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第75話 聖猫様

 ルーマたちを連れて村に戻る。


「ここからどのくらいなのだ?」

「うん? まぁ、じっとしていればすぐにつくから」

「……どういうことだ?」

「まぁすぐわかるさ」


 はてなまーくが浮かぶローニーの手を取る。ルーマはピエールが、他二人も獣人が手をとって帰還魔法を発動。一瞬にして視界が切り替わる。


「は!? え、なんで!? 何が起きた

の!?」


 動揺でローニーの口調が変わっている。これが素なのか?


 ラピードとウェルも反応は似たようなものだ。落ち着かない様子でキョロキョロと周囲を見回している。一方で、ルーマは堂々としたものだ


「ほう、面白いな。どういうカラクリなのだ」

「カラクリというか、魔法ですな」


 激しい戦闘を繰り広げたにもかかわらず、ルーマはピエールに含むところはないようだ。にこやかに話しかけている。ピエールも表面上は丁寧だ。


「ほう、魔法か! 私は魔法には疎いが、こんな便利な魔法もあるのだ」 

「い、いや、普通じゃないよ。ルーマ。こんな魔法、オババ様にもできない」


 ローニーは多少魔法のことを知っているようだ。それだけに驚きが大きかったのかな。転移魔法は、かなりの大魔法らしい。まぁ、そういうイメージはあるな。


 まぁ、残念ながら、帰還魔法はどこにでもワープできるわけじゃない。とはいえ、それをわざわざ知らせる必要はないか。村の仲間ってわけでもないしな。


「ここがアラヤ村だ。すまないが、場所は秘密ってことにさせてくれ」

「う、うん。……じゃなくて、わかった」


 ローニーが取り繕ったように言う。今更な気もするがなぁ。


「ケント、おかえり!」

「お、ピコ。ただいま」


 ピコがダッシュで駆け寄ろうとして、立ち止まった。ローニーたちを見ている。


「誰?」

「あー。ええと、お客さんだ」

「お客さん!」


 危険はないと判断したのか、ニコっと笑ってピコが挨拶する。


「ピコはピコ! ケントの家族だよ! よろしくね!」

「あ、うん。私はローニーだよ。よろしくね」


 ローニーはわざわざしゃがんだ上で挨拶をする。子どもが好きなのか、良い笑顔だ。


「俺はラピード」

「ウェル、だよ。よろしく、ね」

「うん!」


 無口な二人だが、子ども相手に無言を貫くほど無愛想でもないらしく、しっかり挨拶をしている。


「彼らの案内があるので、ピコはリコたちと遊んでおいで」

「わかった!」


 タタタと元気よく走っていくピコを見送っていると、ローニーがおずおず話しかけてきた。


「か、可愛いな。ケントというのはあなただな? 家族と言っていたが」

「ん? ああ」


 普人と獣人だからな。実の親子でないことはわかるか。いや、ハーフとかもあるし、そうでもないのか? まぁ隠すことでもないので、事情を説明してやる。すると、ローニーたちは大きく反応した。


「森の中で一人で……それも猫と一緒に暮らしていたのか!」

「あ、ああ」


 信じられない話だとは思うが、そういうリアクションとも違う。呆れや疑いではなく、彼らの顔に浮かぶのは驚きだ。そのあと、こそこそ三人で話をはじめた。いったい、なんなんだ。


「どうした?」

「あ、いや。その猫について聞きたいことがある。その猫は喋る大猫ではないか?」


 ローニーは窺うような表情だ。猫に心当たりがあるのか。だが、上げられた特徴はノアたちにあてはまらない。


「いや、普通……と言うと語弊があるが、少なくとも大きさは普通の猫とかわらないぞ。それに喋ることもない。こっちの言葉は理解してそうだが」

「そうか」


 と、ローニーたちがまた三人で話し合う。そして、結論が出たのか、猫たちに合わせてほしいと申し出てきた。


「まぁ、別にいいけど」

「感謝する」


 ただ猫に会いたいというには妙な気合いの入りようだ。“大猫”とやらに何かあるようだな。残念だが、人違い……いや、猫違いだとは思うが。


 さて、ここにきた当初は固まって過ごしていた猫たちだが、最近では思い思いに過ごしている。比較的に居場所がわかりやすいのはフランかな。この時間なら、スキルの実をチェックしていることが多い。ちょうどスキルツリー前にいるので、移動せずにすむのも面倒がない。


「おーい、フラン。いるなら、出てきてくれ」

「にぃ」

「ニャ?」

「お、チャトルもいたか」


 眼の前の木に向けて呼びかけると、フランとチャトルが飛び降りてきた。ちょうど一緒にいたみたいだ。


「ピコと一緒にいた猫は四匹で、フランとチャトルはそのうちの二匹だ」

「にぃ」

「ニャ」


 フランとチャトルは俺の紹介に合わせて挨拶するように声を上げる。ローニーたちはそれを緊張した様子で見ていたが、やがて意を決したように前に出た。


「我々はマーリアーニの生き残りです。私はグラフォ族の長の娘ローニー。あなた方は聖猫様の配下でしょうか」


 見慣れない仕草――おそらくは敬礼のようなものをしながら、ローニーが挨拶をした。その背後に立つラピードとウェルも同じような仕草で若干顔を伏せた。


 対するフランとチャトルは顔を見合わせるようにしてから、困惑したようにチャトルが「ニャア?」と鳴いた。


「あの……」

「俺はコイツらの言葉がわかるわけじゃないが、どうも心当たりはなさそうだぞ」

「……そうですか」


 ローニーが肩を落とす。ラピードとウェルも心なしかしょげているように見えた。


「ニャ?」

「ああ、もういいぞ。ありがとう」

「にぃ」


 もういいかと問いたげにしていたので、礼を言っておく。するとフランとチャトルは頷いたあと、スキルツリーには戻らずどこかに去っていった。


「残念ながら、探していた猫とは違ったみたいだな。他の二匹にも会ってみるか」

「一応、頼む」


 ローニーがそういうので、ノア、タイガにも引き合わせることになったが、結果は変わらず。探していた大猫ではなかったようだ。結局、なんだったんだろうな。

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