ゼロから始める異世界生活
訓練は、地獄の様な日々だった。
学校へ行き、帰ってくると同時にフィロソフィアへ行き、教官に扱かれる。周りの奴らが楽しそうにゴブリンを倒したーだのなんだの会話してる中で俺だけ何故かギルドから一歩も出ていないおかしさ。
なんどめげそうになったことか。
しかし俺はめげなかった。フィロソフィアは本当の異世界だから痛みも辛さも再現されている。だからと言って、ただ辛いからと言ってこの俺が諦めるのか?
俺はこれまで数々のゲームをやってきた。
例えばそこらへんのクソガキの投げる球を打つ野球ゲーム。そいつが投げる150キロは超えてるであろう文字通り消える魔球を、50球中40球打たされたり。
例えば、絶対に攻撃が当たらない敵を相手に30分間耐久をしたり。
例えば本来ならオンラインで協力して4人で倒す想定なのにオンライン機能をつけずに配信したせいで最強と化したボスを1人で六時間かけて討伐したり。
俺は数々の敵を倒してきた。
途中で投げ出しそうになっても、どれだけ辛かろうとも、最後に笑うのは俺だったんだ。
その俺が、どこぞの鬼教官に扱かれただけで諦めるか?そんなわけがないだろう。
そして二週間後。
「見違えたぞウジ虫。ここに初めてきた時クソ虫であったが、今では獲物を狙うオオカミのようだ。よくぞ二週間耐えたな、ヒイラギシュウヤ。今のお前ならゴブリン程度難なく倒せるだろう」
目の前にはいつものムチを持っていない教官が立っていた。ちなみにあのムチは特別製らしく、痛みは与えるのにHPはほとんど減らないらしい。
「サーイエッサー!」
「お前はこの困難な講習を耐え抜き、一人前の冒険者になったのだ!誇っていいぞ!」
「サーイエッサー!」
「よし、これは私からの卒業祝いだ」
そう言って、最初に会った日と同じようにこちらに杖を放り投げてきた。
「教官、これはなんですか?」
「国からの金だけじゃ、最初はろくな装備も買えんからな、私からの卒業祝いだ」
「そんな!?そこまでしていただくのは!」
「駆け出しの冒険者は金がいるぞ、黙って受け取っておけ」
「…ありがとう、ございます」
「なんだ、うれしくないのか?」
「嬉しいに決まってますよ!でも、これで終わりだと思うと…」
「なに、講習が終わったからと言って今生の別れになる訳でもあるまい。…稽古をつけて欲しかったらいつでもここに来い。相手してやる」
「はい!お世話になりました!」
「ああ。…忘れるところだった。卒業祝いはそれだけじゃない。これだ」
そう言って教官が渡してきたのは、スキルオーブだった。
「きょ、教官!こんな高価なもの受け取れませんよ!」
「そこまでじゃないぞ。さっきも言ったが、遠慮を覚えるのは強くなってからにしろ。厚意には甘えるものだぞ」
「わかり、ました。ならありがたくいただきます」
「ああ、使ってみろ」
手に持って、スキルオーブの使用を念じる。
"スキルオーブを使用しますか?"
当然イエスだ。
回答すると同時に目の前が光で覆われた。
"スキル「雷魔法」を習得しました"
「どうやら、無事習得できたみたいだな。魔法は専門外だが、何かあったら頼りにしてくれていい。基本は訓練場にいるからな」
「はい!何から何までありがとうございました!教官!」
「ではな。あと、次からは教官ではなくアンジェと呼べ」
「はい、アンジェさん!」




