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第46話 “プレイヤー”との会談

 エルフは排他的な種族だ。元女王とはいえ、その名前を知っている者がどれだけいるだろうか。ユーリッド聖樹国と自由都市同盟の間には死招きの森があるため、交流があるとも思えない。


 では、なぜ黒髭親父がレンの本名を知っているのか。“プレイヤー”だから、という可能性が高いよな。たぶん、レンもこの黒髭親父の顔に見覚えがあったからこそ動いたのだろうし。


 しかし、レンはまだ確定的なことは言わず、追撃の手を繰り出した。


「私だけではありませんよ。災厄の代名詞……彼のことはご存知?」


 レンが目配せする。それを受けて、ピエールがニコリと微笑んで黒髭親父に一礼した。状況がわからないだろうに、見事なアドリブ力だ。


 一方で、黒髭親父の変化は劇的だった。はじめは、意味がわからないという怪訝な表情。しかし、次第に理解が広がり、一転して驚きに染まった。


「さ、災厄の復讐者!? な、なぜ、そいつを連れている……!」


 これは確定だな。今のピエールに復讐者と判断される要素はない。ゲームでの呼び名を知る黒髭親父は“プレイヤー”だ。


「ふふふ。まぁ、ここではなんですから、場所を移して話しましょうか」


 レンはあえて答えず、ペースを握るつもりのようだ。「それでいいか」とアイコンタクトされたので、ただ頷く。きっと、何か考えがあるんだろう。俺が下手に喋ると、ボロが出そうなので無言で従う。


 ただ、ピコにその判断は難しかったようだ。キョトンとした顔でレンを見上げている。


「レン、どうしたの? 喋り方、変だよ」

「ええと、ピコさん。今は、大事なところだから」

「変! レン、変になった!」

「ちょ、ピコちゃん! やめてよ。僕だって、たまには女王様ムーブしたいんだよ。せっかくのチャンスなのに」

「良かった。レン、戻った!」


 早くも馬脚を現すことになって、レンがしおしおに萎れる。そのレンに、ピコが安心したように抱きついた。もう滅茶苦茶だよ。


 というか、レン。さっきの演技はただやりたかっただけなのかよ。いや、きっと交渉を有利に進めるためのハッタリという意味もあったのだろうが、本音を聞いてしまった今となっては、何だかなぁという気分になってしまう。


 脱力感を覚えたのは俺だけではないようで、緊張で顔を強張らせていた黒髭親父も少し呆れたような表情を見せている。


 ただまぁ、これはこれで良かったのかもしれない。


「バナンザ様!」


 周囲に護衛を潜ませていたらしく、数人の男が駆け寄ってきた。その彼らにバナンザ――黒髭親父が手を振る。


「あー、よいよい。危険はなさそうだ。この者らと話がしたいので場所を用意してくれ」

「はっ!」


 指示を受けて、護衛の一人が走っていく。


 指示慣れしているな。“プレイヤー”であることから考えて、この街のトップなのだろう。実際、“バナンザ”の名前が出てから、周囲からの注目がすごい。まぁ、半分くらいは見慣れぬエルフ(レン)のせいかもしれないが。


「リーレン殿もそれでよろしいか?」

「はい。それでいいです……」


 意気消沈した様子でレンが答える。そのすぐ背後にピエールが立った。レンの護衛として振る舞うつもりのようだ。で、俺はピコと手を繋いで、その更に後ろにつく。


 どうやらバナンザは俺を“プレイヤー”と認識していないようだ。なので、この場ではあえて話さずにおく。隠し札は多いほうが有利だからな。特に打ち合わせはしていないが、レンもそういうつもりのようだ。ピエールも俺たちの意図を読んで行動してくれている。こういうときは本当に頼もしい。


 バナンザの護衛に案内された先は意外にもすぐ近くだった。おそらくは高級宿なのだろう。その一室を借りているようだ。


 部屋は応接用に用意されているらしい。背の低いテーブルと革張りのソファが配置されている。俺たちは全員だが、バナンザは護衛二人だけを連れて入った。はじめ、俺とピコは遠慮するように言われたが、レンが「二人は知っているので大丈夫です」と言ったので入室を許可された。


 席の配置としては、バナンザの対面にレンと俺が座り、俺の膝の上にピコが座る。ピエールは俺たちの背後で、バナンザ側も護衛はソファの後ろに立った。


「では改めて、私はバナンザ。自由都市同盟の盟主を務めている。察しの通り、“プレイヤー”でもある。元の名は……まぁ、それはいいか。名乗って意味はあるまい」


 さきほどまでのにこやかな笑みを捨て、威圧するようにバナンザが鋭い視線を向けてくる。受け流すように、レンが笑顔を返した。


「リーレンです。知っているでしょうけど、ユーリッド聖樹国の元女王ですよ」


 バナンザは“プレイヤー”なので当然知っている。しかし、護衛二人は知らなかったようで、一瞬だけ驚きが顔に出ていた。それでも、直立不動を崩さなかったのは流石だ。


「彼らについては心配しなくていい。無闇に秘密を漏らすような者らではない」

「わかりました」


 バナンザの言葉にレンが頷く。


「それで、バナンザさんはどういう目的で僕らに接触してきたんですか?」

「それはこちらが聞きたいことだな。“アラヤ商会”などと名乗ったのだから当然、“プレイヤー”からの接触を待っていたのだろう?」


 おお、ちゃんと“アラヤ商会”の名前はお偉いさんのところまで届いていたんだな。で、バナンザは、それをシステム通知の“アラヤ一家”と結びつけて探っていたというところか。


 お互い接触の意図があって近づいたということが今のやり取りで確認できた。ここからが勝負どころだ。できれば同盟を結びたいところだが……。


「そうですね。では、バナンザさんが気になっている“アラヤ一家”のことについて説明しましょうか。その前に――先輩」


 お、ここで情報を明かすのか。


---

バナンザ。

適当に語感で決めたら、ドンキーコングと被ってしまった。

なんか聞き覚えがあると思ったら……

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