第13話
第13話
幕開けはお昼の音楽の後の放送だった。
ピンポンパンポン♪
緒方「河井先生、大鳥先生。至急、保健室まで。
繰り返します。河井先生、大鳥先生。
至急、保健室まで来てください。」
ピンポンパンポン♪
緒方先生の穏やかな声が校内に鳴り響き
職員室でご飯を食べていた河井継之助と
大鳥圭介は顔を見合わせ急いでご飯を食べ
保健室へ向かった。
河井「緒方先生がなんの用だろうな。」
大鳥「さぁ。分かりません。」
コンコン、ガラリ。
河井/大鳥「失礼する/します。」
そこで2人が見たものは――
いつもより笑みが深い緒方洪庵――
腕組をして仁王立ちしてる松本良順――
真顔で立っている大村益次郎―――
そして、眉間に皺を寄せつつ笑っている
高松凌雲の4人だった―――
ヒッ!と2人は思わず息をのむ。
緒方「2人とも、そこ(床)にお座りなさい。
――始めますよ。」
松本「先ずはオートディスペンサーが
何故連射しないようになっているか!
連射されたら手が洗えんからだ!」
河井「……確かにな。」
松本「そこ!発言の許可など、しとらんぞ!」
高松「次にオートディスペンサーの
重要性についてですが、汚れた手で触れることなく
石鹸で手を洗えるからです。
汚れを無闇にばら撒かない画期的な
アイテムなのですよ!
河井先生の好奇心だけで壊されては困ります。」
大村「次にオートディスペンサーが壊れてしまった
場合の損害だが不注意の事故とかなら兎も角
今回のような場合は保健委員の予算ではなく
賠償金として購入して頂く。」
緒方「確認しますけど掃除は
どのようにして行いました?」
河井「そんなの決まっておるだろう!
水で濡らしたモップでバーッと!」
この言葉を聞いた保健室のメンバーは
絶句してしまった。
1番先に我に返った高松凌雲が
高松「はぁ。河井先生……バカなんですか?
石鹸はそもそも濡らして泡立てるでしょう?
つまり。濡れたモップで廊下を拭いたりしたら
泡が増えて終わりです。」
緒方「泡が増えた廊下をその後はどうしたんです?」
大鳥「私がお酢を家庭科室から
拝借してかけて消しました。
そのあとは新聞紙で拭いて。」
再び保健室には絶対零度の空気が満ちた。
そして、その空気を切り裂く怒号が鳴り響く。
松本「バカ共がぁっ!!」
高松「呆れてものも言えませんね。」
緒方「ふぅ。大鳥君、もう一度色々
お勉強しましょうね。」
大村「焦っていたのだろうが……悪手だ。」
オロオロする大鳥圭介。
泡が消えたのだから良いだろう?
と言いたげな河井継之助。
緒方「良いですか?まず前提として校舎全体で
"ワックス"塗ってますよね?」
それを聞いた大鳥圭介がはっ!!とした顔をした。
そして、自分がしでかしたことを理解して
頭を抱えてしまった。
高松「ようやく気がつきましたか?
ワックスが溶けてベタベタに貼り付き
滑りやすくなって危険度が増したことを。」
大鳥圭介は土下座して
大鳥「すみませんでしたぁぁ!!」
と謝ったが
河井「酢をバラまいたの俺は関係ないし。」
松本「何を言う!!お前が全ての元凶だろうが!!」
みんなが頷いた為か河井継之助はうっと詰まり
河井「すまんかった。」
とようやく謝ったのであった。
緒方「分かったのなら良いでしょう。」
ようやく、いつもの緒方洪庵の微笑みへと戻った。
少し空気が緩んだかと思われた。
高松「ですが、これだけでは生徒へ
示しがつきません。
ですので放課後に美化委員顧問の
山本容堂先生のところへ行き
手作業で"ワックス剥離"と"ワックスがけ"
してもらいますから。」
松本「それで教頭から減給だけに
してもらうよう交渉してやる。」
大村「まぁ、交渉してみるだけです。」
大鳥「そんな!!……いえ、教頭には
自分で頭下げます。」
高松「小栗上野介先生にも頭下げといた方が
いいですよ?本来ワックスがけは
もう少し後ですから。」
それを聞いた大鳥圭介は再び頭を抱えた。
緒方「では、これで私達からのお説教は終わりです。
河井先生、大鳥先生。
少しのムラなく均一に仕上げて下さいね?」
河井継之助と大鳥圭介は緒方洪庵の
再び笑みが深くなった顔を見て
ヒッ!と息をのんでコクコクと頷くのでした。
保健室を出た2人はお互いに手分けして
謝罪と交渉することにした。
大鳥圭介は小栗上野介へ。
河井継之助は山本容堂へ。
職員室へと戻ってきた大鳥圭介は
生徒会顧問の小栗上野介の元へ行った。
大鳥圭介が事情を説明すると
小栗上野介から冷気が発生させられてるかのごとく
職員室の空気がみるみる凍っていった。
小栗「事情は把握しました。ですが大鳥先生。
非常に残念です。貴方いつから、そんなにバカに?」
大鳥「うっ。……すまない。
ワックスのことは頭からスポッと抜けててな。」
小栗「はぁ。ワックス代等は
請求させていただきます。タダじゃないんですから。
……業者代がかからなくて良かったですね?」
大鳥「うぐっ。」
そんな風に話していると
山本「おぅ。聞いたぜ?自分のクラスの前の
廊下泡まみれにしたらしいな?」
美化委員顧問の山本容堂が近づいてきて
話へ参戦してきた。
大鳥「泡まみれにしたのは河井先生です。
……お酢をかけてしまったのは俺ですが。」
山本「河井の野郎は俺が殴っといたけどよ。
大鳥までアホなことするとは思わなかったな。」
大鳥「ぅぐっ」
山本「掃除道具は貸し出すが人員は出さねぇぞ。
せいぜい、しっかりやるんだな。」
こうして、色んな人にこってり絞られた
河井&大鳥ペアは放課後に
手がカサカサになりつつも
子供達にケガをさせないように
ワックスを剥がし再びワックスを丁寧にかける
という作業をちょこちょこ緒方洪庵や小栗上野介に
見張られつつもやったのであった。




