オルタナティブ
翌日学校に行くと、教室は喧騒に包まれていた。学校が始まってから一週間ちょっとだと言うのに、クラスではもうグループができている。俺?俺は当然はぐれメタルの一匹狼だ。幸いにして席は角にあるので特に不自由していない。
賢明な読者の方には疑問に思ってくれた人もいるだろう。異世界で二週間講習を受けていたならこちらでは1ヶ月は立ってるんじゃねえの?と。
疑問にお答えすると、あの世界はこちらの世界の大体6倍くらいで時間が進んでいるらしい。一日経つとあちらでは6日経っていることになるな。と言うことであちらで二週間の講習を受けてもこちらでは一週間しか経っていないんだ。
そんなこんなでいつも通りスマホゲーに興じることにする。今日は、シャドウが生まれるカードゲームでもするかな。
「ちょっといい?」
話しかけられた。俺に話しかけてくる物好きなんて教師くらいのものだが、残念ながらクラスメイトみたいだ。
「何のご用ですか?」
「昨日私たちを助けてくれたのはアンタよね?」
「そんなことしてないが。人違いじゃないか?」
「っ!間違いないわよ!リプレイ機能で確認もしたから!」
明らかに友好的ではない俺の態度に面食らったようだが、それでも話を続けてきた。強いなコイツ。ちなみに異世界での出来事は全て録画されていてあとから確認できる。迂闊に悪事も働けないな、困った困った。
つか確信があるなら最初からそう言えよ。白々しい嘘ついちまったじゃないか。
「ならそうなんじゃないか?」
「っ!アンタねえ!」
「授業の時間ですよー!自分の席に戻ってくださーい!」
「ほら、自分の席に戻ったらどうだ?」
「っ!」
最後までこちらを苦々しげに睨みつけながら去っていった。やーいばーかばーか。タイムアップで俺の勝ちだな。
とは言ったものの、休み時間には当然逃げられないからな。どうしようか。クラスの陽キャ女子が話しかけてくる時点で嫌な予感しかしないんだよな。
それから俺は休み時間になるたびにトイレに逃げたり廊下を逃げたりしていた。
そして、昼休み。
「逃がさないわよ、休み時間の度にちょこまかちょこまか逃げ折って、観念しろ!」
陽キャ女子の軍勢に周りを包囲されていた。四面楚歌だ。
おいこれいじめだろ。誰か助けろよ。無視も共犯なんだぞ知らないのか。
「ほら、弁当持ってついてきなさい!」
「あはは、ごめんねマナちゃん強引なとこあるから」
「ちなみに逃げたらもっと追いかけ回されるから逃げない方がいいよ」
連行された場所は陽キャ専用スペースであるラウンジだった。
「それで何で俺は連れてこられたんだ?」
これって任意ですよね?任意なら帰りたいんだが。別に彼氏のバッグを持ってるわけでもないので拘束される謂れはないはずだ。
「アンタが逃げるからでしょ!」
「マナちゃん抑えて抑えて」
ガルルと狂犬みたいな唸り声をあげている彼女をもう1人の人が押さえつけている。
「フー、フー、まずは…昨日は助けてくれて、ありがとうございました」
彼女がそう言ったのに合わせて、残りの女子達も一斉に頭を下げる。
「昨日も言ったが、別にそこまで感謝する必要ないぞ。俺が手を貸さなくても撤退くらいできたろうし」
「でも、そしたらウチらの1人は死んでたはずだから。こうして4人揃ってるのも、柊木君のおかげだよ。だからほんと感謝してる」
ボブヘアの子が言う。ちなみに俺は彼女達の名前が分からんので区別がつかない。基本寝てるかゲームしてるからな。人の名前を覚える暇がない。
「それで、もう一つ話っていうかお願いがあって…私たちと、パーティを組んでくれないかな!」
「何で俺なんだ?別に俺以外にもいっぱいいるだろ?それこそクラスにもレベル5くらいならいるはずだ」
問題はそこだな。俺より強いやつなんてこの学年にはいくらでもいる。昨日ギルドで聞いたように、レベル7とか8のやつらがいるらしいし、俺はレベル3だぞ。
「えーっと、実はね」
そこから彼女達が語ってくれた話によると、どうやら彼女達はクラスの男子2人(俺の予想によると陽キャ)と共に街の外に出たらしい。彼らはそこそこレベルも上げていたらしく、案内役としては十分だと考えたんだとか。
ただモンスターを深追いした彼らと森の中で逸れてしまい、探しても会えなかったのでなんとか4人だけで街に戻ろうとして近くまできたが、そこで運悪くゴブリンの集団と会敵し、そこからは俺も知っての通りだ。
「しかも今日あったらアイツらなんて言ったと思う?何で何も言わずに先に戻ったんだよってさ。マジ信じらんない!」
今回はさっきまでたしなめてた彼女も嗜めず、むしろ賛同していた。俺からしたらゲーム感覚だけど、一応異世界だからなあ。命の危険にさらされたと考えたら当然の反応か。
「で、結局何で俺なんだ?」
「元々この4人でやろうって話になっててさ、上限6人じゃん?後2人誰にするかってなって、頼れる人がいいなって。逃げた2人みたいな奴らじゃなくてね。ただアイツら以外のやつってなるとみんなもう仲間がいてさ。で、アンタいつもボッチだからちょうどいいと思って!」
グサっ!俺の心に何気ない言葉が刺さった。下手なナイフより切れ味あるぞこれ。意図した悪口より悪口と思ってない悪口が一番刺さるんだよなあ。本心から言ってるって分かるから。
実際仲間が増えるメリットは大きい。前衛がいれば戦いやすくなるしな。
「ちなみに君らレベルはいくつなんだ?」
「全員2だよー」
ふむ、俺は昨日で4に上がったが、正直ここでのレベル差なんて誤差。
「とりあえず一回だけお試しでやってみない?今日の結果で決めるって感じでさ」
こちらとしても異論なかったので、頷かざるを得なかった。




