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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第十九話 目印

「はぁ、やっとついた……」


 最後までどうにか登りきると、リュウはそのまま勢いよく寝転がる。


 手はジンジンと痛んで赤くなり、ところどころマメができていた。

 普段校庭にあるうんていで遊ぶこともあるリュウだが、さすがにこれほどまでに長くはない。そのため、いくら運動神経がいいリュウでもそれはもう大変だった。


 チラッと登ってきたはしごを見下ろすと、あまりの高さに身震いするほどで、我ながらよくここまで登れたとリュウは心の中で自画自賛した。


「ご苦労さまじゃったな、リュウ。それにしても久々の外じゃ……眩しいことは眩しいが、なんだか感慨深いのう」


 そう言って小さなビョードーはポケットから出ると目を細めた。

 どれほど長い間閉じ込められていたのかわからない。けれど、こうして外へ出られたことで、今までにないくらい胸の奥がさざめいているのを小さなビョードーは感じていた。


 この風、空気、匂い、全てが懐かしく愛おしかった。

 それと同時に、この感動をビョードーにも味わってもらいたいと小さなビョードーは思っていた。


 キュイーーーーーーン! キュキュキュ、キュイーーーーーーン!!


「な、なんだこれ! 何の音だ!?」


 何かがリュウの頭の中で鳴いている。

 鳥の鳴き声か。それとも何かのアラームの音か。

 甲高い音がリュウの頭の中で鳴り続けていた。


「ほう、音が聞こえたか。ということは友達は近いようじゃな」

「へ? あ、もしかして、これがさっき言ってた目印?」

「そうじゃ。わかりやすいだろう?」


 確かに、わかりやすいといえばわかりやすい。

 だんだんと近づく音に、ヒナかヨシか、どちらかが近づいて来ていることはわかった。


 空からか地上からか、一体どちらから来るのかリュウはよくよく周りを見つつ、目を凝らす。


「ヒナかヨシか、どっちだ…………? ヒナ!!」

「リュウくん、こんなところにいた! よかったぁ、会えて!」

「会えたのはいいけど、大丈夫か!?」

「全然大丈夫じゃない! てか、助けて!! こいつらすっごくしつこいんだけど!!」


 遠くのほうで何か飛んでる物体を見つけて目を凝らせば、そこにはヒナがいた。

 ヒナは蛇行したり速度を変えたりしながら空を飛んでいるが、ヒナの後ろをカゲ達が飛びながらずっとくっついていて、ヒナのことを追いかけ回していた。


「ヒナ! 光! ヤツらは光に弱い!! だから光で対抗しろ!!」

「え、何? 光!? そんな急に光に弱いって言われたって、どうやって……あ! わかった!!」


 ヒナはそういうと、リュウのアドバイス通りに光で攻撃するためにポケットから手鏡を出す。

 そして、太陽の光を反射させてカゲ達に当てていった。


【ぎゃあああああ!】

【眩しい、眩しい!!】

【見えない! 何も見えない!!】


 ヒナはカゲ達それぞれの顔に光を当てていくと、カゲ達はバラバラと形をなくし、チリのように散っていった。

 そして全て一掃すると、ヒナはふわっふわっと舞うようにこちらに飛んできた。


「あー、助かった! リュウくん、ありがとう」

「いや、どういたしまして」

「はぁ、疲れたぁ……」


 リュウが肩を貸すと、力なくその肩にしがみつくヒナ。

 よほど疲れたのか、ヒナの顔は汗でびっしょりだった。


「大丈夫か?」

「大丈夫なんかじゃないわよー! どうにか閉じ込められた部屋から逃げられると思ったら、あんないっぱいの黒い何かに追いかけられるとは思わなかったし。しかも聞いてよ! 最初はあいつら飛んでこなかったのに、私が飛んでたら急に飛んできてさ! まさか飛んで追いかけられるとは思わなかったから、逃げるの大変だったよ~」


 ヒナはもうへとへとだと、ずるずるとその場にしゃがみ込む。

 どういう原理かはわからないが、飛ぶのは飛ぶで体力がいるらしい。

 ヒナは肩で息しながらへばっていた。


「汗すごいな」

「そうだよー! 全身汗びっしょりだし、もうくったくた。逃げ切ったと思ってもすぐ見つかって逃げなきゃだし、リュウくんとヨシくん探す余裕もなくてずっと逃げ回ってたんだもん。あ、今は近寄らないでね。汗臭いかもだから」

「お疲れさまじゃな。ちなみに、あやつらはビョードーから力を分け与えられた存在ゆえ、最初こそ知能は大したことないが、学習する性質がある。だから途中から学習して飛ぶ手段を得たんじゃろうな」

「え!? ちょっとちょっと! リュウくん、この人誰!? え、この人って敵の魔女じゃないの!? 何でここにいるの!?」


 ヒナが驚きながら飛び上がるようにリュウから離れる。


 それもそうだ、小さくとも敵の魔女がポケットから出てきたら誰だって驚くだろう。


「あぁ、えーっと、ビョードーの微かな良心? っていうものなんだって。敵じゃないから安心して」

「はい? 微かな良心って何? てか、リュウくん何で一緒にいるの? 敵じゃない、安心してって、そもそもそのビョードーに騙されているんじゃないの? 信用できるの?」


 ヒナから矢継ぎ早に食ってかかるように質問されてリュウはもうお手上げ状態だった。

 それを察した小さなビョードーは「こうるさい娘じゃのう」とヒナにことのあらましを説明するのだった。

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