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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第二十話 ヒナと合流

「へぇ、そういうことだったの」


 あれから、リュウや小さなビョードーがヒナにビョードーのことやリュウがここまでどうやって逃げてこれたか、ここからの帰り方やヨシが帰りたがってなさそうなことなどを説明する。

 最初こそヒナは小さなビョードーを疑っていたようだが、話を聞いているうちに小さなビョードーは味方だと納得したらしい。


「でもヨシくん、何で帰りたくないんだろうね?」

「うーん。全然わかんねー」

「リュウくん親友なんでしょ? 知らないの?」

「知らねーよ! 知ってたらこんなことになってないだろ」

「まぁ、それもそうだよね」

「ここで考えていても仕方あるまい。とにかく早くもう一人を探すのじゃ」


 けれど、探すと言ってもどこを探せばよいのか。


 リュウは目印を頼りに歩き始めるも、なかなか頭の中で音は鳴らない。

 ヒナも回復したあと空から探してみたが、やはりどこを探してみてもヨシはいなかった。


 みんなでヨシを探して見回っていると、ワラワラワラワラとどこからともなくカゲ達が湧いて出てくる。

 リュウやヒナがそれを光で照らしながら撃退するも、次々に湧いてくるいたちごっこで、さすがに何度も何度も遭遇すると心臓にも悪いし、体力の消費も激しかった。


「そういえば、リュウくんにも特別な力があってよかったね」


 ヨシを探してる途中、空から探すのを諦めたのか、ヒナはリュウの元に降りてきて一緒に隣を歩き出す。

 リュウもヒナに合わせて歩調を緩めた。


「まぁな」

「消える能力っていいよね! 私も一度消えてみたかったなぁ……」

「なんだよ、ヒナ。消えたいだなんて、何か悪いことするつもりだろ」


 リュウがからかうと、ヒナは顔を赤らめながら慌て出す。


「べ、別に悪いことっていうか……っ! だって、なかなか入れないとことか入ってみたくない?」

「なかなか入れないとこって例えばどこだよ」

「そりゃ、遊園地とか、映画とか行きたいじゃん?」

「やっぱり悪いことじゃん!」

「だ、だってぇ……! なかなか行けないからさぁ……! そんなリュウくんはどうなの!? 消えられたらしたいこととかないの?」


 ヒナが反論するようにリュウに言えば、リュウはすぐにこれと言った答えが出ずに「うーん」と悩んだ。


「そりゃあ……母さんから怒られてるときとか消えられたら便利だなぁとは思うけど」

「何それ。そこは怒られない努力をしなさいよ」

「いや、別にオレだって怒られたくて怒られてるわけじゃねーし!」


 ヨシを探しながらリュウとヒナで世間話をしていると、急に小さなビョードーが「妙じゃな……」と呟く。


「ん? 何が?」

「だいぶ城の中を歩いているが、いっこうに遭遇しないというのも変じゃな、ということだ」

「言われてみれば、確かに」


 だいぶ歩き回り、部屋らしき場所も牢獄らしき場所も一通り見たがヨシは見当たらなかった。

 他に見てないところなんてあったっけ? というくらいには探した気がする。


「目印は? リュウくん何も感じないの?」

「さすがに感じてたらもう言ってるよ。でも今のところ全然」

「そっかぁ。私も上空から色々見てみたけど、この城大きいわりにはそこまで広いわけじゃないから結構隅々まで見たと思うんだけどなぁ……」


 ヒナが見た限り部屋も少なく、隠れられる場所がそもそもあまりなかったので、大体の場所は空から丸見えなのだが、それでもヨシを見つけられなかった。

 そのため、ヒナは「何でだろう?」と首を傾げる。

 すると、小さなビョードーが難しい表情をしながら口を開いた。


「さよう。この城は造りこそ大きいものの、そこまでの広さはないんじゃ。それなのに、これほど見回っても見つけられないのはおかしい」


 確かに、先程から何度か見覚えのある場所を通ったこともあるし、ここまで見当たらないというのは不自然だ。


 __もしかして、ヨシだけもう「普通」にされてしまったのだろうか。


 悪い考えがリュウの頭をよぎる。

 こんなに探しても見つからないとなると、その可能性も考えられる。


 __でもそうだったとしたらもう、オレ達は帰れないのか?


 そう考えると、リュウは不安で押し潰されそうになる。

 自分達が帰れないこともそうだが、ヨシが自分の知ってるヨシではなくなってしまうかもしれないと思うと、それがとてつもなくリュウには怖かった。


「もしかして、ヨシはもう普通にされちゃったってこと?」


 恐る恐るリュウが小さなビョードーに尋ねる。

 もしこれで肯定(こうてい)されてしまったらどうしようかと、リュウは内心ドキドキしていた。


「いや、きっとまだされてはいないだろう。もしされていたらアタシのほうに魔力の残滓(ざんし)がくるはずじゃ。『普通』への書き換えは結構な魔力を使うからな」


 小さなビョードーの言葉に、とりあえずホッとする。

 けれど、あまりのんびりとしていられないことは、リュウにもわかっていた。


「そうなんだ。でもそうか、人の性格を書き換えるなんて簡単にできることじゃないし」

「そうじゃ。人の意志は強い。だからここの住人よりもさらに魔力消費が強いだろう。きっと書き換えのときには大きな花火が打ち上がると言ってもいい」

「そうなんだ。そんな花火は見たくないなぁ。ヨシくん、無事だといいけど……」

「うん、早く見つけないと」


 だんだんと日が落ちていく。

 リュウもヒナもヨシが見つからないということが不安でしょうがなかった。


「なぁ、ちなみに小さなビョードーはどう思う? ヨシがどこにいると思う?」


 リュウが聞くと、小さなビョードーは今までにないくらい表情を曇らせて下を向いた。

 何か考えているのか、酷く難しい表情をしている。

 そして、ゆっくりと口を開いた。


「……あまり考えたくはないが、まだ見てない部屋にいる可能性が高い」

「と言うと? まだ見てない部屋って他にどこにあるの?」

「ビョードーの部屋じゃ」

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