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りんくすたーと!

 もうこんな時間か。

 時計の短針はⅣを指している。ていうかローマ数字の時計めちゃくちゃ見にくいな。誰が買ったんだこんなの、まあ俺なんだが。ほんとセンスないと思う。

 ローマ数字とドイツ語が好きだった中2の頃に買ったものを今でも愛用しているが、流石に買い替えるべきかもしれない。たまに9と11区別つかなくなるしな。

 俺がこんな遅くまで起きている理由は二つある。一つはハマっているゲームのピークタイムだからだ。今時スマホゲームならともかく、PCゲーは人口がメチャクチャ少ない。だから深夜にやらないとマッチングすらしないのだ。

 俺がやっているゲーム、パロラントは一人一人がキャラクターを選び5v5で戦うシューティングゲームだ。銃を撃ち合って戦い、その中でもキャラごとに設定されたスキルとかで戦略がある面白いゲームだ。悪いところはマッチングがとてつもなく遅いくらい。

 ゲームのプレイ人口が少ないことには原因がある。異世界フィロソフィアの存在だ。

 数十年前、政府は異世界の存在を発表した。俺は生まれてなかったから知らないが、当時は大騒ぎだったらしい。ポーターの破壊運動が起こったり、デモが起こったり。

 ポーターというのは、異世界への転移装置だ。と言っても転移するのは精神であって肉体はそのままなんだが。

 それでもどこからでも異世界へ行ける。しかもフィロソフィアは剣と魔法でモンスターと戦う様な、まるでゲームの様な異世界らしいから、熱中するやつが大勢出た。

 しかも向こうの通貨をこっちのものに両替することもできるとあってのめり込む奴らが社会現象になったほどだ。

 そんなポーターは高校生になった時に配られる。

 同じ中学で就職した奴はもう貰ったらしく、案の定のめり込んでいるらしい。

 向こうで強くなれば大金持ちだし当然なのかもしれないが。

 とまあ、色々語ったが俺も当然の様に楽しみにしている。だって異世界だぞ、楽しみにしないわけがない。

 そして入学式は明日に控えている。ん?明日?もう日付を跨いでいる。と言うことは今日?


 そして翌日、仮眠をII時間しかとれなかった俺は絶賛絶不調だった。ねむい。おうちかえりたい。

 入学式は、一人一人が名前を呼ばれている段階でもう無理だったのに、お偉いさんの話とか耐えられるわけがない。途中から記憶がないが、いつのまにか教室の自分の席に座っていた。

 オートパイロット状態からようやく脱した俺は、とりあえず睡眠することに決めた。


 俺が次に目を覚ました時には、もうすでに教壇に人がいた。あれは教師だろうか。なんか喋っているが何も頭に入ってこない。


 ん?ポーター!?一気に頭が覚醒した。

 さっきまでの気だるさが嘘の様に心が晴れやかな希望に包まれた。


「それでは、出席番号順に取りに来てください」


 長いものに巻かれて周りの奴らに従ってとりに行く。それはいわゆるヘッドギアのような見た目をしていて、ヘルメットをでかくしたようなものだった。いままでよく見てきた奴だ。


 俺は歓喜に包まれ、希望に胸を膨らませながら、襲ってきた睡魔に身を委ねた。

 目を覚ましたのは、帰りのホームルームの時だった。


  気づいたら家にいた。もはやオートパイロットどころではない気がするが、それはそれとして今俺の手にはヘッドギア型の端末、ポーターが握られている。

 きっと注意事項とか言われてたんだろうが俺は説明書は見ない派なのでどうでもいい。

 というわけで早速。…どうすればいいんだ?


 その後試行錯誤したのち、インターネットを調べると言うとても簡単な手段に気づいて事なきを得た。というか初期状態だとスイッチに蓋がされてると言う謎仕様が悪い気がする。

 視界をヘッドギアが覆い、ベッドに寝転がり、スイッチを押す。その瞬間、異世界への扉が開かれた。


 目を開けると、そこは草原だった。

 視界の端に文字が表示される。なになに?


"基本動作についてお伝えします"


こう言うのってチュートリアル専用のキャラがいたりするんじゃないのか。

 まあゲームじゃなく異世界だから違って当然なんだろうが。


 えーと、右手の人差し指と中指を揃えて上から下に振ってください?

 言われた通りにすると、目の前になんか出てきた。


"一番上をクリックしてください"


 表示される内容が変わった。書いてある内容を見るにこれは


"それはあなたのステータスボードです。あなたのこの世界での能力を表します"


 やはりか。ゲームで見慣れているものだからか、すぐに分かった。


"名前を決めてください。異世界フィロソフィアは、現実と隔絶されています。名前を同じにする必要はありません"


 ますますゲームみたいだな。名前、名前か。


"後からの変更が可能です"


 ならこっちのに揃えとくか。


"ステータスについて説明します。HPは、ヒットポイント。怪我や負傷によって減少します。この値がゼロになると同時に死亡となり、この世界を訪れることは不可能となります"


 知っていた情報だ。ゲーム風に言うならこの世界はハードコア。この世界で一度でも死んでしまうと二度と訪れることは叶わない。現実の命を奪われないだけマシなんだろうけどな。


"MPは、魔法やスキルの使用、アイテムの使用などによって減少します。MPが0になっても即座に戦闘不能になることはありませんが、残量には注意を払うべきでしょう"


 なんかめんどくさくなってきたな。


「スキップ」


"説明をスキップしますか?"


「はい」


"了解しました。もしも行く宛がないのであれば、ギルドを訪ねることをお勧めします。それでは、よき異世界ライフを"


 そう言って謎の文字は消えた。

 

 ちなみに俺のステータスはこんな感じだ。


ステータス


name ヒイラギ シュウヤ


job 魔法使い


level 1


hp 8/8


mp 12/12


atk 5


def 3


Matk 8


Mdef 6


スキル


 わざわざ説明する必要もないだろうと思うので詳細は省略する。

 それにしても物理方面が貧弱だな。そして最初だからかスキルが何もない。魔法もスキルに含まれるので、魔法使いの俺は魔法使えないに転職ということだな。

 …どうすりゃいいんだこれ。


 とりあえず、アドバイスに従ってギルドに向かうことにした。

 草原から街が見えていたので、そのまま街に入った。守衛が2人いたが、俺を見るなり何故か敬礼された。

 ギルドへの道を尋ねて、礼を言いギルドへ向かう。


 この世界は元の世界より文明が発展していないのか、建物は木造のもので、高くても三階建てで、平屋がほとんどだった。


 ギルドは昼間だからかあまり人がいなかった。受付らしき場所へ向かうと、向こうから話しかけられた。


「異世界人の方ですよね?」


「はい、そうですけど。なんでわかったんですか?」


 聞くと、異世界人のデフォルトの服装は全員同じらしい。麻の上下を身につけているからすぐに分かるんだとか。


「異世界人の方には、講習を受けることが推奨されています。お受けになられますか?」


 講習、講習か。一介の高校生に過ぎない俺がモンスターと戦って勝てるだろうか。…無理だな。


「ぜひ、受けさせてください」


「分かりました、いまお時間よろしいですか?」


 頷くと、講習が行われる場所まで案内してくれると言うのでついて行く。


「異世界人の方は、この世界の一般的な人よりも強くなりやすい傾向があるんですよ。だから政府としても色々と異世界の方を支援する政策を打ってるんです。当面の生活資金の提供とか、一部税金の免除とか、自由の保障とかですね」


 適当に相槌を打ちつつ考える。初期資金を貰えるらしいから、装備はある程度整えられるようだ。ならその装備でモンスターを買って自己の強化と貯金を行うのが当面の目標になるのか?

 

「そういえば、職業をお伺いしても?」


「魔法使いです」


「あー、魔法使いですか」


 なんだその微妙な反応は。

 どうやら魔法使いというのは大器晩成型らしい。物理系統のステータスが低く、スキルがないと能力が十全に活かせないのが主な要因らしい。

 まあ、薄々気づいてたけどね。スキルを手に入れる方法は2つある。一つは反復だが、残念なことに魔法系はこれでは習得しづらい。魔法を反復しろって言われたってどうしろって話だからな。方法もなくはないが、パンピーはもう一つの方法で習得らしい。

 そのもう一つの方法というのは、スキルオーブの使用だ。スキル玉とか宝玉とか色々名前があるみたいだが、一番分かりやすい言い方はこれだろう。

 スキルオーブはモンスターのレアドロップか、ダンジョンの宝箱から出るらしく、結構貴重みたいだ。

 要するに、金策必須じゃねえか。

 それはそれとして、どうやらついたみたいだ。


「アンジェさん、新人の方を連れてきましたよ!」


 アンジェと呼ばれた女性は、こちらを振り返って近づいてくる。それにしてもすごい筋肉だな。fpsのキャラかと見紛うくらいにはゴツい。


「えーっと、アンジェさ」


「教官だ」


「へ?」


「次から私を呼ぶときは教官と呼べ、返事ははいだけだ」


 マジですか?


「返事!」


「はい!」


「あはは、それじゃあ私は失礼しますねー」


「ちょ、まっ」


「さて新人、名を名乗れ」


「ひいら」


 いってえ!!教官から鞭が飛んできた。比喩ではなくマジもんの。


「返事ははいだと言っているだろう!」


「はい!」


「名前は?」


「はい!ヒイラギシュウヤです!」


「そうかそうか、ではヒイラギ三等兵」


 二等兵が一番下なのでは?


「お前のジョブは?」


「はい!魔法使いです!」


「ほう、なら武器は杖だな。よし、これを使え」


 そう言って杖をこちらに投げてきた。いまどっから出したんだ?


「返事!」


 また鞭で打たれた。


「はい!」

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