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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第二十一話 頼りになるヒナ

「え、ビョードーの部屋って。それって、まさか……さっきまで、オレがいた部屋?」

「そうじゃ、小僧がビョードーに連れてこられて『普通』に書き換えられそうになった部屋じゃ」


 リュウはショックで何も言えなくなる。

 でも、他に探してない場所といえばそこくらいしかもうなかった。

 考えたくなくて勝手にそこは探す場所から無意識に外していたが、小さなビョードーに指摘されたことでその可能性を認識するリュウ。


 __どうしよう、ヨシが「普通」に書き換えられてしまったら……!


 先程まではまだ大丈夫だろうと微かな余裕があったものの、「普通」への書き換えが急に現実的になって、恐怖や不安で勝手に身体が震えだす。


 ヨシがヨシでなくなったら。


 帰れないことだけじゃない。親友のヨシが全く違う知らない人のようになったらと思うと、リュウはとてつもなく恐かった。


 __あの濁ったガラス玉のような目の、自分の知らない母さんのようになってしまったら。


 今まで漠然と感じていた恐怖が現実的になって、リュウは血の気がひくのを感じる。

 そして、指先がどんどんと冷たくなっていくのを感じた。


 バシっ!!


 リュウが呆然としていると、ヒナが思いきりリュウの背中を叩く。

 そこでハッと我にかえるリュウ。


「痛っ! 何するんだよ!」

「何するんだじゃないでしょ!? まずはとにかく確認しないと! ここでうじうじ悩んでたり、メソメソしてたりしてもしょうがないでしょ!?」

「そ、そりゃそうだけど……」

「だったら早くそこに行かなきゃ! ヨシくんが危ないかもしれないじゃん!! もし違ってたら違ってたでいいんだし、いなかったらまた違うとこ探せばいいんだから!」

「そ、そうだな……っ!」


 こういうときのヒナほど頼もしい人はいなかった。

 誰よりも冷静にしっかりしていて、臆せずにきちんと指摘できるのはヒナのいいところだ。


 ただ実際は、気丈に振る舞っているだけで、そう見せているだけなのはリュウには分かっていた。


 微かながらヒナも震えているのがわかる。

 きっと彼女も恐いのだろうと、リュウは察しながらヒナの手を思いきり強く握った。


「ビョードーの部屋へ急ごう!!」

「うん!!」


 ヒナの力で空を飛ぶ。

 目指すはビョードーの部屋。

 ヨシに会いたい気持ちと、できればそこにいないで欲しい気持ちがごちゃ混ぜになりながら、リュウはヒナと共に急いだ。



 ◇



「うーん、ここから入るのは難しそうね」

「そうだな。この扉は普通の力じゃ開けられなかった」


 ビョードーの部屋の前で立ち尽くす二人。

 ビョードーの部屋にやってきたはいいが、中には入れずに困っていた。


「上はどうだ?」

「空から見たけど、ここの部屋だけは窓も扉もここ以外には全くないのよ。そういえば、目印はどう? ヨシくんが近くにいたらわかるんでしょ?」

「そういやここに来ても特に反応ないから、やっぱりここにはいないのかも!」


 リュウは反応がないことにホッとしていると、先程から黙っていた小さなビョードーがポケットから出てくる。


「残念だが、この部屋はビョードーの魔法の効力によって目印が作用しなくなっている可能性が高い」

「そうなのか?」


 せっかく喜んだのもつかの間、ぬか喜びだったことにリュウはガッカリした。


「だったら、どうやって入ればいいの? さすがに二人だけの力じゃどうやってもこの扉を開けられないと思うんだけど」

「うん。私達の力じゃこの大きさの扉は開けられないよ。調べるにも、中に入れなかったらどうしようもないし」


 リュウとヒナでそう小さなビョードーに指摘すれば、小さなビョードーは「はぁ」と溜め息をついた。


「やれやれ、しょうのない子らじゃのう。だが、緊急事態じゃし、少しばかし力を貸そう」


 そう言うと、小さなビョードーは「空を飛んで部屋の上まで行ってくれ」とヒナに指示を出す。


「上から? でも空から入れないよ?」

「いいから。アタシの言う通りにおし」

「はーい。じゃあ、行くよー!!」


 ヒナはリュウの手を掴むと、そのまま部屋の上に飛んでいく。


 確かにヒナの言う通り部屋を空から見ても窓や隙間、扉などが一切ない。

 それなのに、小さなビョードーはどうするつもりなのかとリュウもヒナも不思議に思っていた。


「着いたけど、どうするの?」

「とりあえず、屋上に着地するのじゃ」

「わかった。ちょっと待ってねー、よいしょっと」


 ヒナはゆっくりと着地する。

 部屋の真上に位置するここにはこれといって何もない、ただ屋根があるだけだった。


「ここでどうするの?」

「いいから見ておれ」


 小さなビョードーはそう言うと、パチパチと何やら魔法の花火を打ち上げる。

 すると、先程まで何もなかった壁から人が一人分入れるような穴が出てきた。


「凄い! え、どうやったの!?」

「ビョードーの魔法はアタシの魔法でもある。力が弱いとはいえ、これくらいのことはできる。さて、あとは中に入って偵察(ていさつ)じゃ」


 穴が開いてから、何となく頭に音が鳴っている気がして落ち着かないリュウ。

 そわそわとしていると、ヒナがギュッと手を握ってくれる。


「ほら、ぼんやりしてない! 一緒に行くよ!」

「そ、そうだな! じゃあ、オレが先に行くからヒナはあとから来いよ!」

「わかった!」


 リュウは勢いよく穴の中に飛び降りる。

 そしてリュウはそのあとやってきたヒナと手を繋いで共に透明化しつつ、ビョードーの部屋の中に侵入するのだった。

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