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第49話 順調な商業活動と……

 魔剣のデメリットである能力減少。ゲーム時代では一月ごとに能力が合計30前後減少していたらしい。つまり、毎日の減少量は1。それなら毎日スキルの実を食べれば、能力の維持が可能だろうと予想できる。


 というわけで、俺たちはバナンザの商会を通してスキルの実を提供することを約束した。と言っても、実際に働くのはイセオで、それも庭から実をひとつ採って相手方の店に運ぶだけ。子どもにもできる簡単な仕事である。


 バナンザとの会談から七日。そろそろ対策の効果がはっきりと表れる頃だ。


 と考えていたら、当のアブジンが俺たちの拠点を訪ねてきた。


「助かりましたよ、ケント殿! まさか、魔剣の呪いを防ぐ実があるとは」


 アブジンはイケメンフェイスの細マッチョだった。いや、別に細くもないな。長身だからスラっとして見えるだけで、普通にマッチョだわ。


 アブジンは護衛もつけずに一人で訪ねてきたようだ。とりあえず、応接間に通して、俺とレンで対応している。ピエールは屋台に監督に出ているので、代わりにファンガが護衛だ。


 まだまだ荒れ放題の屋敷だが、一応来客の可能性を考えて、応接間だけは整えてある。とはいえ、床と壁の修繕をしただけなので、調度品もなく殺風景なままだ。貴人を招くには不適格な部屋だが、アブジンは気にした様子はなく、機嫌良さそうに笑っている。

 

「その様子では、呪いの影響はもう?」

「ああ。一週間様子を見たが、魂を削る痛みが消えた。あの実を食べている限りは大丈夫だ!」


 ほう。それはまた不思議だな。


 スキルの実は、能力減少効果を打ち消すわけではない。余分なスキルを盾にして、もともとの身体能力などの維持しているだけだ。つまり、スキルの消失という能力減少は起きているはずなのだが。


 実によって習得したスキルはいわば外付け。もともと備わっていたものではないので、削れても痛みはないのかもしれないな。


 まぁ、なんにせよ、魔剣対策が功を奏したというのは朗報だ。


 アブジンが魔剣を手に入れたのは三週間ほど前。そのうち一週間はスキルの実で対策している。減少した能力は15前後ってところだろうか。


 あれ?


 能力減少をこの程度に抑え、今後は魔剣が使い放題。これって、バナンザのヤツが丸儲けした形じゃないか。


 まぁ、同盟相手の戦力が強化されるのは悪いことじゃないか。それに、その状態を維持するには俺たちの協力が必須。ノルスル側から同盟を破棄するのは難しくなったはずだ。そういう意味でも悪くない。


「それは良かった。呪いは消えたわけではありません。必ず毎日一個ずつ食べるようにしてくださいね」

「わかっている。あのような痛みは懲り懲りだからな」


 重複した実を食べてもシステム通知はこないので、おそらく多重取得はできない。今のところ、アブジン用に提供しているのは一種類、裏庭の【焼肉奉行】の実のみだ。なので、複数食べても意味がない。保険として、ときどき他の実も食べさせたほうがいいかもしれないな。


「改めて、礼を言わせてくれ。本当に助かった」

「いえ、気になさらないでください。これは私たちにも利があってのことですから」

「同盟のことなら聞いているよ。しかし、だからといって、それでは俺の気が収まらないのだ。なので、何かあれば気軽に声をかけてくれ」


 義理堅いと言うか、なんと言うか。アブジンは個人的に恩を返したいと考えているようだ。具体的には有事の際には“アラヤ一家”の客将として戦ってくれるつもりらしい。もちろん、彼が自由都市同盟で兵を率いるときには手が借りられないが、それでも守護者と称えられる人物が手を貸してくれるのはありがたい。


 これを言うのが目的だったらしく、言うだけ言うと、アブジンはさっさと帰っていった。それを二人で見送ると、レンが興奮した様子で話しかけてくる。


「アブジンさんが協力してくれるのは助かりますね!」

「ノルスルの将軍みたいなものなんだよな?」

「そうですよ。個人武力もさることながら、防衛指揮がうまい……っていう設定です。まぁ、その辺りはゲームだと統率って能力でまとめられちゃってるんでよくわからないんですけどね。それよりも魔剣ですよ! あれは本当にヤバいんですから。必殺技が発動すると、こちらの兵数がゼロでも敵兵を壊滅に追い込めたりしますからね!」


 マジで?

 それってゲームとしてどうなの?


 まぁ、強力なのは攻撃だけで、防御能力はそのままなので、先制で攻撃を受けると英雄が死んで終わりらしいが。


 現実となった今、その辺りがどうなるかわからない。が、ゲームの兵数回復技が大範囲回復魔法として現実化したレンの例がある以上、何かしら強力な技が使えるだろうとのことだ。ハリム王国と諍いが起きたときには心強い味方になってくれることだろう。


「とはいえ、もう少し人手は欲しいな」

「獣人の身請けは今月中には終わりそうなんですよね?」

「一応な」


 バナンザとの同盟によって、スキルの実はすべて、バナンザ傘下の商会に卸すことになった。卸すというからにはしっかり代金はいただく。もちろん、同盟相手ということでがっつり値引きはするが、【病気耐性】はともかく【肉体強化(弱)】の方は数が出る。おかげで、アラヤ商会の収益は爆増。予約料金を支払うまでもなく、身請けが完了する見込みだ。流石にそれはあんまりなので、身請けにかかった時間に応じて謝礼を払うつもりではあるが。


「だったら、引き続き奴隷を買って、村人にすればいいんじゃないですか?」

「奴隷を村人に、か」


 人を売り買いすることに抵抗がないわけじゃない。だが、手っ取り早く人を集めるには有効な手段だ。


 一応、ノルスルのスラムで移住者を募るという案もあるが、そうなると一定数ごろつきみたいなやつが交じる可能性が高い。村を発展させるためとはいえ、治安を下げる要員を受け入れたくはないので、保留にしてあった。


 その点、奴隷を買って、村人とするのは少しだけ安心できる。購入時に、ある程度人柄を見ることができるし、奴隷から解放することで多少は恩を感じてくれるかもしれない。


 金はいくらあっても不足することはない……とはいえ、村の規模から言えば、膨大な売上を上げているので、使う先も考えなければいけない。忠誠心を期待できる村人を集めるためと考えれば、悪くない使い道か。


「そうだな。そうするか」


 そうと決まれば、ニルスさんのところに顔を出して相談したほうがいいだろう。


 と、そのときだった――


“ハリム王国がエリンシア地方南部を占領しました”


“ハリム王国がエリンシア地方東部を占領しました”


 システム通知がエステラ魔法国の南部と東部の陥落を伝えたのである。


---

各勢力の支配地域は複数の地域にわかれています。全ての支配地域を奪われれば、その勢力は敗北。大陸から姿を消します。

エステラ魔法国の初期支配地域は4つ。約一ヶ月で半数がハリム王国の支配地域になりました。


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