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第74話 雇われ団長は元騎士

「あのルーマが軽くあしらわれるなんて……」


 長身の女性は、ルーマの戦闘力に信頼をおいていたようだ。そのルーマをピエールが軽くあしらったことに驚き、呆然としている。


 このまま放置していても話が進まないので、こちらから話を促す。


「それで、あなたたちの目的とは?」

「あ、ああ。そうだったな」


 切り替えは早いのか、すぐに真面目な顔で頷く。彼女はローニーと名乗った。残る二人の男の方がラピード、女の方はウェルだ。


「先程も言ったが、私たちがハリムから受けた依頼は森を調査して、危険な化け物を退治して欲しいと言った内容だ」

「それは聞いた。で、その化け物の正体が俺たちだったわけだが、戦わなくていいのか?」

「戦うかどうかはともかく、本来ならば戻って報告せねばならないだろうな。だが、私たちにそのつもりはない」


 ふむ。


「しかし、それでは契約違反になるのではないか? 傭兵の誇りとやらはどうなる?」


 ルーマは何か美学のようなものを持っていたように思う。果たして、納得するだろうか。


 それに、助かりたいがために嘘をついている可能性もある。というか、普通に考えればその可能性が高いだろう。降伏したからと言って、彼女たちを解放する理由がない。


「あなたの懸念はわかる。ルーマは……まぁ、あとで言って聞かせる。大丈夫だ。成り行き上、傭兵をやっているが、本業ではないのでな。誇りだ何だと言っていたのは、形から入るというか、なりきるための文句というか……」


 んん? 傭兵と偽るために、それっぽいことを言ってただけってことか?


「言ってはなんだが、あまり傭兵らしくない言動だったようだが……」

「そ、そのようだな。ルーマは元騎士で、傭兵については詳しくないのだ」


 なるほど。確かに、名乗りを上げたりと、傭兵よりは騎士っぽい行動だったな。だが、騎士にしてはアホっぽかったような気もするが。


「戻ってハリムに報告するようなこともしない。理由は……そうだな。先に見せた方が早いか。今からイアリングを外す。説明に必要なことなので、攻撃しないでくれよ」


 言いながら、ローニーが耳に手を伸ばす。


「え?」

「なに!?」


 イアリングを外した瞬間、ローニーの姿に変化があった。頭にひょっこり犬耳が生えたのだ。俺も驚いたが、ファンガたちの衝撃はそれ以上だったようだ。


「お前、獣人、なのか?」


 信じられない様子でファンガが問いただす。ローニーが頷く。


「ルーマ以外はそうだな」


 その言葉に合わせて、ラピードとウェルもイアリングを外す。するとラピードにはトンガリ耳が、ウェルの方は長い耳が現れた。


「そのイアリングは?」

「これは偽装の魔道具だ。ハリムで活動するために用意した」

「なんで、ハリムに肩入れしてんだよ! あいつらが俺たちに何をしたのか、知らないのか!」

「知っている。だから、肩入れはしていない。報告もしないというわけさ」


 ローニーたちが獣人だとわかって、ファンガたちが次々に質問をぶつけていく。それでようやく彼女たちの事情がわかった。


 ローニー、ラピード、ウェルの三人はハリムやエステラの更に東、豪雪地帯にあった獣人の国マーリアーニの出身らしい。だが、マーリアーニは数年前に魔人族によって滅ぼされてしまった。彼女たちはその生き残りだという。


 彼女たちは祖国奪還のために仲間を集めている。傭兵団として活動しつつ、各地を回り、協力者を募っているようだ。


「ルーマは?」

「雇われ団長だ。私たちも傭兵とはどういうものかわからなかったので、どこかの国で騎士をやっていたというあいつに声をかけたのだ」


 雇われ団長なのか。武力集団を率いるという意味では元騎士の経験は活かせるだろうが、それでも騎士と傭兵では役割も在り方もかなり違う。それで、妙に義侠心の強い傭兵団が出来上がったわけか。


「危険を冒してハリムに来たのも、同胞が虐げられていると聞いたからだ」


 獣人のローニーたちにとって、ハリムは活動しづらい場所だ。正体偽装の道具を使ってまでやってきたのは、理不尽な扱いを受ける同胞を救うためだったらしい。そして、あわよくば仲間に引き込もうとしていたようだ。まぁ、肝心の獣人族はとっくに離散して、一部は難民になり、一部は奴隷商人に売られてしまったあとだったので、スカウトはできなかったようだが。


「それでもせめて行方くらいは掴めないかと情報収集していたところ、今回の依頼が舞い込んできたのだ。ハリム入りしてからまともに仕事をしていないこともあり、そろそろ依頼を受けねば怪しまれると思っていたこともあって引き受けたのだが……まさかその結果、探していた同胞に出会えるとは思ってもみなかった」


 だから、ローニーたちには戦意がなかったのか。ここで敵対してしまえば、本来の目的であるスカウト活動に差し障るからな。それに、彼女たちには獣人を排斥したハリムに義理立てする理由がない。だから、あっさり依頼を反故にしたわけか。


「なるほど。あなたたちの事情はわかった。そういうことなら、降伏を認めるのは構わない。だけど、このまま解放するわけにもいかないな」


 彼女たちがハリムに肩入れするとは思えないが、可能性が皆無というわけではないからな。獣人だからといって、ただちに信頼するわけにもいかない。


 彼女たちはうちの獣人たちとは別の部族だ。普人主体の国家であるハリム王国とエステラ魔法国が争っているように、獣人が獣人を騙そうとしてもおかしくはない。


「……では、私たちはどうなる?」

「そうだなぁ。しばらくは村にとどめおかせてもらおうか。そこで信頼できると判断できれば解放する。もしくは、ハリム王国が倒れたら、かな」


 依頼主が消えれば、俺たちについて報告されることもないだろうから、逃がしても構わないだろう。


「ふむ」


 ローニーがラピード、ウェルに目配せをする。二人が頷くのを見て、ローニーも頷く。


「分かった。それでいい」

「ルーマの意見は聞かなくていいのか?」

「ああ、問題ない。戦いのこと以外はあまり役に立たない男だからな」


 本当に雇われ団長なんだなぁ。そしてあまりにも信頼がない。まぁ、団長の活動目的を忘れるくらいだから、残念ながら当然だとは思うが。


---

ルーマ・ハルツ 種族:普人


クロニクル・オブ・ロードでは在野の英雄キャラとして登場。在野の英雄の中でも能力のランダム幅が大きく、プレイするたびに使用感が異なる。現実となったこの世界での能力はこんな感じ。


戦闘:95 統率:67

知略:19 工作:53

話術:37 商才:19

儀礼:51 直感:64


普人素養限界に迫る戦闘能力を有するので、個人戦ではかなり強い。統率もそこそこで人を率いて戦うこともできる。反面、知略は壊滅的。ゲーム的に言うと複雑な戦略を取ることができない。一方、直感に優れているので、敵の戦略を見抜いて潰すことはできなくはない。


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