二人のことなど気にせず、植え込みのそばで立ち止まった。
「今日はこっちに来たね」
カイルが穏やかに言う。
ルシアはしゃがみ込んで、少し離れたところから猫を眺めた。
「おいで……」
猫はしばらくルシアを見つめると、ゆっくり近づいてくる。
「来ました!」
嬉しそうな声に、カイルも笑った。
猫はルシアの足元まで来ると、すりっと足に体を寄せた。
「ふふ……かわいい」
ルシアがそっと撫でる。
その様子を見ていたカイルが、ふと口にした。
「最初に会ったときも、猫を追いかけてここに来たんだよね」
ルシアの手が止まる。
「……そうでしたね」
「覚えてる?」
「もちろんです」
ルシアは猫を撫でながら笑った。
「私がカイル様を……庭師さんだと思っていた頃ですね」
「そうだったね」
「懐かしいです」
カイルも小さく笑う。
猫は二人の間を行ったり来たりしている。
ルシアはその姿を見ながら、少しだけ肩の力を抜いた。
昨日まで感じていた距離も、今はほんの少し忘れられそうだった。




