表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/114

第83話 王都潜入

 数日をかけて、死招きの森の外縁部からハリムの王都キレヒレイを目指す。


 蠢きの巨人作戦で設置したスキルツリーを使えば、移動距離の削減にはなるが、それでもあえて森の外縁部から出発したのはなるべく目立たないためだ。最近では近衛軍の出動はないものの、スキルツリーを見張る者がいないとは限らない。それにスキルツリーには地元住民が集まっているので、そんな中に転移したら騒ぎになること間違いなしだ。


 大人数で移動すると目立つので同行者は護衛のピエールとアブジンだ。以前にも使用した傭兵風装備を身に纏えば、特に怪しまれることなく移動できる。


 はずだったのだが。


「よう、兄弟。良さそうな装備をしてるな。儲かってんだろ? 少しわけてくんねーかな?」

「ピエールさん。やっておしまいなさい」

「はっ」

「ほげぇ!?」


 何度か、このように柄の悪い傭兵たちに絡まれることがあった。もはや傭兵というより山賊のようなものである。まぁ、仕事がないときは野盗として生計を立てるという悪質な傭兵はもともといるようだから、こいつらもその類なのだろうが。


 ちなみに、そういった連中は概ね大した実力はない。ピエールに任せておけば、全員痛めつけたあと適当な場所に捨ててきてくれる。その間、俺とアブジンは休憩タイムだ。まぁ、アブジンは俺の護衛として残ってくれてるんだろうが。


「あんなのが出るようでは、地方の村は地獄だろうな」


 アブジンが不愉快そうに言い捨てる。


 まぁ、実際そうだろう。同業者からも金品を奪おうとする輩だ。抵抗する力を持たない庶民を相手に遠慮するとは思えない。国の目が届かない地方の村は被害はひどいものだろう。


 ハリムには警察のようなものがなく、軍隊が治安維持も担っている。が、今はエステラへの侵略でその多くが出払っている。それをいいことに傭兵が好き勝手しているようだ。ことが発覚する前に逃げてしまえば関係ないということだろう。


 小休止が取れて、少しは疲労が軽減できたといったところでピエールが戻ってきた。


「お待たせしました」

「あいかわらず、手際がいいな」

「まぁ、あの程度でしたら」

「武器を持った傭兵複数相手にあの程度ってこともないと思うがねぇ」


 アブジンと軽く話してから、俺に革袋を差し出してくる。


「とりあえず嵩張らないものだけ持ってきました」

「へぇ。結構持ってたんだな。儲けたな」


 革袋の中身は金である。傭兵を捨てるついでに、頂戴してくるのだ。これではどちらが山賊かわかったものではないが、アブジンもそれを咎めるでもなく喜んでいる。まぁ、こっちから襲うならともかく、仕掛けてきたのは向こうだ。自業自得だろう。


「いや、俺はいいよ。ピエールにはいろいろ動いてもらってるから、それはとっておいてくれ」

「では、ありがたく」


 バナンザがスキルの実を大量購入してくれるので、それを取り扱うアラヤ商会は規模のわりにとんでもない利益を叩き出している。傭兵から巻き上げた金なんて必要ないのだ。なので、ここは普段からよく働いてもらっているピエールに使ってもらうことにしよう。食に興味があるようだし、金が必要になることも多いだろうからな。


 というか、よく考えれば、これまでタダ働きさせてたんだよな。これはピエールだけじゃなくて、ファンガたちも同じだ。村の防衛はまぁ、自分たちの住処を守るためなのでともかく、他国に遠征までして無給というのはどうなんだろうか。流石にちょっとは考えたほうがいい気がしてきたぞ。


 とはいえ、村はほぼ自給自足みたいなものだしな。外とのやり取りはアラヤ商会……というかイセオが一手に引き受けている。必要物資は俺から住人に配る形だ。この状況で金を渡されても困るか。


 まぁ、それは今考えるようなことじゃないか。戦争が終わったらゆっくり考えよう。


 王都が近づいてくると、山賊もどきの傭兵も出なくなった。途中までは街道を進み、王都の市壁が見えてからは道を逸れる。傭兵なら門から入っても咎められることはないと思うが、念のため夜陰に乗じて市壁を飛び越えて潜入する算段だ。もちろん、俺に市壁を越える身体能力はないので、ピエールに担いでもらう。


「本当に兵が少ないんだな」


 特に騒ぎになることもなく、あっさり侵入できてしまった。普通なら哨戒している兵がいると思うんだが、それもない。ところどころに篝火が焚かれているので、兵がいないわけではないのだろうが、まったく手が足りていない。


「まぁ、俺たちが張り切りすぎてしまったからなぁ」


 暗闇からアブジンの声がする。明かりが足りないので細かい表情までは見えないが、苦笑しているような雰囲気だ。


「派手にやったんだって?」

「ああ。バナンザ様が権力を掌握するのに必要だと言うからな」


 まぁ、あの魔剣の力を見たら、逆らおうとは思わんだろうなぁ。バナンザとしては俺からの依頼と権力掌握の一石二鳥を狙ったというわけか。


 だが、ハリムからすると堪ったものではない。国境を破られたのだから、防衛戦力を送る必要がある。主力はいまだエステラだ。いくらかでも戻しておけばよかったのだろうか、侵攻が遅れるの嫌ったんだろうな。そもそも自由都市同盟が攻めてくるとは思っていなかったのだろう。バナンザが手を焼くほど、まとまりのない勢力だから、ハリム王の判断が間違いだとも言い切れない。だが、ノルスルにはアブジンの魔剣があった。その結果が、これだ。


 エステラから兵を引き抜いていては間に合わない。王宮を守る近衛もできれば減らしたくない。その結果、王都の守備兵からもいくらか引き抜いて国境に送ったようだ。その結果、王都の治安も低下しているらしい。ひどいものだな。


 とはいえ、動きやすくなったのはありがたい。明日には作戦決行の予定だ。まずは先に潜入しているルイとイザベラと合流しよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ