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第93話 オブジェクト権限

 オブジェクト権限を奪う。そんなことができるかどうかは、実のところわからない。しかし、このまま手をこまねいていれば、王子が死んでしまう。一か八か試してみるべきだ。


 可能性があるとすれば、“プレイヤー”である俺が、ホームオブジェクトに直接触れることだろうか。


 思い起こしてみれば、王子が倒れたあと、傭兵像はまず俺を狙った。戦闘面でいえば、もっとも脅威度が低いはずの俺を狙った理由は何か。玉座を守るうえで、“プレイヤー”は危険度が高いという判断があったとしたら。危険を冒してでも試してみる価値はあるな。


「ルイ、イザベラ、協力してくれ。玉座のところまで行きたい」

「そんな! 危険ですよ」

「矢をかいくぐって王子を運ぶつもりでしたら、難しいかと」


 俺の意見に対して、イザベラは即座に反対、ルイも難色を示した。しかし、二人に協力してもらわなければ、困る。


「いや。王子を救うためではあるが、担いで運ぶのが難しいのはわかってる。そうじゃなくて、あの傭兵像を止められないかと思ってな」


 理由を説明しても、二人は渋い表情だ。横から、アブジンも話に加わる。


「ケントがそう言うってことは、何か考えがあるんだろ? どうするつもりだ」


 ここで、ただなんとなく……では反対されるだけだな。それなりに説得力のある言葉が必要だ。しかし、ホームオブジェクトだのについて説明している時間もないし、理解も及ばないだろう。


 やはり、あの言い訳しかないか。あまり気乗りしないが、背に腹は代えられない。


「ハリム王の守護者は神から授かった能力だと思う。なら、俺が女神から授かった力で打ち消せるかもしれない。確実ではないが、試してみたい」

「なるほど、女神の……」


 誠に遺憾ながら、『女神の力』という言い訳は効果てきめんだった。アブジンは深く頷き、ルイやイザベラでさえも納得を示す。おまけに、ハリム兵たちすら、その言葉に希望を見出しているようだ。


「どうか、『女神の加護』で王子をお救いください」

「あ、ああ。できる限りのことはしよう」


 まさか、ハリムにまで女神(フィクス)信仰が広まったりしないよな?


 安易な言い訳に頼ったことを少し後悔するが、やってしまったことは仕方がない。今は目の前の問題に集中すべきだろう。


 ハリム兵には盾持ちが数人いたので、彼らにも協力してもらって、玉座を目指す。案の定、こちらが近づく動きを見せると、傭兵像は即座に反応した。


「ぐ……」

「盾が破損した! 代われ!」


 刺さると消える不思議な矢は、威力も強力らしい。数度受けると、盾が破損する。


「これでは埒があかないな」

「申し訳ない……」


 盾役の兵がうなだれる。いや、責めたつもりはないんだが。


「私とルイでやりましょう」

「それがいいか。盾を借ります」


 選手交代。今度はイザベラとルイが盾役となって進む。先ほどまでと違うのは盾の大きさだ。ハリム兵は身を隠すほどの大盾で身を固めていたが、イザベラとルイが借りたのは小さな円盾だった。それを両手にひとつずつ装着している。


 イザベラが先頭、やや斜め後方にルイ。二人が矢をガードし、そのあとを俺とアブジンでついていく形だ。


「では、行きます」

「遅れずについてきてくださいね」


 イザベラ、ルイが走る。慌てて、俺もあとを追った。傭兵像が矢を放つ。


「はっ!」


 イザベラがそれを叩きつけるように弾いた。続けて、二射、三射と迫る矢も次々と弾いていく。


 なるほど。正面から防ぐと保たないので、受け流して負担を軽減する作戦か!


「あっ!」

「下がって!」


 それでも、数十と矢を受けると、盾が破損してしまう。その隙を、即座にルイが前に出てカバーした。


 イザベラは盾を放り捨て、アブジンに手を伸ばす。


「盾を」

「はいよ」


 アブジンに持たせていた予備の盾を受け取り、即座にルイのカバーに控える。


 イザベラとルイの見事な連携で矢を捌き、玉座まであとわずかというところまで迫った。だが、すでに盾はボロボロ。あとわずかが遠い。


 届かないか。だが、盾は損耗してしまったので、戻ることもできない。


「く……これ以上は!」

「イザベラ、危ない!」

「きゃ!?」


 破損した盾ではうまく矢を弾くことができずに、中途半端にそれた矢がイザベラの首を掠めた。続く矢はルイが防いだが、ルイの盾も破損してしまう。


「はっ!」


 アブジンが躍り出て、魔剣を振る。凄まじい剣技で矢を切り裂く。しかし、傭兵像の矢を射る速度は凄まじい。徐々にアブジンの剣は追いつかなくなっていく。


 このままではジリ貧だ。玉座まではあと少し……飛びつけば、届かないか?


「ぐ!?」


 アブジンの口からくぐもった声が漏れる。矢を斬りそこねて、傷を負ったようだ。


 もう限界だ。一か八か、やってみるしかない!


「はぁ!」

「ケント様!?」


 全力で跳躍。伸ばした手と玉座との距離が縮まっていく。ふと傭兵像のほうを見ると、機敏に俺に反応して矢を射る構えに入っていた。


 こ、これは間に合わない、か?


「「うおおお!」」


 そこに野太い声が響く。同時に、ドォンと音を立てて、傭兵像が倒れる。傭兵像がこちらへの攻撃にかかりきりになっている間に、ファンガとピエールが傭兵像の足元にロープをかけて、引っ張ったらしい。横倒しになったことで、矢は逸れ、俺の脇を通り過ぎていく。


 そして、俺の手が玉座に届いた。


“他勢力のホームオブジェクトに接触しました”


“権限保有者が存在しません”


“アラヤ一家がハリム王国のホームオブジェクトを奪取しました”


 システム通知が頭に響いた。

悲報、作者、ダントンさんの存在を忘れていた!

いやぁ……想定していた役割、ほとんど王子がやってくれたので存在感が……

現在、修正している余裕がないので、ひとまずこのまま進行します……

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